【漫画】AIの進化は漫画家にどんな影響を及ぼす? 近未来の創作の苦悩を描いたWeb漫画が話題

ーー本作はX上で大きな反響を呼んでいる作品かと思います。反響の感想を教えてください。

砂糖野しおん(以下、砂糖野):本作は「X」の名称が「Twitter」だったころにも投稿した作品でした。時間を経て再び投稿した今回は前回よりも反響が大きく、AIを取り巻く問題がより多くの人の身近になっているのだと感じました。

 また「ページ数が少ないのによくまとまっていて、考えさせられる作品だった」という読者の方からの感想が印象に残っています。自分の作品が誰かの話題になることはうれしいなと感じました。

ーーAIの技術革新と創作活動を題材とした本作を創作したきっかけは?

砂糖野:AIがイラストを生成したり、AIが質問にチャット形式で返答してくれたりなど、2022年にAI技術を利用したサービスが話題になった時期がありました。この先、もしもAIが漫画作品まで生成できるようになったら、私だったらどうするか。そんなことを考えながら本作を創作しました。

ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンを教えてください。

砂糖野:主人公が原稿用紙やペンを引っ張り出して、久しぶりに漫画を描くために机へ向かうシーンが印象に残っています。

 絵や漫画を描くことから離れた生活をしていたなか、主人公が再び創作に向き合うと、ものすごく下手になっていた自分に気づく……。私自身も主人公と似たような経験をしていて、胸を痛めながらこのシーンを描き上げました。そのため作品を描き終えたあとでも印象に残っているシーンです。

ーー主人公のターニングポイントとして「紙の本を買ってもらった過去」がありました。

砂糖野:未来で紙巻たばこ(シガレット)を吸っていたり、むかし流行った海外のバンドのポスターを張っていたりなど、主人公は古いもの、今風に言うとエモいものが大好きな人物です。そんな彼にとって子どもの頃に出会った紙の本は人格形成に大きく影響している存在なので、このシーンは作中でもとくに大切な場面だったと思います。

ーー砂糖野さんは紙の本にどんな思いを抱いている?

砂糖野:最近までデジタル媒体ではなく紙の本で漫画を読んでいました。実際に物質として漫画が手元にあることがうれしくて。ただ最近はデジタル媒体で漫画が読めることも便利でいいなと感じています(笑)

 たとえば親しい人が亡くなってしまっても、その人が読んでいた漫画は手元にちゃんと残る。さまざまな思いをリアルに感じられることが紙の本の魅力だと思います。

ーー本作の結末として「恥ずかしい」という感情を抱く照樹さんの姿が描かれました。

砂糖野:人間らしい性格や欲求を描くことが好きなので、主人公の感情がわかるラストシーンを描きました。

 それに創作物は自分を深く掘り下げる、自己紹介のようなものだと感じていて。漫画を描くきっかけとなった人に自分の創作物を見せることは人間らしくて私は好きだなと思い、本作のラストシーンを描きました。

ーー作中では主人公が“何で漫画を描いているか”と自問するシーンがありました。砂糖野さんは何で漫画を描いているか、教えてください。

砂糖野:今は、ただ単純に作品をつくることが楽しいです。創作するなかで学ぶことばかりなので。

 また完成した漫画を最初に自分が読者として読みたいと思いながら漫画を描いています。そのため、こんな漫画を読みたいなという思いから、作品のアイデアや構成を思いつくことが多いです。

ーー今後の活動について教えてください。

砂糖野:これからも楽しく漫画を描き続けられればと思います。その延長線上で読者の方々に楽しんでもらえたら、すごくうれしいです。

■砂糖野しおんさんの作品はこちら!
『マイ・リグレット 1』
出版社:‎KADOKAWA
発売日:2022/11/15
言語:日本語
コミック:178ページ
ISBN-10:‎404914588X
ISBN-13:978-4049145885

 

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