実写『ONE PIECE』アルビダのイジリにも変化が……原作から現代版にアップデートされた要素とは
原作改変によって新たに生まれた名シーン
実写『ONE PIECE』では、現代の視聴者に届けることを意識した結果、原作にはない名シーンもいくつか生まれている。そのなかでも必見と言えるのが、シロップ村におけるナミとカヤの心の交流だ。
シロップ村に到着したルフィたちはウソップに出会い、カヤが住んでいる巨大な豪邸に泊めてもらうことに。そこでナミは夜中にこっそりと金目のものを盗んでいたが、運悪くカヤの部屋に飛び込んでしまう。しかしカヤは彼女が何をしていたのか知りながら、責めようとはせず、本音で話し合う“お泊まり会”が始まる……。
ナミは貧困に苦しめられてきた過去があり、豊かな者から窃盗することに良心の呵責を抱いておらず、富豪のカヤに対しても偏見を抱いていた。だが、ふたりだけの夜を過ごした後、ナミの意識が変わったような描写が入るのだ。女性キャラクター同士が格差を超えて打ち解けるこのシーンは、現代ドラマならではの見応えがある。
また「バラティエ」ではアーロンが来訪するという物語の変更があり、その結果として印象的なシーンが生まれた。アーロンは魚人を差別してきた人間を心の底から憎んでおり、我が物顔でレストランを占拠する。
そこでアーロンは差し出された料理に手を出すのだが、テーブルマナーを無視してむさぼるような食べ方を見せる。そして周囲の人間に冷ややかな目を向けられていることに気づくと、逆上して人間を恫喝しながら、魚人が置かれている差別的な現状について語るのだった。
原作では「魚人島編」で掘り下げられた魚人差別の実態だが、実写版では「バラティエ」の時点で先取りされ、アーロンのバックボーンを示すと共に、現代ドラマとしての深みを与えることにも成功している。
そんな実写版『ONE PIECE』は公開早々、世界各国でNetflixの視聴ランキング1位を獲得している。おそらく原作を知らない人でも、違和感なく楽しめる作りになっているからこそ、ここまで広く受け入れられているのだろう。長大な『ONE PIECE』の世界に踏み入る入門編として、この上ない傑作が誕生したのかもしれない。
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