【漫画】引きこもりの弟と“昇進”に悩む姉……人生が変わる「予兆」を鳥に託した読切漫画が美しすぎる
人生が変わる予兆が可視化されたら
――今回、どのような経緯で『鳥の日』を制作しようと思ったのですか?
安堂:本作は漫画雑誌『フィール・ヤング』(祥伝社)で掲載された読み切り連作の一遍です。短編集として出版を目指していましたが実現できなかったのですが、『フィール・ヤング』さんから許可をもらって公開しました。それまではファンタジー色の強い作風が多かったのですが、「もっと大人にも響くものを」と編集部から要望があり、社会問題を取り入れた作品にしました。
――“周囲には見えない鳥”という設定はどのようにして誕生しましたか?
安堂:2つあります。ある日、昨日まで緑だったイチョウ並木が黄色く紅葉していることに気づいて驚きました。そこで「実は葉っぱが鳥で、色の違う鳥が入れ替わっただけだったら面白いな」と思いました。もう1つは、ある些細なキッカケから人生がガラッと変わるということがありますよね。後々考えると「”予兆めいたもの”もあったな」と気づいたりします。「それが目に見えたらどうだろう?」と思い、本作に組み込みました。
――登場人物はある意味どこにでもいる姉弟という印象でした。
安堂:そうですね。ほぼステレオタイプの“姉”と“ひきこもりの弟”を使用しました。誰もが「こんな人の話聞いたことある」と思うくらいのわかりやすさを重視しています。
――室外機が動いているかどうかで弟の生活状況を把握する、という表現はとてもリアルでした。
安堂:実は重度の鬱が原因でひきこもっていた経験がありました。外の人に“自分が家にいること”を知られるのが非常に恐怖だったので、当時は室外機の動きには気をつけていました。そういった経験から生まれた描写ですね。
――本作では“周囲には見えない鳥”はどのような存在なのですか?
安堂:鳥が表現しているのは“運気”や“時期”に近いです。自分の準備が整ったタイミングで、外部の状況がこちらに向くということが時々あります。それはコントロールできません。それでも、不変のものはないのでいつか必ず変わり目、そのタイミングが来ると思っています。
――ちなみになぜ“鳥”にしたのですか?
安堂:鳥になったのは、「木の葉かと思ったら全部鳥で、次の瞬間一斉に飛び立って枯れ木だけが残った」という体験からです。また、鳥のデザインはカワセミのシルエットを目指しました。
――最後に今後の漫画制作の予定を教えてください。
安堂:現在、次の新作の連載に向けて準備中です。その際は注目してもらえればと思います。