【漫画】働けるならどこでもいい……“夢のない職場”で出会った「スーパーマン」とは? 日常が輝き始めるSNS漫画を読む

実際にスーパーでの勤務経験アリ

――『働く!スーパーマン』はスーパーマーケットが舞台の作品でしたが、多喜さん自身はスーパーでの勤務経験はあるのですか?

多喜:2年弱と短いのですが、実際に売場に立って働いたことがあります。現在は販売促進の仕事をしています。

――では、登場人物も実際にモデルがいたのですか?

多喜:はい。全員モデルがいます。新入社員時代の自分や、店長をはじめと、今までに出会った職場の人達です。実際に言われた言葉も作中に入っています。

――就職氷河期という設定でしたが、これも多喜さん自身が経験されたことでしょうか。

多喜:そうです。就職した時期は氷河期でした。当時は「漫画家になりたい」という夢に挫折して、吉岡と同じく「働いてお金がもらえるならどこでもいいや」という気持ちで中小企業ばかりを受けていました。

――吉岡同様のモチベーションだったのですね。

多喜:その通りです。後ろ向きなスタートで、配属された店舗が激務だったこともあり、大変でした。

「そろそろ成仏させたい」

――今回『働く!スーパーマン』誕生の経緯を教えてください。

多喜:本作は『ちばてつや賞』に向けて制作しました。アイデア自体は新入社員の時に考えたのですが、「漫画を描く時まで仕事を思い出したくない」と思って長い間放置していた話でした。ただ、「そろそろ成仏させたい」と思って描き始め、友達にアシスタントを依頼して、夏季休暇も使って1ヶ月半で完成しました。結果は期待賞でしたが、なんとか形にできて良かったです。

――中野の「きっと勇気が要ったと思うの」、萩原の「一緒にやれば早いでしょ?」など、何気ないセリフに優しさを感じました。セリフ選びで意識したことは?

多喜:一方的に叱ることはできても、相手の立場に立って考えてみることは、簡単ではありません。たった一言で勇気付けられたり、励まされることがある。私自身そんな経験があって、誰かに対してもそうでありたいと思って選びました。

――悩みを相談する場、息抜きの場など、現在では忌避されがちな“飲みニケーション”についても、魅力的な側面が描かれていました。

多喜:飲みの席は、普段仕事では分からない相手のことを知る楽しみもありますが、同じ「仕事」という話題で悩みや愚痴を共有できる、息抜きの場と思っています。「自分だけじゃないんだ」とホッとしますし、「明日もまた頑張ろう」と思わせてくれます。否定的な意見もわかりますし、確かに友達作りに仕事しているわけではありません。ですが、良好な人間関係を築けるかどうかで、お互いにとって働きやすさが変化するため、多少なりとも必要な営みのようには思っています。

――最後に今後の展望など教えてください。

多喜:現在新作を制作しており、今回『働く!スーパーマン』を読んでくれた人にも楽しんでもらえればと思います。また、ドキドキ、ワクワクしてもらえる話を描けるように精進します!

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