『ドラゴンボール』鳥山明、デジタル環境後の絵柄の変化は「スクリーントーン」への憧れがあったから?

鳥山明はスクリーントーンを使いたかった?

 鳥山明は『Dr.スランプ』『ドラゴンボール』など数々の傑作を生みだしてきた漫画家である。鳥山の漫画、絵柄の特徴といえば、ご存知の人も多いと思うがスクリーントーンを使わないことが挙げられる。

 それは、鳥山が面倒くさがりであり、スクリーントーンを切ったり貼ったりする作業は特に面倒であるという極めて明快な理由からなのだが、その一方で鳥山明はスクリーントーンに憧れを抱いていた様子もあるのだ。

 『Dr.スランプ』17巻のおまけページで、鳥山が『ドラゴンボール』の原稿を参考に漫画を描く過程を紹介している。紹介しているページでは筋斗雲の擬音にのみスクリーントーンを貼っているのだが、その鳥山自身による解説が興味深い。

 曰く、自分は滅多にスクリーントーンを貼らないが、たまには漫画家らしく貼ることもある、と言っているのだ。鳥山は、スクリーントーンをしっかりと使いこなせるのが漫画家なのだ、と考えていたようである。

 ちなみに、スクリーントーンを使わない鳥山のスタイルを受け継いでいる漫画家といえば、これまたご存じ『ONE PIECE』の尾田栄一郎である。実際、尾田もスクリーントーンにほとんど頼らず、白い部分とベタだけで表現している。

 さて、スクリーントーンを滅多に使わない鳥山の画風に大きな変化が表れたのは、漫画制作にMacを使うようになってからであった。デジタルなら切ったり貼ったりする工程がなく、楽になったためなのだろうか。いわゆるデジタルのスクリーントーンを頻繁に使うようになったのだ。

 しかも、今までにはなかったくらい、キャラクターの服や髪、背景にいたるまでコマのいたるところに使いまくっている。顕著に絵柄に変化がみられると言っていい。

 この変化から考えてみると、やはり鳥山は長い間スクリーントーンに対する憧れがあったとしか思えない。しかし、週刊連載という厳しいスケジュール上、使いたくても使うことができないジレンマを抱えていたのかもしれない。何しろ、もっとも多忙だった『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』でさえ、アシスタントはほぼ1人しかいなかったのだ。無理はないだろう。

 鳥山がもしデビューしたての頃、今のようなデジタルの環境があればどうなっていただろう。デジタルのスクリーントーンを使いこなした絵柄を究めていたかもしれない。もちろん歴史にもしもはありえないのだが、超絶画力をもつ鳥山のことである。その時代の最先端のあらゆる画材を使いこなし、見事な漫画を描いていたのではないだろうか。

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