『ブルーロック』蜂楽廻の意外な長所「冷静さ」は“かいぶつ”のおかげ? 過去のエピソードから考察

『ブルーロック』蜂楽廻の冷静さ

 そこで、次は彼が冷静ではなかったシーンを見直してみたい。それは10巻の二次選考、潔と凪、馬狼照英、千切豹馬チームと、蜂楽と糸師凜、蟻生十兵衛、時光青志チームの対戦での出来事。潔と凛が一進一退の攻防を繰り広げるなか、蜂楽はその戦いに入り込む余地がないことを悟る。

 蜂楽は孤独にサッカーをしたくないという想いから“かいぶつ”を自身の中に創りあげたが、潔と出逢ってからは同じ目線でプレーできる現実の“かいぶつ”がいることに喜びを噛み締めていた。しかしいつからか、独りでプレーするのが怖くて潔達に見捨てられないためのサッカーに変わっていたため、自分の成長も止まっていたのだ。

 このエピソードでの蜂楽は冷静とは言い難く、取り乱している描かれ方も多かった。ではなぜ冷静ではなかったのか。それは自分自身が創り上げた“かいぶつ”よりも、潔と凛の方がよっぽど“かいぶつ”だったからと推測できる。あくまで蜂楽が生み出したイマジナリーフレンドなのだから、自分の理解を超えた“かいぶつ”達の前では、“かいぶつ”は機能しないということなのだろう。そのため試合の終盤でその危機を乗り越えるまでのほとんどは、焦っている様子が多かった。

 その後、これに気付いた蜂楽は、“かいぶつ”と一緒にプレーするのではなく、自分自身が純粋にサッカーを楽しんでいた“かいぶつ”になることで、この局面を打ち勝って見せる。では件の“かいぶつ”はというと、蜂楽が“かいぶつ”になったことで、その後は登場していない。一応、160話で蜂楽が「ジンガ×モンスター」を繰り出した際に、“かいぶつ”をオーラのように纏ってドリブルする描写はあるが、声に従ってプレーするということはまったくない。

 冷静さを生み出していた“かいぶつ”がいなくなったのだから、冷静92というステータスはおかしいのでは?と一瞬思ったのだが、その“かいぶつ”を生み出した蜂楽のなかには本来冷静さが備わっていたという逆説的な証明なのかもしれない。

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