『ブルーロック』蜂楽廻の意外な長所「冷静さ」は“かいぶつ”のおかげ? 過去のエピソードから考察

『ブルーロック』蜂楽廻の冷静さ

 人気サッカーマンガ『ブルーロック』の巻末には、作中に登場したチームのフォーメーションや、本編ではあまり描かれない制服姿のキャラクターが掲載されたおまけページもある。現在23巻まで刊行されており、18巻の巻末からは、キャラクターのスキルパラメーター一覧が見られるページに変わっている。

 19巻には、蝶のように舞い蜂のように刺すプレイスタイルで何度もピンチの場面を打開してきた、作中屈指の人気キャラクター・蜂楽廻のスキルパラメーターが掲載されている。確認してみると、ドリブル97、ショートパス90など「あーそれぐらいありそう」と納得できる数値だったのだが、ひとつだけ不可解に思ったのは、「冷静92」という項目。

 いやたしかに、彼が作中で動揺したり怒ったりした場面はあまり記憶にない。しかし、あまりにも無邪気なイメージが強すぎて冷静なのかと問われると、少し腑に落ちないところもある。どちらかというとサッカーを狂信的に楽しんでいるように見えることのほうが多いからだ。そこで本稿では、彼が冷静だと思える場面をあらためて調べてみた。

 まずは1巻、主要人物たちがブルーロックに足を踏み入れた直後。制限時間が終わってもオニだった者が脱落するという入寮テストを振り返ってみたい。

 主人公の潔世一は、脚を挫いた五十嵐栗夢にボールを当てようとするのだが、今までの自分と決別するため、すんでのところで自分より強い選手にターゲットを切り替えようとする瞬間がある。これに蜂楽は「いいねキミ 潰すなら一番強いやつっしょ♪」と潔からボールを奪取。勢いそのままボールを壁に蹴り、跳ね返ってきたところを下からすくうようにアウトサイドでパス、受け取った潔はダイレクトで吉良涼介に当てて、テストは無事クリアとなる。

 ここで特筆すべきは、吉良の体勢を崩して潔に完璧なパスを送った部分だろう。U-18日本代表に召集されると噂されるほどの吉良をたった5秒で窮地に追い込んだのだ。インスピレーションで動いていた部分は当然あるのだろうが、ボールを奪ってから逡巡する間もなく崩したのだから、完璧にデザインされた冷静なプレーだといえる。

 話は少し逸れるが、自分のやりたいサッカーの理解者を得られなかった蜂楽は、“かいぶつ”という想像上の存在と幼少期からサッカーをしていた過去がある。入寮テストの試合を蜂楽視点から描いた回想が後に登場するが、このときに“かいぶつ”の「〝パスを出せ〟〝潔世一がかいぶつだ〟」という声に従ってプレーしていたことが語られている。

 もうひとつ、彼が冷静だといえるシーンがある。それは一次選考で凪誠士郎、御影玲王ら率いるチームVとのマッチだ。チームV側に圧倒され3点のビハインド、蜂楽は相手が強いと認めたうえで、自分達も同じように限界を超えたプレーをすればいいと、言ってのける場面である。

 ここで蜂楽は「俺のなかの“かいぶつ”が言ってる…『絶体絶命』ってやつはビビるとこじゃない!ワクワクするとこ」と言い放ち、ドリブルで敵陣を切り裂きラボーナでゴール。このプレーからチームメイトの國神錬介は今までのゴールの方程式ではなく、自分の限界を超えて新たな点の取り方を見つけることが重要と結論を見出し、試合が大きく変わって4-5で辛勝するのだ。

 ふたつのエピソードの共通点は、やはり“かいぶつ”の声に従ってプレーしていたというところだろう。冒頭で書いた通り、彼は無邪気で狂信的にサッカーを楽しんでいるキャラクターだ。冷静とは真逆のような描写が多いが、プレー自体は冷静沈着そのもの。つまり彼の冷静さは、“かいぶつ”というもうひとりの存在が大きく関わっていることが見受けられる。

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