タニグチリウイチの名作ラノベ解説

「ようこそ実力至上主義の教室へ」シリーズ、圧倒的支持の理由は「陰の実力者の暗躍」と「ゲーム性」にアリ

 超絶的な魔法の力で、軍隊ですらねじ伏せる「魔法科高校の劣等生」シリーズの司波達也も確かにカッコ良い。圧倒的な魔法の量で味方を守り、敵を退け魔王にまでのし上がった「転生したらスライムだった件」シリーズのリムル・テンペストにも憧れる。強さが確信できるキャラクターたちだけに、何が起こっても強敵が現れても、絶対に乗り越えて痛快さを感じさせてくれると信じて読んでいける。

 「よう実」も、エリート中のエリートという資質を持った清隆が、最後にはすべて処理するだろうといった確信を抱ける点は同様だ。それと同時に、それぞれが知力なりコミュ力なり体力といった得意分野を持ったクラスメートたちを差配し、敵の出方を読んで策をめぐらせ、学校でのポジションを左右する数々のイベントを攻略していくゲーム的な楽しさがあるところが、「よう実」の特徴でもある。そうした頭脳戦であり心理戦の中心にいる清隆に自分がなったような気分を味わえる点が、異能バトルやラブコメが人気となる中で、「よう実」シリーズが厚い支持を集めた理由なのかもしれない。

 最新刊となる『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編9』の時点で、清隆たちは何とBクラスにまで順位を上げてきた。そうなるまでにクラスから脱落する者も出てギクシャクとした空気も漂う。正体までは知らなくても、清隆を危険な存在と見た生徒たちからの攻撃も始まりそうな雰囲気が出始めている。清隆はどうなってしまうのか。最終的にAクラスに上がれるのか。こればかりは確信して読んでいけない。

 加えて、戦略の見通しを狂わせ、戦術にも影響を与えるファクターが色濃さを増して清隆を包み始める。それは恋。人を惑わせ、あるいは真っ直ぐにさせる感情が、合理的な考えに染まった清隆の思惑をどのように乱すのか。それすらも清隆は操ってのけるのか。2年生編のラストバトルから3年生編のゴールを目指した戦いでの中で繰り出される課題のユニークさを楽しみつつ、錯綜する恋の行方も見極めたい。

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