鳥山明は短編漫画だって面白い!『SAND LAND』劇場版アニメ化にみる作品の魅力

鳥山明短編作品の魅力

 日本を代表する漫画家であり、『ドラゴンボール』『Dr.スランプ』などの名作を生み出した鳥山明。鳥山が『ドラゴンボール』終了後に「週刊少年ジャンプ」に連載した名作『SAND LAND(サンドランド)』が、劇場版アニメ化されることが決定。映画『SAND LAND』として、8月18日に公開される。

 『SAND LAND』は、2000年に「週刊少年ジャンプ」で連載されたもので、単行本は全1巻。魔物も人間も水不足にあえぐ砂漠の世界で、悪魔の王子・ベルゼブブと保安官・ラオが手を組み、砂漠のどこかにある「幻の泉」を探す旅に出る――というストーリーだ。

 鳥山明は短編の名手であり、『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』の連載と並行して数々の短編を描いている。『鳥山明○作劇場』や『鳥山明 満漢全席』などの短編集が発売されているので、ぜひ一読していただきたい。それらの短編の中には『ドラゴンボール』の原点ともいえる『騎竜少年(ドラゴンボーイ)』などがあり、鳥山の試行錯誤の跡が感じ取れる作品も少なくない。

 なお、『ドラゴンボール』の終了後にも、鳥山は「週刊少年ジャンプ」で連載を何本か持っている。『COWA!』や『カジカ』、そして今回の『SAND LAND』などがあるが、いずれも短期集中連載であり、単行本は1巻で終わっている。当時、「ジャンプ」は急激な部数減に苦しんでおり、立て直し策として鳥嶋和彦が編集長に就任。『COWA!』は鳥嶋の依頼で描かれたものといわれる。

 決して鳥山の強い意志で始まった連載ではないものの、この時期から鳥山は漫画制作にパソコンを使用するようになり、かなり絵柄が変化しつつあった。特に大きな変化は、それまでは「貼るのが面倒」という理由で使用を控えていたスクリーントーンの使用頻度が高まった点である。デジタルゆえに楽になったから…といえるが、一連の短編は当時の鳥山の絵柄の変化の過程が感じられる点でも、貴重である。

 また、短編ゆえにストーリーが簡潔にまとまっていて読みやすい上に、『カジカ』の戦闘シーンなどは『ドラゴンボール』を彷彿とさせる迫力がある。『ドラゴンボール』のファンもぜひ手に取ってほしい。

 昨年から「SAND LAND project」が立ち上がっている。これは『SAND LAND』を世界中に発信しつつ、多方面のパートナーやクリエイターと協力して『SAND LAND』の魅力的なキャラクターや冒険心をくすぐる乗り物、鳥山ワールドを表現していくというプロジェクトだ。すでに述べたように、鳥山の短編には隠れた名作がたくさんあるため、映画の公開を機に他の作品にも光が当たってほしいものだ。今後の展開に期待が集まる。

©バード・スタジオ/集英社 ©SAND LAND製作委員会

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