【漫画】もしもメドゥーサが学生だったら? モンスターたちの“優しい日常”を描く漫画が話題
――『メドゥーサの一日』は約6300RT、4.4万いいねが集まっていますが、何が読者に刺さっているのだと思います?
酢豚ゆうき(以下、酢豚):コロナ禍などもあり、暗いニュースが多かったですから、モンスターたちの生活を掘り下げる優しい世界観に安らぎを感じてもらえたのかなと。色々な方に読んでいただけているようで嬉しいです。
このシリーズは「月刊アクション」さんで連載している『月出づる街の人々』を1カ月遅れでTwitterでアップしているのですが、ぜひ過去の回も見ていただきたいですね。
――商業連載のきっかけは?
酢豚:元々はTwitterで全ページをアップしてから、同人誌のイベント「コミティア」で自主販売していました。この方法を実践している方は少ないですが、フォロワーも増えますし自分に合っているんですよね。それから連載の話をいただいたのですが、これまでSNSで読んでくださった方々を大切にしたかったこともあり、Twitterの投稿は継続させてもらえることになったんです。
――音楽もサブスクやYouTubeで聴いてからCDなどのフィジカル盤を買う流れがありますが、漫画もそうなんですね。
酢豚:「物でほしい」方は多かったですね。ただ買って読むよりも、まずTwitterで読んでもらってからの方が結果的にたくさんの人に買ってもらえると思っていて。Twitterは載せ方が大事なんです。4ページ乗せると1枚毎の画が小さくなるので、実質3ページで最初の見どころを作らなくてはいけないんです。
――モンスターたちを登場させようと思ったのはなぜ?
酢豚:シリーズものを描くにあたり「日常の些細なことを題材にしたい」と考えていたんです。そして、それなら少し不思議な世界で表現した方が映えるんじゃないかなと、本作のモチーフを決めました。
――登場するメドゥーサのユイを『メドゥーサの一日』ではどう描こうと思ったのでしょう。
酢豚:連載的には10話目の本作はショートショートを10本集めた回です。いつもは20~30ページくらいで感情の変化があるような内容で連載しているので、今回は特殊なエピソードなんですよ。だから軸のストーリーがあると描けないような、ユイの生活の細くて面白いことを詰め合わせようと思いました。
また3話目はユイの頭の蛇が1匹死んでしまうという話だったんですよ。この世界ではメドゥーサの蛇が10年くらいで死んでしまうのですが、その死んでしまった「宗二郎」の場所に新しく生える「宗三郎」が2ページ目に出てくるんです。続けて読んでいる方からは「こんなに大きくなったんだ」というコメントもいただきました。
――ユイのお父さんは鬼、お母さんはミイラなのがまた不思議ですよね。
酢豚:例えばドラキュラなら、両親も子どももドラキュラになりがちですが、そうすると同じ種族同士の出会いしかないので、関係なく生まれる世界観にしてお互いの関係性をカラフルに描けたらと思ったんです。
――「ぺチン」「シャー」など擬音のサブタイトルに統一したのはなぜですか。
酢豚:これが可愛いかなと(笑)。『月出づる街の人々』に関しては、生きる上で対峙しなければいけない影も描きつつ「優しさ」や「可愛さ」があって元気の出る話にしようと心掛けています。黒田硫黄先生の『茄子』とか松本大洋先生の『東京ヒゴロ』や『Sunny』のような読後感が目標ですね。
あと可愛いという視点だと、さくらももこ先生の『ちびまる子ちゃん』と『コジコジ』も理想で、一時期は表情を模写して練習していました。自作の線の緩い感じはそこから来ているかもしれません。先生のたまに出るブラックジョークも好きなので、自分にも取り入れられたらと思うのですが、なかなか難しいんですよ。
――最後に今後の展望を教えてください。
酢豚:『月出づる街の人々』シリーズはなるべく長く続けていこうと思ってます。楽しんでくださっている方にこれからも温かい物語を届けていきたいですね。あとは別の世界の話も『コミティア』などで描いていこうとも思っています。