高学歴の親はなぜ子育てに失敗する? プロが警告! 子どもにやりがちな「3大リスク」

『高学歴親という病』書評

 高学歴な親はなぜ子育てに失敗するのか? そんなセンセーショナルな問いを解き明かす新書が話題を呼んでいる。『高学歴親という病』 (講談社+α新書)だ。

 著者の成田奈緒子氏は医師・小児脳科学者であり、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表を務める。著書に『子どもにいいこと大全』『子どもが幸せになる「正しい睡眠」』(共著)などがあり、特にノーベル賞科学者・山中伸弥氏との共著『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』はベストセラーとなった。子育てを医学の視点から語る論客の第一人者である。

 そんな著者は自身が運営する「子育て科学アクシス」に相談に来る親を見ていると、学歴の高い人ほど子育てに悩んでいる事実に気がついたのだという。子育てに対して研究熱心であるものの、一度迷いが生じると、深く悩んでしまって八方塞がりになってしまうそうだ。本書ではその理由を多くの実例をもとに解き明かし、具体的な育児メソッドの数々を提案している。

子育ての3大リスクは「干渉・矛盾・溺愛」

 まず、子育てにおける3大リスクを「干渉・矛盾・溺愛」だと解説する。それはどういうことで、なぜ高学歴な親はうまくいかないのか。著者の主張を補足を入れながら追ってみよう。

 高学歴な親は勉強をはじめさまざまな物事を難なくこなせたから、子どもがうまくできていないとつい過剰に「干渉」をしてしまう。とはいえ、名門大学を卒業し有名企業で働いてきたなかで、野心や虚栄心は人から好まれないことも知っている。だから口では「普通に元気に育ってくれたらいい」と言うのだが、その実はやはり「クラスで上位であってほしい」といった思いがある。子どものほうはそれを敏感に察知するから、親が言っていることは「矛盾」していると感じてしまう。

 「干渉」と「矛盾」の背景にあるのが「溺愛」だ。特に経済的に余裕のある親が多いため、過剰に愛する子どものために「良かれと思ったこと」がすぐできてしまう。特に高学歴親の「溺愛」の特徴は「聡明な先回り」なのだという。頭脳明晰なので、子どもが何かに取り組んでいるときに、近い未来をすぐ予測することができる。その見通し力が優れるあまり、子どもが主体的に取り組もうとしているにもかかわらず、「失敗してしまう」と思って止めさせてしまう。結果的には子どもの自立性を損なうような結果となってしまうのである。これは「干渉」の一種でもあるだろう。

子育てのポイントは『心配』を『信頼』に変えること

 そこで著者は大事なポイントを「子育てとは『心配』を『信頼』に変える旅」なのだという名文句を使って力説する。子どもに鍵を渡すとなくしてしまうかもしれない、夏休みの宿題が終わらないかもしれない、学校に忘れ物をするかもしれない...。そんな「心配」を抱いたとしても、過干渉はせずに子どもを信頼してみることを提案する。そうすると、子どもは主体性を持って、生き生きと物事に取り組み出すかもしれない。本書を通して強調されていることだが、子どもが親に対して一番してほしいことは「信じてもらうこと」なのだ。

 書名や概略からは高学歴な親を糾弾するような印象を受けるかもしれないが、著者は子育てのむずかしさは古今東西どこの家庭でも共通だとしながら、実践的な子育てメソッドを的確に伝授してくれる。学歴に関係なく、子育てに悩む人が読むと、多くの知見が得られる一冊になっているだろう。

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