【漫画】少年が姉の部屋に忍び込んで行っている研究とは? 『桃色の研究』が描く、思春期のモヤモヤ

ーー子どものころに感じたワクワクと怖さが入り混じった感情を覚えた作品でした。創作のきっかけを教えてください。

ほしつ:高校3年生のとき、受験勉強から逃避するため漫画のネタを考えていた時期がありました。そのときに浮かんだネタを題材に描いた漫画が本作です。

 自分には姉がいるのですが、たまに姉が恋人を連れてくることがあって。知らない男が家にいることに感じた“だるさ”を話にしたいなと思いながらネタをつくりました。子どものときに感じた家に知らない人がいることの違和感を面白く描ければいいなと思っていましたね。

ーー作品として描いたのはいつ頃ですか?

ほしつ:WEBマンガサイト『くらげバンチ』の漫画賞に応募しようと思い、大学3年生のときに描きました。当時は就職といった将来のことを考えつつも、ほんのりと漫画家という職業に憧れがありました。そこから何かしらの賞が欲しいという思いが湧くようになったため、高校時代に考えたネタを元に漫画を描こうと思いました。

ーー主人公を小学生として描いた背景を教えてください。

ほしつ:作品を描くなかで、人は自分の価値観というフィルターを通して物事を判断すること、自分の視野でしか判断できないことをコンセプトとして意識していました。そのコンセプトを表現するため、まだ世間を知らない子どもを主人公として描こうと考えました。

ーー本作を描くなかで意識したことは?

ほしつ:自分が子どものころの雰囲気を出そうと思っていましたね。自分の地元をモデルに街の風景を描いたり、幼少期に遊んだ友だちを思い出しながら描きました。

 またサスペンス的な展開を入れることが好きで、めくるたびに怖さがあると面白いなと思っています。主人公が姉の部屋ちかくの屋根に座り姉たちを盗聴する終盤のシーンは、自分が表現したいものがいい感じに描けたかなと思っています。

ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。

ほしつ:小学6年生のときにレゴブロックを用いてストップモーションのアニメをつくり遊んでいたのですが、アニメの脚本として漫画を描こうと思ったことがはじまりですね。漫画を描いていくうちにストップモーションのアニメをつくるよりもいいなと思うようになり、漫画を描きはじめました。

ーーどんなところに漫画の魅力を感じたのでしょうか。

ほしつ:アニメをつくるのが大変だったんですよ。1枚1枚画像を用意するよりも漫画で描いた方が早く作品をつくることができましたし、完成した瞬間だけでなくモノをつくる工程を楽しめたんです。

 小学生のころはレゴ好きな少年でして、モノをつくることが好きでした。モノを物理的に組み上げていくのではなく、絵で描いていくことも“つくる”ことなんだと感じ、漫画にハマっていったのだと思います。

ーーほしつさんの作品には個性的な表現が多いと感じました。影響を受けた作品を教えてください。

ほしつ:パッと思いつくのは押切蓮介先生の『でろでろ』、水木しげる先生の『河童の三平』ですね。緩さと怖さと、クセのある笑いに魅力を感じます。

 また阿部共実先生の『空が灰色だから』からも影響を受けていると思います。オムニバス形式で展開する短編集なのですが、「ここで終わるのか」と思ってしまうほど毎回オチが衝撃的で。はじめて読んだときの感情を今でも覚えています。

ーー本作においてお姉さんの寂しそうな背中を描きつつ、直後に怒りの表情を浮かべていたことがわかる結末はわたしにとって衝撃的なものでした。

ほしつ:この場面では本作のコンセプトでもある子どもの視野の狭さ、人はパッと見で判断できないことを描きたかったです。当初は姉の後ろ姿で物語を終わらせる予定でした。ただ結末として普通かなと思い、最後に怒りを浮かべる姉の姿を付け足しました。

ーー今後の目標を教えてください。

ほしつ:とりあえず、どんどん漫画を描いていきたいです。ものすごいモノができる保証はないですが、自分にしか描けないモノをつくれたらいいなと思います。

 

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