【漫画】死にたい少女と生かしたい女性、その結末はーー創作漫画『夢の海に溺れて死にたい』が儚くも美しい
――『夢の海に溺れて死にたい』制作の経緯を教えてください。
ゆめのひつぎさん(以下、ゆめの):元々私は、女の子同士の感情の関わりと、フィクションにおける「死」というテーマにとても強く惹かれており、それらを組み合わせた漫画ばかりをずっと描いてきました。ですが、自分が好きだったはずの漫画制作を全く楽しめなくなってしまった時期がしばらくありました。
――創作のモチベーションが変化したのですね。
ゆめの:はい。「残念だけど、このまま創作活動からフェードアウトしていくんだろうな……」とぼんやり考えていた時、自分の中でまだ何も“これだ”と思えるものを形にできていないと気づきました。そこで、「創作活動をやめるにしても続けるにしても、自分の納得のいく一番良い作品を描こう」という気持ちになりました。自分が今まで描いてきた作品を無かったことにせず、ちゃんと一つの形に残して終わりたいと強く思いました。
――ゆめのさんの集大成のような作品なのですね。
ゆめの:そうですね。「少女らしさや『死を望む』といった私がそれまで描いてきたテーマの集大成となるような子の話にしよう」と考え、百咲姫果というキャラクターを作り上げ、そこからストーリーを構成しました。
「物語も色々あっていいんじゃないか」
――爽やかな雰囲気がありながらも、“死”という暗い雰囲気を随所に覗かせていて、陰と陽のバランスが絶妙でした。
ゆめの:色々な感情が混ざり合っていくような話にしたかったので、何か一点のみに振り切らないような作品にするように心がけました。陰鬱さもありつつ可愛らしさもあり、切なくもあり、情熱的な部分もあり、というように場面によってコロコロと雰囲気が変わっていくような話にしたかったです。
――確かにページによっても雰囲気が違っていましたね。
ゆめの:また、青葉と百咲、生と死、現実と夢、文と絵など、対にするような気持ちで描きたかった要素が多く、「どちらから一方だけを肯定して、もう片方を否定しまう」ということは避けたかったので、バランスは特に意識しながら描きました。「テーマや雰囲気をシンプルに絞ったほうが、読者には伝わりやすいのかな」と悩んだのですが、本作のベースにあるものは私の積み重ねてきた人生だったので、人生に色々な感情や場面があるように、「物語も色々あっていいんじゃないか」と思い、今回はそんな自分の気持ちを尊重することにしました。
百咲の真意は?
――百咲は純粋な死への願望だけではなく、青葉を奮い立たせるために命を投げ出したようにも感じました。百咲の真意としてはどのようなものがあったのですか?
ゆめの:この話は青葉の視点で青葉にわかる部分・青葉の考えの及ぶ部分を描いたものなので、百咲の考えていたことは結局はっきりとした答えが出ず、謎のまま終わります。この部分は、読んだ方それぞれの解釈にお任せしたいと思っている部分です。
ただ、百咲は心から青葉の物語に惹かれていて、彼女と彼女の作品を特別視していたので、「青葉の作品の中で死にたい」「青葉の全力で自分を書いてほしい」といったような密かな願いがもしかするとあったかもしれません。また、自分の存在を青葉に深く刻むことによって「青葉がこの先創作活動を辞めないために、自分がその契機になりたい」という想いもあったのかもしれません。
――『夢の海に溺れて死にたい』を描き終え、今後の創作活動について教えてください。
ゆめの:今後も自分の描きたいと思うテーマや女の子同士の間に生まれる感情の話を積極的に描いていきたいと思います。引き続きウェブに漫画を載せたり、創作同人誌即売会に参加して本を制作していくつもりです。この先も自分の好きなものを目一杯表現していけるよう頑張っていきます!