【漫画】人目を気にしない自由な少女が気になって仕方ない! 漫画『携帯の投げ方』がおもしろい

ーー現代を生きるなか感じている人も多いであろう心情が描かれた作品だと感じました。創作のきっかけを教えてください。

石田:本作は漫画賞に応募するために描いた作品です。自分のなかにある世界と社会の価値観とのギャップを表現できればと考えながら描きました。

 以前、友人と共に夜の海へ訪れたのですが、そのときの景色が衝撃的で。まるで闇に飲み込まれてしまうような感覚を覚え、本作のなかでも夜の海を描こうと思いました。

ーー作中では早川さんがギャップに苦しむ様子が描かれていました。

石田:早川さんは感覚する力がとても強くて、その上感じたことや思ったことに対して素直な人物なので、人から見ると変人に見えたり、迷惑をかけてしまうこともあります。多感ゆえに傷つきやすく、周りと価値観のズレから相容れず落ち込むこともあります。そういった生きにくさのある人物でありながらも、彼女が繊細な脆い心を抱えながら、自分の中の綺麗なものを大事にして生きているという姿は美しいと思い早川さんを描きました。人に迷惑をかけるのはよくないですが、彼女のような繊細な感覚の持ち方を肯定できればいいなと思いました。

ーー早川さんの絵に対し先生が話した“「上手い絵」ではないんだけど/とても綺麗”という台詞が印象に残っております。

石田:絵がもし何かを伝えたり表現したりするためのものである場合、技術はそれをより効果的に伝えるための方法や手段だと考えています。技術はないものの、早川さんが持っている表現したいものが綺麗だった、ということを示せればと思いこのシーンを描きました。

 早川さんの中にある世界、見えている世界の綺麗さが、実際に形となって出力されて他の人にも伝わるという描写がしたくて、なにかの創作によって示せればいいなと思いました。技術がないにも関わらず綺麗に見えてしまうほどに表現したいもの自体が綺麗だったことを表現しやすいと思ったので、美術の授業で描く絵という形を選びました。

ーー早川さんと対照的な古淵くんを描くなかで意識したことは?

石田: 早川さんと古淵くんはどちらも自分を投影したキャラクターです。古淵くんに関しては周りに合わせていればいいと思いながらも、どこかそれでいいのだろうかと思っているということを意識しながら描きました。

 SNSによって四六時中人と繋がることができますが、他人に追いつかなきゃと焦ってしまったり他人と自分を比べてしまいがちな人は、それに心をとらわれすぎると自分が摩耗して疲れてしまったり、段々と自分が本当に考えたり感じていることを忘れてしまうような感覚があって。そういった周りに合わせすぎることの負の部分を象徴するものとしてスマホを描きつつ、登場人物にスマホを投げてもらいました。 自分自身が早川さんのような人を欲していた部分もあるのかもしれません。

ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。

石田:小学生のころは『ドラえもん』などの漫画が好きで、よく自由帳に絵を描いていました。年齢を重ねるなかで絵を描くことから距離を取るようになったのですが、2年ほど前に1万円分の図書カードを手に入れたときがあって。せっかくなので最近の漫画を知るため『五等分の花嫁』を購入したらとても面白くて、また漫画に関心を持つようになりました。

 それから自分も漫画を描きたい、漫画家になりたいと思うようになり、漫画を描きはじめました。

ー今後の目標を教えてください。

石田:まずは新人賞に選ばれるような作品を描き上げ、自分の作品を連載できるようになりたいです。自分も作品をつくりたいという思いから漫画を描きはじめましたが、漫画を描くなかで、自分の漫画を読んで読者の方が少しでもいい方向に変化できればいいなと思うようになりました。ただ自分はそんなに器用なタイプではなく、人が感動するように計算して作品をつくることはむずかしいと思っているので、自分自身がいいなと思うものを漫画として描けたらいいなと思っています。

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