平成フラミンゴの表紙で話題『my HERO』の狙いとは? 三浦 明 編集長が語る、インフルエンサー×リアルの可能性
平成フラミンゴが表紙を飾ったインタビュー雑誌『my HERO vol.03』が5月12日に発売されて以降、ヒットを続けている。フォロワー数が100万人越えのインフルエンサーに特化した『my HERO』は、YouTubeなどではあまり語られない彼らの本音に迫ったロングインタビューが掲載されているのが特徴で、実際に手に取ることができる「本」ならではのアプローチが好評だ。
同書を手がけた株式会社my HEROは、次なるステップとしてリアルイベント「my HERO Festival2022」を8月29、30日にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で開催することを発表。新たにコスプレイヤーのえなこ、アーティスト・インフルエンサーのもーりーしゅーとが参加することも発表され、ますます期待が高まっている。同誌の編集長で、株式会社my HEROの代表取締役である三浦 明氏に、『my HERO』というプロジェクトの狙いを聞いた。(編集部)
インフルエンサーたちが目指すもの、掲げるものを作る
ーーSNSのフォロワー数が100万人を超えるクリエイターにフォーカスしたインタビュー本『my HERO』vol.3が5月に発売され、即重版の大ヒットを記録しています。そこに至るまでの経緯を伺いたいのですが、そもそも三浦さんは、これまでどんなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。
三浦:もともとLDHでEXILEのマネジメントをしていたのですが、第一章が終わるタイミングで、エイベックス株式会社に転職し、その後倖田來未をはじめ、多数のアーティストマネジメントを担当していました。そのなかで、アーティストありきではなく、自分で作れるコンテンツはないだろうか、と考えるようになって、フリーランスに転身。当時はちょうどTikTokが日本でサービスを開始したところ(※2017年)で、またライブ配信サービス・SHOWROOMが盛り上がってきていて、つまり一般人がインフルエンサーとして成立しつつあるタイミングでした。配信サービスから、「タレントのアカウントを作りたいからつないでほしい」というご依頼を受けることが増え、時流に乗ることができたんです。
そして、ちょうどそのころ、友人の紹介で、YouTuberで現在は太田プロに所属している「ヴァンゆん」(ヴァンビ・ゆん)の二人と出会うことができました。当時から、YouTuberとしてだけではなく、その先を見据えた展開を考えているということだったので、2018年から二人をサポートしています。その後、バンカラジオや谷口布実などのクリエイターもサポートするようになりました。
ーー同時に、芸能プロダクションの側もインフルエンサーを重用し始めました。
三浦:そうですね。芸能事務所さんも、「インスタ広告って何なの?」という感じで、まだSNSでのPR等について、業界として整理ができていない時期だったので、各社から問い合わせをよく受けていて、アドバイザーとしてご一緒することも増えました。
そのなかで、YouTubeにTikTok、Instagramから、急増していたライブ配信サービス/アプリについても、一通り自分で試してみました。そのすべてにおいて、クリエイターとの契約形態や料率など問い合わせて、研究を重ねたんです。芸能業界と、ネット業界にも精通する裏方としてやっていくために、そこがわからないと負けてしまうと思って。
そのなかで人脈が広がり、とくにYouTubeについてはクリエイター自身や、マネジメントの方々とも多く知り合うことができて、例えば企業さんから「広告案件」の相談を受けたときに、紹介することも増えていきました。
ーーそうしてインフルエンサーとの関係性が深くなっていくなかで、「my HERO」という企画に行き着いたんですね。
三浦:そうですね。それまで「点」だったインフルエンサーとの取り組みを「面」で捉えたいと考えたとき、自分の名刺になるようなコンテンツが必要だと思ったんです。それが2019年、新型コロナウイルスが流行する少し前でした。当時、大手広告代理店が副業OKになるなど、競合が増える傾向もあったので、急いで準備を進めなければと。大きな波には適いませんから、僕個人の前を走ってくれるフラッグシップとなるオリジナルコンテンツが必要だったというか。
ーー事務所の垣根も超えて、インフルエンサーが目指して集まれる旗印ですね。
三浦:芸能界と違い、インフルエンサーは基本的に個人商店で、「統一された規格」のようなものがありません。あるとしたら、YouTuberがチャンネル登録者数に応じて贈られる「盾」や、認証マークくらい。そのなかで、インフルエンサーたちが目指すもの、掲げるものを作るーー無理難題に見えたとしても、やってみる価値はあると考えました。ビジネスというより仕組みというか、そうしたメディアでありコミュニティを作りたいと。
ーーフォロワー数100万人を超えるインフルエンサーが集まり、語り合えるサロンのようなイメージでしょうか。
三浦:そうですね。人気YouTuberのマネジメントをする、あるいは育てるという選択肢もありましたが、やはり、それでは「点/個」になってしまうと思って。そうではなく、もっとシーンを俯瞰で見て、「面/仕組み」を作ろうと。
ーーそれがまずは『my HERO』という書籍の形で世に出ました。どんなことにこだわりましたか?
三浦:とにかくインタビューですね。競合となるインフルエンサー雑誌を読んでいて、決して良い悪いではなく、僕が伝えたい本質はそこに載っていない、と思ったんです。僕はマネジメントの経験があるからこそ、キラキラしたところだけでなく、彼らの苦悩とか、覚悟を知ってもらいたいと思う。例えば、「カッコいい/かわいい」というのは、インフルエンサーの魅力の一片にすぎず、そこにフォーカスする必要はない。僕はYouTuberが10分の動画を作るのに何日もかけていることを知っていますし、直接話してみて、彼らのこだわりや努力に感動してきました。もちろん、本人たちは基本的に自分の動画で裏の努力を語りませんから、そういうことを伝えられたらと。
ーーそもそも、なぜ「本」だったのでしょう?
三浦:それ、めちゃくちゃ仲間内でも言われました(笑)。「いま本なんか出しても買わないよ」と。ただ、僕にとっては紙の本であることにこそ、勝算があったんです。つまり、インフルエンサーはSNS、YouTubeなどを含めて、それぞれがウェブ上に「メディア」を持っており、自分自身で発信ができている。だから、基本的にウェブでできることについては、参加する動機を持ちづらいんです。それが書店に並ぶ本だったら、彼らだけの力では実現できないし、届く客層も変わってくる。つまり第一線で活躍するインフルエンサーたちにも、出演するメリットがあるということです。その上で、フォロワー数100万人以上のインフルエンサーに焦点を絞り、普段は語れないことを語ってもらう、というのは、有意義に感じてもらえるだろうと。ただ、特に創刊号は、まだ見本になるものもないので、そのコンセプトを理解してもらうのが大変でしたね。個人的には様々なライブステージや映像制作の経験はありましたが、本自体を作ったこともなかったので、構想は早い段階からあったのですが、形にするまでには時間がかかりました。