【漫画】もしも人の本心を「見る」ことができたら? 二人の少女の関係を描いた漫画にホッコリ
ーー読むなかで楽しさを感じつつ、物語のオチで心を掴まれた作品でした。創作のきっかけを教えてください。
電算機一郎(以下、電算機):これまで即売会で同人誌を販売するため、漫画創作を趣味としていました。しかしコロナ禍の影響により即売会に参加する機会が少なくなってしまったため、2020年からインターネット上でも漫画を公開するようになりました。
ショートショートのSF作品をよく読むので、超能力を用いた日常コメディ漫画を描きたいと思って創作したものが本作です。人の心が絵になって見えるというアイデアをまず思いつき、そこから物語を考えていきました。
ーーキャラクターの設定や物語の結末など、まさしく小説のショートショートを彷彿とさせる作品だと感じました。漫画を創作するなかで意識している点は?
電算機:オチのところで読者の方にアッと思ってもらいたいと思いながら描いています。そしてできれば、自分の漫画を読んでいる時は楽しい気分になってほしいという思いもあります。
ーー読者の方に楽しく読んでもらうため、本作で意識した点を教えてください。
電算機:主人公の悠美は、自分のためには能力を使わないキャラクターにしました。人の心を見ることができるという設定なので、暗い話にすることもできたかと思います。
この子は人の心を覗き見しているんじゃないかと、読者の方がなるべく気にならないように、嫌味がないキャラクターとして描くことを意識して行動や台詞を考えました。
ーー本作の核となっているのは悠美さんの存在かと思います。彼女や友人である「真衣」さんを描くなかで意識した点は?
電算機:人の心を見ることができる能力をつかい、悠美は周りの人を見守るキャラクターとして描いています。しかし悠美だけを描くと彼女を見守る存在はいないため、孤独なキャラクターになってしまうと思いました。
当初、作中に登場する真衣は悠美とやり取りするだけのキャラクターでした。ただ人を見守る悠美を更に見守る存在として真衣を描くことで、どこかで誰かが自分を見守っているといった、世界をやさしく捉えられる作品になるかと思ったのです。
その世界観を最後にオチとして提示すれば、読み物として上手くまとまると考えました。それで真衣は、悠美と並ぶ重要なキャラになりました。
ーー創作活動を続ける思いを教えてください。
電算機:漫画を描く行為自体に憧れがあるんです。子どものころからお話やキャラクターをつくることが好きで。今でもその衝動が残っていて、漫画を描き続けているんだと思います。
小さいころの自分にとって漫画は娯楽の王道みたいなものでした。たくさん楽しい思いをさせてもらったので、大きくなったら自分の手で漫画を描いてみたいし、自分の作品で楽しい思いをしてほしい。そんな感情が根本にはあるのだと思います。
今は漫画を描く方も増えて、上手な描き手も本当に大勢いる。その中で自分が描く意味というのをよく考えるんですが、結局のところ「自分の手でそれをやりたい」ということに尽きるんじゃないかと思います。
ーー今はSNSでも漫画作品を公表できるかと思います。電算機さんの感じる即売会の魅力とは?
電算機:ひとつは自分の描いたものが本という、目に見える形となることがうれしいです。もうひとつは読者の方と会えることですね。直接お話をすることができたり、常連さんが来てくれたら「まだこの人元気なんだな」と思ったりなど、お互いの存在を目で見て確認できることも大きな魅力だと思います。
即売会では来てくださった方にしか作品を見ていただけません。しかしSNSで作品を発表することは、より多くの人に作品を見ていただける可能性を秘めていると思います。時には外国の方からコメントをいただけることもありました(笑)。即売会とSNS、私はどっちも好きなので、これからも両方を続けていきたいですね。
ーー今後の活動について教えてください。
電算機:今の状況が落ち着いたらまた即売会に参加したいですね。ネットで漫画をアップするようになってから読んでくださる人も増えたので、ネットで発表した作品を本にまとめ、即売会で販売したいと考えています。
読んでくれる人が楽しい気持ちになるものを描いていけたら、自分も楽しくなれる。そんな気持ちを忘れずに創作を続けていければと思います。