絶対にいらない一品も!? 『名探偵コナン』阿笠博士の発明品を振り返る
前回「一度は使ってみたい阿笠博士の発明品」と題し、『名探偵コナン』においてコナンが使用しているアイテムを紹介した(https://realsound.jp/book/2021/09/post-851088.html)。今回は前回と趣旨を180度変えて、現実には必要なさそうな阿笠博士の発明品について考えてみたい。
腕時計型麻酔銃
メガネ、蝶ネクタイに次ぐ、コナンのアイコン的アイテムである腕時計型麻酔銃。初登場は第3巻収録の「豪華客船連続殺人事件」。以降はコナンの推理の肝である“眠りの小五郎”を披露するときの必須アイテムとして、また凶悪な犯人にコナンが対峙した際の切り札として常に活躍してきた、コナンにとって欠かせないアイテムのひとつだ。
腕時計の上蓋が照準機となっており、時刻合わせのネジが発射ボタンというハイテク感に、登場当時多くの読者がワクワクしたことだろう。針が1本しか収納できないというある種の縛りが、結果として打ち込んだ針を外してしまったときや、狙った探偵役とは別の人物に命中させた時の緊張感など、このアイテムならではのハプニングも見所になっている。
そんな腕時計型麻酔銃だが、阿笠博士の発明品の中では最も実現が難しいアイテムのひとつだろう。そもそも一発打ち込んだだけで瞬間的に人を2~30分眠らせてしまう麻酔というだけで相当危険なシロモノであるが、打ち込んだ針はスグに消滅するという証拠の残らなさも相まって、いくらでも悪用できてしまう。また、人を眠らせるというシチュエーションそのものがあまりにも犯罪チックになってしまう。コナンのように犯罪解決という大義名分があれば(あっても本当はダメなのだが)ともかく、現実の社会で理想的な使い方を考えるのは難しく、そういった意味で腕時計型麻酔銃は決して欲しいアイテムではないのかもしれない。
イヤリング型携帯電話
第14巻で初登場したイヤリング型携帯電話。その名の通りイヤリングの形をした電話で、本体から伸びるイヤホンで音を聞きながら会話することができる。蝶ネクタイ型変声機から直接音声を送ることが出来る機能も備わっており、これを活用して蘭を通じてコナンが事件を解決したこともあった。
近年ではこのアイテムはめっきり姿を見せない。このイヤリング型携帯電話が単行本で初登場した14巻は1997年の刊行。実に今から24年前に遡る。当時はまだメールやインターネット閲覧をする、いわゆる「iモード」すら登場していない頃。そんな当時だからこそこのイヤリング型携帯電話はコナンをサポートするアイテムとして効力を発揮した。その一方で、『名探偵コナン』という作品はリアルタイムで社会を反映させ続けてきた。カラオケが流行すればカラオケBOXが事件の舞台になり、ゴスロリが流行すればゴスロリ服の双子コーデがトリックに使用された。それは携帯電話とて例外ではない。
時代と共に我々の持つ電話機が進化し続けてきたように、コナンたち登場人物が持っている携帯電話もそれに合わせて進化を重ね、今では事件のキーアイテムとしてスマートフォンが登場する程である。そんな時代の変化に合わせて、イヤリング型携帯電話も作品から姿を消してしまった。読者である我々としても、今となっては電話の機能しかないイヤリングは魅力的に映らなくなってしまった。時代の移り変わりと共に魅力が薄れてしまった、長期連載を続ける『コナン』ならではのアイテムだろう。