『進撃の巨人』エレンの真意はどこにある? “残酷で美しい”物語の閉幕に寄せて
アルミンは、折に触れて「話し合おう」と言い続けてきた少年である。巨人化したエレンが処刑されそうになったとき。仲間だと思っていたアニが敵だとわかったとき。マーレ人の争いに終止符をうつには地鳴らしを起こすしかないと言われたとき。いつだってアルミンは、わかりあえない相手のことも知り、手をとりあえる道を探そうとしていた。それは、壁の外に人類がいると知って「ガッカリした」というエレンとは対極の姿勢のように思える。エレンが夢見た壁の外には、たぶん、行く手を阻むものはなにひとつ存在しなかった。ほかにも人類が存在した、というのはエレンにとって、自由を阻む可能性が新たに増えた、ということだったのかもしれない。強大な敵が現れようとも一丸とはなれない人類の本質を知り、自由を守り生きるためには戦い続けなくてはならないと信じてきたからこそ、よけいに。
けれどアルミンは、どんなときでも、どんなに恨みがもつれた相手でも、話し合い理解しようとすることをあきらめなかった。そんなアルミンにエレンは言い放つ。〈話し合いなど必要無い〉と。〈オレを止めたいのならばオレの息の根を止めてみろ〉と。そこには、闇落ちした主人公とそれでも彼に手を差し伸べる親友の構図ができあがる。
だが――本当に? 巨人が単なる獰猛な敵ではなかったように、これまで幾度となく、わかりやすい二項対立を覆してきた諫山さんだ。そうシンプルに事が運ぶはずがない。果たしてエレンの真意はどこにあるのか。ともに肩を並べて走り続けてきて幼なじみたちは、どんな結末を迎えるのか。最後の最後まで読者の予想を裏切り続ける物語の閉幕を、ぜひその目で確かめてみてほしい。
■立花もも
1984年、愛知県生まれ。ライター。ダ・ヴィンチ編集部勤務を経て、フリーランスに。文芸・エンタメを中心に執筆。橘もも名義で小説執筆も行う。
■書籍情報
『進撃の巨人 (34)』
諫山創 著
定価:572円
出版社:講談社