『銀魂』坂田銀時はジャンプらしくない主人公? ギャグとシリアス、ギャップの魅力

『銀魂』坂田銀時の魅力とは?

 こうして常に仲間のために戦ってきた銀時だが、シリアスパートの最後にはいつのまにか飄々とした様子に戻っているのも“らしい”。読者からも人気が高く、映画化、実写映画化にもなった「紅桜篇」でもそうだ。瀕死の状態になりながらも桂小太郎と背を合わせつつ、高杉晋助が手を組んだ天人たちを斬り倒している真っ最中。高杉を止められなかった桂が「国どころか 友一人変えることもままならんわ!」と呼びかけると、「ヅラぁ お前に友達なんていたのか!? そいつぁ勘違いだ!」とニヤリと応える。そして、桂と剣を合わせながら「俺達ゃ次会った時は仲間もクソも関係ねェ! 全力でてめーをぶった斬る!!」と高杉に宣戦布告し、パラシュートで船を脱出。落下している最中、桂が松下村塾の教本を取り出し、感慨深く過去と今に思いを馳せる。そして、「銀時…お前も覚えているか コイツ(教本)を」問うと、銀時はしれっとこう述べた。

ああ

ラーメンこぼして捨てた

 当時、「育ての親とも言える松陽や桂・高杉などの仲間たちとの絆とも言えるべき教本を捨てられる訳は無い」という意見、「教本がなくても教わったことは魂に刻まれている」という意見、様々な考察が飛び交っていたことを覚えている。真相は分からないが、いずれにせよ最後の最後で桂の問いかけをのらりくらりと交わす姿は、なんとも銀時らしいのではないだろうか。

 難しく考えない単純な男に見えて、想像以上の過去を背負っている「坂田銀時」という男は、ストレートなメッセージに溢れつつも想像の余地が十分にある『銀魂』という作品を反映した、紛うことなき主人公であったのではないだろうか。連載が終わってもなお、人々を魅了し続ける『銀魂』の最後のアニメ化が待ち遠しい。

■書籍情報
『銀魂』(ジャンプ・コミックス)77巻完結
著者:空知英秋
出版社:集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/list/gintama.html

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