『アンデッドアンラック』がネクストブレイク確実と言われるワケ デタラメさの中にある“リアル”

『アンデラ』デタラメさの中にある“リアル”

 今回起こった罰は「UMA銀河(ギャラクシー)」の追加。しばらくすると無数の宇宙船が現れ、地球外生命体(宇宙人)が地球侵略にやってくる。地球外生命体は、特殊チームのジュイス(ナンバー1)が「不正義」の力であっさりと倒してしまうのだが、この「簡単に世界が改変される」ことこそ『アンデラ』の恐ろしさだ。

 普通の漫画なら唐突に宇宙人が出てくると「この作品の世界観、壊れてないか?」と言いたくなるが、むしろ「後付けで設定が足されて、世界のルールが変わることの理不尽さ」こそが、本作の根底にある世界観だと言えよう。とてもゲーム的である。

 同時に思うのは、『アンデラ』世界の理不尽さは、パンデミック、気候変動、天変地異が頻繁に起こり、明日何が起きても(新しい設定が足されても)おかしくない現代を生きる私達が感じている不安とシンクロしており、デタラメだが、とてもリアルに感じる。

 その意味でも、アンディたちが戦っているのは、否定者やUMAだけでなく、自分たちを縛る「否定」の力という“設定”であり、簡単に改変されてしまう「世界の理」そのものなのだと言える。そんなものと「どう戦えばいいんだ?」と毎回思うのだが、だからこそ目が離せない。

 その後、11人目の否定者を特殊チームに加えるため、アンディたちはブラジルのリオデジャネイロでマフィアが主催している黒競売の現場に潜入。捕まっている「不動」の否定者をめぐって、ユニオンと敵対する否定者のチーム(否定者狩り)との戦いがはじまり、物語は更に複雑化していく。

 ここまで人気が出れば、突然の打ち切りはさすがになさそうだが、いまだに先が読めない設定過剰な漫画である。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『アンデッドアンラック』既刊3巻
著者:戸塚慶文
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/undead.html

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