ナイツ・塙が語る、大阪芸人が賞レースで強いワケ 「ライブとM-1のお客さんでは笑うポイントが違う」
本を出したことでハードルは上がっている
――審査員の話に戻すと、サンドウィッチマン・伊達(みきお)さんとの対談で、2018年の『M-1』では、審査前に決勝進出者のネタを入念に見てから臨んだ、という話があったのを覚えています。
塙:3月に『ytv』で審査をしたときに、すべて初見で臨んだら、全員の点数が高くなっちゃったんですよ。それもあって、各芸人で基準を作った方がいいのかな、と思ってネタを見ることにしたんですよね。自分の中での好き嫌いもしっかり決めて、この人は面白いっていう人に点数あげたほうがいいじゃないですか。ただ、俺が適当に選んだネタを見ただけなので、事前に評価を決めすぎるのは良くないと思いますけど。
――今年の『M-1』に関して、審査員のお話というのは……?
塙:まだ来ていないんですよね(取材は10月中旬)。もしオファーをいただいたら、やるかもしれないです。ただ、本を出したことでハードルは上がっているので、ちょっと気恥ずかしい部分もあって。そういう意味では「オファーを断る」っていうパターンもありますよね。「あんだけ書いて、やんねえのかよ!」っていう(笑)。
――(笑)。逆に、審査員としてはかなり箔が付いたと思いますけど。
塙:それが恥ずかしいんですよ。全国ツアーでも、ちょっとウケないところがあると「この本のせいじゃねえか」って思っちゃう(笑)。疑うように見る人が増えてるような気もするし。一回この本のイメージを消したほうがいいのかな、と考えたりもします。
――なるほど。ちなみに、2019年に向けて注目しているコンビは?
塙:和牛やかまいたちは引き続き本命でしょうけど、個人的にはからし蓮根に注目ですね。ボケの伊織くんが巨人師匠のお店で働いていて、ある意味師弟関係みたいなものなんですよ。そういう繋がりがあることは、精神的にも支えになってくれるような気がしています。2人の人間性も漫才のスタイルもいいし、漫才師としてはすごく応援される存在になるんじゃないかと。こういう取材のときに他のコンビの名前も挙げたくて、自分から『M-1』のホームページを介して予選ネタを見たりしてるんですけど……今のところほかに面白いというコンビにはまだ出会えていないので、引き続き探してみます(笑)。
(取材・文=中村拓海/撮影=富田一也)
■ナイツ・塙 宣之(はなわ のぶゆき)
芸人。1978年、千葉県生まれ。漫才協会副会長。2001年、お笑いコンビ「ナイツ」を土屋伸之と結成。08年以降、3年連続でM-1グランプリ決勝進出、18年、同審査員。THE MANZAI 2011準優勝。漫才新人大賞、第六八回文化庁芸術祭大衆芸能部門優秀賞、第67回芸術選奨大衆芸能部門文部科学大臣新人賞など、受賞多数。
■書籍情報
『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』
塙宣之 著
価格:902円(税込)
判型:新書
発売/発行:集英社
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