B'z、Ado、V6、マカロニえんぴつ、ILLIT、レトロリロン……注目新譜6作をレビュー
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はB'z「FMP」、Ado「MAGIC」、V6「笑顔が好き」、マカロニえんぴつ「ハナ」、ILLIT「Secret Quest」、レトロリロン「バースデイ」の6作品をピックアップした。(編集部)
B'z「FMP」
たとえば今、中学生くらいの子に「ハードロックってどんな音楽ですか?」と聞かれたとしたら(聞かれないと思うが)、私は黙ってこの「FMP」を聴かせるだろう。メロディアスなギターのイントロ、ずっしりとした重さを維持したまま疾走するビート、起伏に富んだダイナミックなボーカル。2番ではドラムソロっぽいフレーズが織り込まれ、徐々にテンションを上げながら「Yeah!」という叫びとともに30秒弱のギターソロへと突入していく構成はどこを切ってもザ・ハードロック。当然だが、現在のチャートを見渡してもこういうテイストの曲は皆無であり、B'zだけに許された特権なのだ。11月12日リリースのニューアルバム『FYOP』に向けて、盛り上がらざるを得ない。(森)
Ado「MAGIC」
9月から放送中のアニメ『キャッツ♥アイ』(ディズニープラス/スター)。懐かしのオリジナルテーマ「CAT’S EYE」もAdoの歌唱だが、こちらは同番組の新たなオープニングテーマとなる書き下ろし。楽曲提供は初タッグとなるボカロPのツミキ。4つ打ちのダンスナンバーで、最初こそ昭和歌謡っぽいメロディや歌詞で始まるものの、中盤からは令和カルチャーへ全面突入。めくるめくスピード感とトリッキーな言葉遊びでリスナーを翻弄していく。改めて痛感するのはAdoの歌い手としてのプロ意識の高さ。作家の仕掛けが複雑であればあるほど、まったく違う声色を使い分け、ここぞという見せ場であのドス声を投入する。まるでグループのマイクリレーのような七変化が楽しい。(石井)
V6「笑顔が好き」
デビュー30年を記念して全楽曲をサブスク解禁したV6。あわせて公開された未発表楽曲は、作詞・坂本慎太郎、作曲・小山田圭吾という豪華布陣によるもの。軽やかに、ファンタジックに、聴き進むほど重層的に広がっていくサウンドはまさに小山田オリジナル曲のよう。坂本の歌詞は自身の世界観とは大きく異なり、曲が持つポジティブなパワーを最大限に引き出しつつ、子どもにも伝わる、同時に疲れた大人にも沁みる内容となっている。メンバー6人は歌い手であると同時に“いい声”の提供者であり、それぞれがセリフとして語る〈笑顔が 好き〉という言葉たちは小山田の手によって魔法のように音楽になっていく。ファンにとってもこれは最高の置き土産では。(石井)
マカロニえんぴつ「ハナ」
“ビヨーン”と表記したくなるおかしみと寂しさを併せ持ったシンセから始まる「ハナ」は、作詞をはっとり(Vo/Gt)、作曲を高野賢也(Ba/Cho)が『みんなのうた』(NHK総合/NHK Eテレ)に書き下ろした楽曲。どこか憂いを感じさせるAメロ、大らかに広がっていくサビからベースソロを挟み、徐々にスピードアップ……と思ったらいきなり倍テンポになり、ハードロック直系のハモリのギターソロが炸裂する、マカえんでしかありえない展開が面白い。全体的にはノスタルジックでほっこりする曲なのだが、Guns N' Roses「Sweet Child O' Mine」へのオマージュが挿入されていたり、遊び心もたっぷり。小さい子どもがこの曲を好きになって、それがロックの入り口になったりするかも、と想像するのも楽しい。(森)
ILLIT「Secret Quest」
『ポケットモンスター』韓国版TVアニメのエンディングテーマ。爽やかなストリングスから始まるイントロ、Aメロ、Bメロ、サビがはっきりと区切られたドラマティックな展開、一度聴くだけで口ずさみたくなるキャッチーなフレーズなど、楽曲の構成自体はJ-POP(もしくはアニソン)のスタイルに寄り添っていて、日本のリスナーにも親しみやすいはず。歌詞は韓国語。「冒険を通して自分の大切なものを見つける」というテーマはポケモンの世界観とリンクしつつ、アニメと離れたところでも多くの共感を生み出すはず。ピュアなきらめきを感じさせるボーカルも魅力的。ILLITの軽やかなポップネスがバランスよく表現された楽曲だ。(森)
レトロリロン「バースデイ」
近年ネクストブレイクアーティストとして熱い注目を集めている4人組のメジャー3rdシングル。柔らかなピアノから始まる王道のポップスで、タイトルは「バースデイ」だが、お祝いソングにあらず。今を生きる人々の葛藤や逡巡を掬い上げていく、自己肯定のための強いメッセージソングだ。ソウルとJ-POPの中間を行くメロディラインが、時に柔らかく心を包み、時にはギュッと心を締めつける。涼音(Vo/Ag)はもともとシンガーソングライターとして活動していた経験もあるので、ライブハウスで目立つための高音を張る癖はないのだろう。エモーショナルに駆け上がるメロディはもちろん魅力的だが、低音域でもまったく埋もれずに聴かせていく技量がすごい。(石井)


























