V6という宝箱は何度も開けて眺めたい 「over」「出せない手紙」「way of life」……胸に沁み入る“珠玉のバラード”

V6、珠玉のバラードナンバーを紹介

 V6の楽曲全400曲が、デビュー30周年記念日となる11月1日よりサブスクリプションサービス/ダウンロードサービスで一斉解禁された。2021年11月1日の解散から4年を経た今も、なお彼らの歌声を求める声が絶えないことの証と言えるだろう。

 「愛なんだ」「WAになっておどろう」「Can do! Can go!」など、時代を超えて歌い継がれる数々のレジェンド曲を世に送り出してきたV6。しかし、ファンの間で大切に聴き継がれてきた名曲は、それらだけにとどまらない。

 今回のサブスク解禁は、約26年の活動期間にわたって積み上げられたV6の歴史に、ワンタップでアクセスできる“令和のタイムマシン“。そこで今回は、少しセンチメンタルな気持ちになりやすいこれからの季節に寄り添う、V6の珠玉のバラードソングを紹介したい。

「over」(1998年)

V6 / over(YouTube Ver.)

 デビューから解散まで、ひとりも欠けることなく走り抜けたV6。そんな彼らを象徴する1曲として挙げたいのが「over」だ。 1998年、森田剛・三宅健・岡田准一によるユニット・Coming Century(以下、カミセン)が主演を務めたドラマ『PU-PU-PU-』(TBS系)の主題歌として起用されたこの楽曲は、作詞を担当したのが坂本昌行・長野博・井ノ原快彦による20th Century(以下、トニセン)だった。

 〈できない事なんてなんにもないから〉〈果てしない夢を描こう〉と、同じグループでありながら、どこか保護者のような立場でもあったトニセンから、カミセンへ向けた温かなエールともいえる歌詞に、胸が熱くなる。しかし、当時の坂本は27歳、長野は26歳、井ノ原に至ってはまだ22歳だったという事実に驚かされる。カミセンに対してずっと年上のように感じられた彼らも、実は同じ20代の若者だったのだと思うと、人間的な器の大きさを感じさせるその歌詞の深みに、改めて感嘆せずにはいられない。

 夢を描くアイドルとして、できることなら刹那に燃え尽きることなく、ファンとともに末永く歩み続けていこうじゃないか。 〈道に迷った時でも 逃げ出さない強さ 誇れる自分でいよう〉という一節からは、そんな静かな決意が伝わってくる。年下組のメンバーを導きながら、同時に自分たちをも鼓舞していたトニセン。だからこそV6は、互いの歩みを尊重しながら長く着実に前へと進むことができたのだろう。その原点に、この「over」という楽曲があったのだと思わせてくれる。

「出せない手紙」(2001年)

V6 / 出せない手紙(YouTube Ver.)

 2001年に三宅が今井翼とダブル主演を務めたドラマ『ネバーランド』(TBS系)の主題歌となった「出せない手紙」。作詞を担当したセキヤヒサシは、同作の原作者である小説家・恩田陸のことであり、〈怖いくらいの夕焼け〉といった小説的なフレーズが耳に残る楽曲だ。

 当時のドラマは、今の感覚ではなかなか扱いにくいセンシティブな題材も描かれていた印象がある。『ネバーランド』は、多感な17歳の夏に揺れ動く少年たちの心を繊細に映し出した作品となっている。

 〈僕らはずっと裸足のまま この浜辺で/きらきら揺れる白い波を 追いかけてる〉という歌詞には青春のきらめきがあふれているが、〈出せない手紙を捨てられないのは 終わりにしたくないから〉という一節には、拭いきれない心の影のような切なさが漂う。

 大切なあの人とはもう二度と会えない。そんな残酷な現実を今はまだ認めたくない。またいつか会えるはずだという夢を信じていたい。ある意味で幼く、そしてどこまでもピュアな歌詞を、V6の透明感のあるユニゾンがそっと包み込む。 秋の夜長に読書をするような感覚で、じっくりと味わってほしい楽曲だ。

「メジルシの記憶」(2003年)

V6 / メジルシの記憶(YouTube Ver.)

 V6のバラードは、夜空によく映える。深い群青のステージにキラキラと光るミラーボールや、青白いスポットライトの演出を何度も見てきた。なかでも〈君は今どの星を見てる?〉と問いかけるこの曲も、夜空が似合う楽曲の代表格だ。

 V6の歌唱の柱といえば、坂本と井ノ原だと長年言われてきた。ミュージカルでも活躍してきた坂本の伸びやかで華のある歌声と、キリッとした輪郭で心地よく届く井ノ原の歌声。そのコントラストが鮮やかで、思わず耳が惹きつけられる。この楽曲でも、その魅力が遺憾なく発揮されている。

 一方で、V6のユニゾンを奥深くしているのは他の4人の個性だ。長野は本人の柔らかな印象そのままに、温かな声色を響かせる。森田はパーソナルなイメージを覆す繊細で甘い高音でアクセントを添え、三宅は空気を含ませた鋭く澄んだ声で楽曲を彩る。そして岡田の包み込むような力強い歌声が全体をまとめあげ、V6ならではの唯一無二の“声の層“を生み出しているのだ。

 星々やネオンの光が溶け合って夜景を形づくるように、6人の歌声がそれぞれの色で輝く。だからこそ、V6の歌声は夜空に似合うのかもしれない。きらめく夜の風景を眺めながら聴き込みたい1曲だ。

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