『アイドリッシュセブン 劇場総集編』で描かれるIDOLiSH7がアイドルになるまで 7人の軌跡が宿す“明日への力”

「WiSH VOYAGE」「MONSTER GENERATiON」……IDOLiSH7のライブが蘇る

 物語が進み、アニメ1期のオープニング「WiSH VOYAGE」が劇場で響くと、劇場はライブ感に満たされる。真っ直ぐな視線を投げかける陸の瞳、そして軽やかにステップを踏みながら歌う一織たちの姿――。弾むダンスビートと希望に満ちた7色の声が重なり、その躍動感で劇場は一気にライブ会場へと変化した。特に、グッズの使用や声出し、拍手が可能な“応援上映”では、ペンライトの光が揺れることでライブ感はより強くなっていく。2018年、テレビの前で毎週心を躍らせた記憶だけではなく、7人が実際にステージで歌う姿を生で見た思い出までもが、楽曲とともに蘇りさえしたファンも多かったと思う。そんな物語のはじまりを飾る1曲目から〈何が正解かって/分かんないから Try and Jump!/ぶち当たって笑いあう/僕らの It’s Only Way!〉と歌い上げる彼らの姿は、これまでともに歩んできた時間を象徴しているようだった。

アイドリッシュセブン『WiSH VOYAGE/IDOLiSH7』MV FULL

 両手で足りるほどの観客しか集まらなかった初ライブで歌われた、IDOLiSH7の「MONSTER GENERATiON」。チラシを懸命に配り、彼らが一生懸命に準備した初ステージを目撃したのは、9人の観客だった。しかし、劇場でその様子を見守る観客は、誰もがマネージャーであり、チラシを受け取って野外大音楽堂へと足を運んだ“9人の観客”のひとりに間違いない。そんなことを、IDOLiSH7のアイドル人生でたった一度きりの初ライブの「MONSTER GENERATiON」で蘇るのだ。初ライブの大会場は散々な集客だというのに、それでも彼らは落ち込むことなく目の前にいる9人に忘れられない時間をプレゼントし、IDOLiSH7は〈このMelodyがいつかは(Fly! High! Fly!)/世界中 旅をしてくように/響け Fly away〉と歌ったのだ。初めてのライブを終えて「次はもっと頑張って、この会場を満員にしよう」と息巻く彼らは、厳しい現実の中でも前を向く。まだ結成したばかりのアイドルながら、真っ直ぐな声で歌われるポジティブなメッセージが、映画館というライブ会場に虹のような輝きを放っていた。

アイドリッシュセブン『MONSTER GENERATiON』MV FULL

アイドルの夢を叶えようともがく彼らが“与えるもの”

 アイドルは、その姿やパフォーマンス、歌声で観る者に力と元気を与える、“明日への力”となる存在だ。そんなアイドルへの階段を、時に落ち込み、失敗しながらも、一段ずつ着実に昇っていくIDOLiSH7の姿を見守ってきた私たちの日々もまた、その後の現実を生き抜く力となり、支えになる。彼らはアイドルとしてのプロ意識を育てながら、幾度もの困難に立ち向かってきた。ある時は歌やダンスを禁じられた結果、パフォーマンスへの熱を確認し、また悪天候でステージが中断した時には、環のダンスと壮五の歌で乗り切るなど、自分たちで答えを見つけ、再び立ち上がった。そのステージでのハプニングの際に披露されたのが、「Dancing∞BEAT!!」だ。

 雷雨によって中断していたステージに音が再び鳴り響き、〈ふと隣 見ると仲間がいるんだ/目の前には微笑んでるキミに...Be there!〉と歌った壮五の歌で再開する。その瞬間、彼の〈ふと隣〉にいたのは、きっとメンバーたちと、自分たち7人へキラキラとした瞳を向ける観客たちだろう。誰にも知られず、何者でもなかった7人は、観客一人ひとりの想いを一心に受けるアイドルという存在になっていたのだと、「Dancing∞BEAT!!」であらためて思った。それは、彼らを見守り、支えてきたマネージャーとしても、そして彼らの歌に思いを乗せ、ペンライトを振り、日々のつらい場面でその歌声に支えられてきたファンとしても、だ。IDOLiSH7はここから間違いなく、観る者の“明日への力”となる。その息吹が詰まっていた。

 スクリーンに映し出される映像は、もしかすると幾度も目に焼き付けたシーンかもしれない。それでも、IDOLiSH7が押しも押されぬアイドルとなるまでの軌跡は、何度も振り返りたくなる。胸を痛めた瞬間も、喜びの瞬間も、悔やんだ思いまでをも、私たちはともにしてきた。立ち上がる勇気や覚悟を見せてくれた7人は、IDOLiSH7になる道程で多くの力を私たちに与えてくれた。マネージャーにとって、ファンにとって、劇場総集編で映し出される彼らと、そこで歌い上げられる最初期の楽曲たちの記憶は、観る度に自身の日々に灯る熱を呼び起こす起爆剤であり、“明日への力”なのかもしれない。

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