香取慎吾、“テレビの挑戦”を引き受けるスターの器 くるま、小峠英二、カズレーザー……予定不調和の面白さ

 香取慎吾によるレギュラー番組『しんごの芽』(読売テレビ)が始まって3カ月。この番組の楽しみ方がだんだんとクリアになってきた。

 というのも、そもそも番組のテーマがテレビ企画の“タネ”を検証して可能性を探るというもの。いわば、この番組そのものをヒットさせようというのではなく、未来のヒット番組を生み出すための“前段階”だ。加えて、MCは香取×マンスリーMCという流動的なもの。ひと月ごとにパートナーが変わるスタイルもあり、正直どこか落ち着かない部分もあった。だが最近は、そんな“手探り”な雰囲気そのものを楽しむツボが掴めてきたのだ。

“試行錯誤”をエンタメに変えてきたスターの渇望

 思い返せば、香取慎吾はそういう人だった。試行錯誤そのものをエンターテインメントに変えてきたスターである。彼ほど、あらゆる機転を利かせてきたスターもいないのではないだろうか。初の主演ドラマでは全裸で透明人間を演じた。そんな無茶振りとも言える形でドラマ初主演を果たしたアイドルは、なかなかいない。

 慎吾ママやカツケンサンバ、孫悟空や両津勘吉など、数々のキャラクターになりきってきたこともそう。そして『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)内のコーナー「ビストロSMAP」では、ゲストごとにチャレンジングな笑いに挑戦していた姿も印象的だった。ロケバラエティ『おじゃMAP!!』(フジテレビ系)では、香取自らがロケ交渉を行うシーンも。最初こそ「大丈夫?」と思われるようなことを、笑いに変えてきたのが香取慎吾という人だ。もしかしたら、そんな無理難題とも言える状況から生まれる笑いを香取自身が欲しているのかもしれない。そんなことを、『しんごの芽』を観ながらふと思った。

予定不調和を生み出す実験装置=マンスリーMC

 その象徴が、マンスリーMCだ。初月に登場したのは、令和ロマンのくるま。番組内では、香取がくるまに番組出演オファーDMをInstagram経由で自ら送ったというエピソードも明かされた。初の関西ローカルレギュラーという新たなチャレンジの場で、初対面の芸人を指名するという大胆な構想は、まさに香取が自らに突きつけた無茶振りだ。しかも、くるまは収録当日に寝坊による大遅刻をしてしまったのだ。もちろん、遅刻はよくないこと。だが、香取はなんだかそんなハプニングもむしろウェルカムといった具合に楽しげだったのだ。

 くるまは後日、Podcast番組『令和ロマンのご様子』にて「香取さんがイジってくれたんだけど」と裏話を披露。香取から年齢を聞かれたというくるまが「31です」と答えると「31はね、起きられないよ」と、思わず「そんなことない」とツッコまずにはいられないフォローを入れたのだという。また「僕、それぐらいの時に『(笑って)いいとも!』に58分くらい遅刻したことあるよ」と笑わせてくれたのだとも。ちなみに、この遅刻エピソードは香取がもっと若い頃だったのだが、そのあたりは目をつぶってくれたのだろう。

 この番組の魅力は、まさにそこにある。何が起こるのかわからない空気は、あえて作ってできるようなものではない。だからこそ、香取はマンスリーMCにこれまでなかなか接点がなかった人をあえて呼び、化学反応を生み出そうとしているのではないだろうか。

 2月のマンスリーMCには、小峠英二(バイきんぐ)が登場。MCとしては初タッグの組み合わせだが、実は同学年であることからリラックスした雰囲気に。近年では香取の長い芸能生活を「テレビでずっと観てました!」という世代との絡みが多かったからか、まるで地元の同窓会のような空気感が、むしろ新鮮だった。SMAPのデビュー曲がランキング1位を逃し「なんで売れないんだ!」と怒られたという昔話に花が咲いたり、パンクロックの精神で共鳴する話が飛び出したのも、小峠とのふたりきりの空間が生み出したその場のムードなのだろう。

香取慎吾が自分自身に課す“無茶振り”

 そして、3月。マンスリーMCはカズレーザー(メイプル超合金)へとバトンタッチされた。番組出演前にはかなり準備をしっかりするというカズレーザー。その“ちゃんとしてる”ところが、香取と通じるものがあったのかもしれない。冒頭にも記したとおり、同番組はかなり異例なスタイル。だが、香取としてはむしろそれは「全然平気」といえるもの。にも関わらず、「斬新」と自ら言ってしまっている雰囲気が「正直ちょっと苦手」と苦笑いするのだ。

 すると、カズレーザーも「すげーわかります」とすぐさま同意。「仮にめちゃくちゃ攻めた企画が始まったとしても、資料には『攻めた企画をやります』とは書いてほしくないですよね」と本音をぶつけると、香取は「この番組、書いてるのよ」と笑い合う。ほかにも、テレビの台本にどこまで沿うべきかという話題になり、ふたりの鋭い眼差しと頭の回転の速さが垣間見える一幕だった。

 テレビは今、リスクを取りにくい時代にある。コンプライアンスやSNSの反応が即座に可視化され、不完全なものや予測不能なものを世のなかに発信することには、相当の自信と覚悟が求められるようになった。かといって、予定調和ばかりでは面白くならない。だからこそ、テレビが挑戦していくための受け皿を香取慎吾というスターが引き受けているようにも思えてくる。

 香取がタネのなかに入っている紙にダメ出しをしてみたり、ゲストとテレビや業界に対する本音をトークしたり、これからも観ている側が「大丈夫?」と少々胸をざわつかせるような場面があるかもしれない。でも、それこそがテレビとしての余白を試しているともいえる。その可能性を検証する番組として、香取慎吾が自分自身に課す“無茶振り”を、これからも楽しんでいきたい。

香取慎吾、2025年は音楽を「もっとやりたかった」 充実した活動のなかで再確認したステージに立ち続けるという決意

主演ドラマの主題歌や初のソロツアーの成功……香取慎吾に2025年の音楽活動を振り返ってもらった。

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