マカロニえんぴつ、生粋の“マカロッカー”と作り出した熱狂 過去と現在が交差するレア曲連発のFCツアー

マカロニえんぴつのファンサイト「OKKAKE」会員限定ツアー『マカロックツアーvol.20 ~むしろウチらが追っかける!愛を掴んでホールドオン篇~』東京公演が9月24、25日にZepp DiverCity(TOKYO)にて開催された。このツアーはバンドのデビュー10周年企画の第4弾として行われるもので、8月31日のZepp Sapporoを皮切りに全国5都市のZepp会場で計8公演を実施。ファンクラブツアーとしても約1年ぶりの開催とあって、マカロッカー(マカロニえんぴつファンの呼称)にとっても待望のツアーとなった。本稿では9月24日の東京公演DAY1について記す。
ツアーTシャツやタオルを身につけたマカロッカーで埋め尽くされたフロアが定刻を過ぎた頃に暗転すると、場内にお馴染みのオープニングSE「Hey Bulldog」(The Beatles)が流れ始める。ステージに赤い照明が照らされるなか、ツアータオルを両手で掲げた田辺由明(Gt/Cho)を筆頭に長谷川大喜(Key/Cho)、高野賢也(Ba/Cho)、サポートメンバーの高浦''suzzy''充孝(Dr)が登場し、フロアの熱気は急上昇。最後にはっとり(Vo/Gt)が登場すると、客席に向けて耳に手を当てるなどしてオーディエンスを煽り続ける。そんな様子に笑みを浮かべたはっとりは、掲げたギターでリフを刻みながら「東京!」と叫び、「OKKAKE」から勢いよくライブをスタートさせた。ファンクラブ限定ツアーらしい幕開けに、会場のマカロッカーも大興奮。クラップやシンガロングで応えると、バンド側の熱量もさらに上昇するなど、早くも一体感の高まりを感じさせた。




前曲のエンディングから間髪入れずに田辺がギターリフを繰り出す「サウンドオブサイレン」では、はっとりが思わず「懐かしい!」とこぼす一幕も。高野&高浦が繰り出すタイトなリズムに乗せて、長谷川がメロウで心地よいシンセサウンドを奏でる一方で、ギターソロでは荒々しさが表現されるなど、実にライブバンドらしい見せ方でオーディエンスを次々にノックアウトさせていく。その後、ドラムの4つ打ちビートに乗せてはっとりが「ツアーセミファイナル。マカロニえんぴつのことを待ってましたか? 俺たちも会いたかったぞ! オタクな曲をたくさんやるから、着いてこなかったら置いて行きますよ? たくさん歌って、本能で最後まで突っ走っていきましょう!」と呼びかけると、はっとり&田辺のギターリフから「眺めがいいね」に突入。ダイナミックなアンサンブルで会場を沸かせ、サビでははっとりに促されるように全員でジャンプするなど、ライブハウスらしい絶景が広がっていく。そんなフロアを前に、はっとりも満面の笑みで「最高!」と叫んでみせた。
長谷川の軽やかなピアノプレイをバックに、はっとりは「労働はお好きですか? あ、嫌いな人が多い(笑)? じゃあ、Zepp DiverCityみたいな最高の音響環境は好きですか? そこで憂さ晴らしするのも好きですか? (次の曲は)そんな歌です!」と口にすると、そのまま「働く女」を歌い始める。これにオーディエンスもシンガロングで応え、相乗効果で熱を高めていき、この日最初のクライマックスを迎えた。

最初のMCでは、はっとりが「ファンクラブのなかから特別マカロニえんぴつ愛が強い人がここに揃っているってことだよね? 残念ながら来れなかった“OKKAKE”もたくさんいるわけだ。そいつらの分まで楽しめるか?」と煽る一幕も。そして「今日初披露の新曲とかやっちゃおうかね?」と口にすると、フロアは大いに盛り上がる。すると、高野の「思い出を飾れる新曲でありたい」という言葉に続いて披露されたのは、新曲ではなく2017年のアルバム『CHOSYOKU』から「イランイラン」。このレア曲に会場のマカロッカーも興奮を隠せない様子で、躍動感と生命力に満ち溢れたサウンドを心の底から満喫した。切ないアルペジオから豪快なハードロックへと変化する「TONTTU」、今や入手困難なレア曲中のレア曲「サンキュー・フォー・ザ・ミュージック」など緩急に富んだセットリストのなかに、「本当に新曲やろうかね。2017年に作りかけの曲をインスタにアップしたけど、その続きを8年越しに書きました」という正真正銘の新曲「いつか何もない世界で」も織り交ぜられ、ファンにはたまらない濃厚な時間が繰り広げられていく。

その後も浮遊感漂わせるポップロックチューン「ネクタリン」、ドリーミーさが強調された代表曲「恋人ごっこ」、会場のミラーボールが放つ幻想的な光が印象的な「月へ行こう」、楽曲が持つセンチメンタリズムが会場を包み込む「春の嵐」と名曲/レア曲を連発する。そして、はっとりが「事務所を移籍するタイミングに宙ぶらりんなときがあって、これはその頃手売りしていた曲。渋谷QUATTROもろくに埋められず苦戦していた時期で、しんどいんけど覚悟だけはあって。そういうときに書いた曲って、今持ってないものを持っていたりするんですよ」と告げると、2016年発表のライブ会場限定CD収録の「enough」を演奏。現在まで続く彼ららしいシンプルなサウンドと、当時の彼ららしい葛藤やがむしゃらさが綴られた歌詞は、今の彼らが表現することによってまた新たな輝きを放つことを見事に証明してみせた。

「enough」でのしっとりした空気を切り裂くように、バンドは「八月の陽炎」「然らば」で再び熱量を高めていく。そして、「東京、そんなもんですか? あんたの歌を聞かせてくれんか! 任せたぞ!」の問いかけに続いて披露された「洗濯機と君とラヂオ」でフロアの盛り上がりはさらに加速。会場が揺れんばかりの盛り上がりを見せる。そんななか、はっとりが「そんなもんですか!」と煽るとマカロッカーのシンガロングはさらに大きくなり、「やればできるじゃん!」と太鼓判を押すことに。さらに、「哀しみロック」「ワンドリンク別」と彼らのライブに欠かせないアップチューンが立て続けに繰り出される。「ワンドリンク別」では曲中、田辺がシャツを脱いで自身の肉体美をアピールする場面もあり、会場は最高潮へとまたひとつ近づいていった。


長谷川の鍵盤ハーモニカをフィーチャーした「愛の波」、大きなノリで会場をひとつに束ねる「愛の手」でライブもついに佳境へ。アコースティックギターを抱えたはっとりは「見えない手で一生懸命手を繋ごうと伸ばして……そういう気持ちです。要は、本当に大事な瞬間って別に形がなくてもいいんです。今日はそんな特別で、そしてどうしても交わりたい、どうしてもひとつになりたいと必死にあがいた、俺たちが見えない手を繋いだ日です」と観客に語りかけ、「今日は歌ってもらうから」と「静かな海」を歌い始める。彼のエモーショナルな歌とバンドの色彩豊かな演奏に酔いしれるなか、曲後半ではオーディエンスが大合唱。ステージ上のモニタースピーカーに腰掛けたはっとりは、その光景を笑顔で眺め続ける。
この日最後に披露されたのは、彼らの代表曲のひとつ「ヤングアダルト」。会場中のマカロッカーたちの盛大なシンガロングが響き渡るなか、はっとりは「気づいた? みんな、めっちゃいい顔してるよ!」と投げかける……間違いなくバンドと観客全員が手を繋いでひとつになれたことを実感できた瞬間だった。こうして『マカロックツアーvol.20 ~むしろウチらが追っかける!愛を掴んでホールドオン篇~』東京公演DAY1は、幸福感いっぱいの空気に包まれ終了した。

バンドにとって集大成的なステージとなった6月の横浜スタジアム公演、そして原点を見つめ直すような機会となった本ツアーや9月4日開催の下北沢SHELTER公演は、マカロニえんぴつという唯一無二のバンドを深く理解する上で、バンドにとってもファンにとっても非常に重要な機会となった。このデビュー10周年という大きな節目を経て、彼らはさらに前進を続ける。繋いだ手を離すことなく、ここから我々にどんな景色を見せてくれるのか。まずは12月10日にリリースを控えたメジャー3rdアルバム『physical mind』と、来年1月からスタートする新たな全国ツアー『マカロックツアーvol.21 〜心を覗いてシラけるより、ことばのシワだけ増やしてゆけ篇〜』を楽しみに待ちたい。
<セットリスト>
01. OKKAKE
02. サウンドオブサイレン
03. 眺めがいいね
04. 働く女
05. イランイラン
06. TONTTU
07. サンキュー・フォー・ザ・ミュージック
08. いつか何もない世界で
09. ネクタリン
10. 恋人ごっこ
11. 月へ行こう
12. 春の嵐
13. enough
14. 八月の陽炎
15. 然らば
16. 洗濯機と君とラヂオ
17. 哀しみロック
18. ワンドリンク別
19. 愛の波
20. 愛の手
21. 静かな海
22. ヤングアダルト























