今までのK-POPシーンにいなかった特別な存在――BIGHIT MUSICの超新星・CORTIS、類を見ない音楽性と創造力の根源

「彼らはそれぞれがとても特別な存在」
「レコーディングや音楽制作でも、とにかくすごく楽しそうに取り組んでいる」
「今までのK-POPでは聴いたことのないものだった」
「彼らの音楽はまるでファッションのよう。聴いていると『超スタイリッシュ』と感じる」
世界の一流音楽プロデューサー陣がこのように口を揃えて語るのは、5人組ボーイグループ・CORTIS。BTSとTOMORROW X TOGETHERを輩出したBIGHIT MUSICより、8月18日にデビューした超新星だ。
デビュー同日に行われたデビューショーケース(※1)で初めて彼らの全貌を知った筆者は、彼らの持つ“ヤングクリエイタークルー”という異名、そして「MVの制作会議に1日も欠かさず参加した」という“制作主体性”のレベルの高さに驚きを隠せなかった。そう、CORTISは、作詞やトラックメイク含む作曲、振り付け、さらには映像制作をも、すべて自ら手がけるのである。
9月8日に韓国、9日に日本で満を持してリリースされたCORTISのデビューアルバム『COLOR OUTSIDE THE LINES』は、全5曲からなる、文字通り“名刺代わり”の作品だ。この作品をYouTubeで公開されている全4話のドキュメンタリー映像「CORTIS (코르티스) Documentary ‘What We Want'」とともに、紐解いていきたい。
デビュープロモーションの先駆けとなった「GO!」は、デビュータイトル曲を完成させるために全員で向かったアメリカ・ロサンゼルスのソングライティングキャンプで制作された作品だ。結論、彼らは2回にわたって渡米し、さらに2回目は予定していた滞在期間を延長して、ひたすら「昨日よりいいものを作り上達すること」を目指して作曲に励んだ。
当初、メンバーたちはトラックメイクの段階から頭を悩ませ、煮詰まっている様子が散見された。しかし、そんなある日、現地の音楽プロデューサーがミニマルなトラップビートに即興でシンセサウンドを乗せてみせると、そのラフなノリを受けて自然と〈GO!〉というリリックが溢れてくる。そこにCORTISのアイデンティティが存分に盛り込まれて誕生したのが、世に出る一発目の作品として彼らの集大成を飾る「GO!」だったのだ。CORTISは、HIPHOPに影響を受けたポップミュージックを制作の起点とし、自然体で音楽そのものを楽しむ“自分たちらしさ”をグループの武器としている。そうした姿を象徴するのも、この楽曲だと思う。キャンプ中、タイトル曲を突き詰めていく過程で、ラッパーのジューシー・Jや、かねてより大好きなアーティストだったというAG Clubとともに制作できたことも、5人にとって一生ものの経験となったことだろう。
デビューアルバムのタイトル曲である2曲目「What You Want」は、ブームバップのリズムと、どこか懐かしさを感じる60年代のサイケデリックロックにインスパイアされたギターリフが巧みに調和し、今っぽい新鮮さを生み出したように感じさせる。一方、3曲目の「FaSHioN」はタイトなハイハットが刻むビートの上でマイクリレーが続き、今作のなかで最も疾走感を感じさせるHIPHOPナンバーに仕上がっている。山場を越えた4曲目の「JoyRide」は、どこか70年代のポップクラシックの風味も感じられるミディアムナンバー。5曲目「Lullaby」にも通ずるが、どこか大きな迷いがひとつ消えて肩の力が抜けたような、そんなナチュラルな歌声とゆったりとしたテンポに優しく包み込まれる。一枚の作品でどんな角度からもCORTISの魅力と深い音楽性を味わうことができる、最初の作品にして究極のアルバムだ。
デビュー作品から、音も映像もセルフプロデュースで、これほど質の高い作品を提示できるグループはそういない。もちろん、メンバーのMARTINやJAMESがTOMORROW X TOGETHER「Deja Vu」や「Beautiful Strangers」「Miracle」、ENHYPEN「Outside」、LE SSERAFIM「Pierrot」、ILLIT「Magnetic」「Tick-Tack」「Cherish (My Love)」といった先輩グループの楽曲プロデュースや振り付け制作にデビュー前から携わるなど、制作経験のあるメンバーもいる。しかし、そうした背景を知っていてもなお驚いた理由は、周囲のスタッフ陣に彼らがいちアーティストとしてだけでなく、クリエイターとしても“プロ”と認められ、信頼されていることを知ったからだ。
たとえば、デビューショーケースの質疑応答では、練習生時代に企画して録った映像をスタッフに見せたところ、アメリカなどの大きな土地の国でMVを撮ることを提案されたというエピソードが語られた。またドキュメンタリー映像では、制作統括スタッフや音楽プロデューサーから制作に関する相談や話題を持ちかけられ、文字通りすべてのクリエイティブに関する制作権限を与えられていた。こうしたアーティスト像は、プロデューサーの指揮のもと形作られた“コンセプト”に沿って“アイドル”としての物語が進んでいくケースが多いK-POPシーンの歴史上、非常に稀なことなのである。
ドキュメンタリーには、新たな気づきがあった。それは、“ヤングクリエイタークルー”とは決して名ばかりではなく、本当にその言葉通りのグループだということだ。
「今日はどんな感じ?」。とある日、スタジオでリーダーのMARTINが問いかける相手は、最年少メンバーのKEONHO。「天気はいいけど、なんか……こういう明るさ?」という返答に、MARTINは「『WHARF TALK』って感じよりは『Sundress』って感じかな」と咀嚼してKEONHOに確認する。このたった二言、三言の会話のラリーから、メンバーだけでスタジオにこもって自主制作するのがごく日常、言わば当たり前の光景であり、そして「タイラー・ザ・クリエイター『WHARF TALK(feat. A$AP Rocky)』よりも、軽快で陽気なビートを刻むエイサップ・ロッキー『Sundress』寄りの“よさ”である」と、音楽を共通言語にして通じ合っていることが読み取れるのだ。これには思わず反応した視聴者/ファンもいたのではないだろうか。とにかく5人全員の有するレベルが高いのだ。
そのうちスタジオにはJAMES、SEONGHYEON……とほかのメンバーも集まり、その間にもMARTINは場所を変えてPCの音楽制作ソフトに向き合い直したり、別日にデモを録ったり移動中に音源を確かめたり、時間があれば音楽を作っていた。






















