TOMORROW X TOGETHER、ボーカル表現の真骨頂 “君”と“僕”の物語――『The Star Chapter: TOGETHER』全曲解説

唯一無二のスタイルで道なき道を歩み続けるボーイグループ・TOMORROW X TOGETHER。彼らが生み出すサウンドのクオリティの高さやパフォーマンスの独自性はすでに広く知られているが、そうした魅力をよりディープに味わえる作品がこの夏にリリースされた。タイトルは『The Star Chapter: TOGETHER』。彼らにとって約1年9カ月ぶりのフルアルバムで、今作が『The Star Chapter』シリーズの集大成となる。

前作『The Star Chapter: SANCTUARY』では、再び会った“君”を通じて経験した魔法のようなひとときと、それによって変わった“僕”に関するエピソードを盛り込んでいた。『The Star Chapter: TOGETHER』は互いに心から共感するときだけに可能な“名前を呼ぶこと”を通じて“ともに”互いを救い合い、世界を救うストーリーを描く。わかりやすく言えば、過去作から登場してきた“僕”が“君”と連帯し、共鳴することで、さらに成長していく物語――といったところだろうか。

オープニングを飾るのは、「Upside Down Kiss」。ミニマルなシンセベースや〈Upside down〉のリフレイン、そしてニュージャックスウィングのテイストを加えたサウンドは80年代的で、どこか近未来の雰囲気も醸し出す。それに対してボーカルは情緒的かつ官能的なのが興味深い。冷たい世のなかに抗う人間の強さが、ここに表れているのかもしれない。このようにポップでありながらもアーティスティックに迫る音作りは、TOMORROW X TOGETHERの真骨頂と言えよう。
2曲目は本作のタイトル曲であり、日本語バージョンも後日発表された「Beautiful Strangers」だ。トラップをベースにしたサウンドメイクで、甘美なメロディラインとエネルギッシュなアレンジのギャップを楽しめる。TOMORROW X TOGETHERはこの曲を通じて“君”からもらった力で成長する“僕”という、美しく変わった両者を描いた。『The Star Chapter』シリーズのエンディングにふさわしいナンバーである。そのせいか、各メンバーの歌声はいずれもドラマチックかつ感動的に響いてくる。
『The Star Chapter: TOGETHER』のポイントは、コンセプチュアルな作風だけではない。グループ名義の作品では初となるメンバー別の楽曲が収められている点も見逃せない。今作のタイトルにもある“TOGETHER”という言葉を、彼らはそれぞれの感性と視点で表現している。























