Number_iが意図的に構築したアンバランスさ 戦闘モードからの解放――新曲「未確認領域」徹底解説

Number_iの楽曲で、ここまでポジティブなモードを感じたのは初めてかもしれない。8月11日に配信リリースされた「未確認領域」のことだ。
「未確認領域」は、9月22日にリリースされる2ndフルアルバム『No.Ⅱ』からの先行配信シングル。7月11日に楽曲の一部がSNSにて解禁され、8月4日に放送された『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)にてフルサイズがお披露目となった。
Number_iは昨年5月にミニアルバム『No.O -ring-』をリリースし、そのリードトラック「BON」をプロデュースしたのが平野紫耀だった。9月にリリースされた1stフルアルバム『No.Ⅰ』のリードトラック「INZM」のプロデュースは、神宮寺勇太。今年5月に発売された2ndシングルの表題曲「GOD_i」をプロデュースしたのが、岸優太である。メンバーそれぞれが、これまでにシングル/アルバムの核となる楽曲を手掛けてきたのだ。
リードトラックのプロデュースが前作で一巡し、最新曲「未確認領域」は“Number_i”名義のプロデュース作品となっている。作詞はPecori(ODD Foot Works)、作編曲はMONJOE(DATS)、SHUN(FIVE NEW OLD)との共作で、大きくは前述の「BON」、「INZM」、「GOD_i」などと同じ布陣だ。インタビューで、3人が「未確認領域」について「次のフェーズに行くけど、誰も置いていかないという想いをこめた」(※1)と語っている通り、グループ名義のプロデュース曲、日本語表記のタイトル(ただし、これは偶然らしいが)という表面的な要素からも、前作から今作では一つの線が引かれていることが感じられる。そして、それは楽曲からも伝わってくるのだ。
「未確認領域」は、華やかに鳴り響くストリングスで幕を開ける。荘厳な響きとともに、背後で流れる「Please take your seat, fasten your seatbelt and get ready for a “U.M.A.”」(お席にお着きになり、シートベルトを締めて“U.M.A.”に備えてください)というアナウンスがリスナーを曲の世界へと導き、旅立ちの高揚感や緊張感を誘う。
明るいサウンドとは対照的に、歌い出しを務める岸の声は低く、のしかかるような重さがある。平野にパートが移り、〈お前の想像は今どう?/幻のようなもん/空を飛んだユニコーン/Your Life is Beautiful〉とメルヘンチックな言葉が並ぶフレーズが歌われるが、彼の歌声もまた鋭く荒々しい。続く〈ぶっ飛ぶために溜め込んだパワー/でも大丈夫置いてかないよ〉を歌う神宮寺も同様だ。この軽やかなトラックだったら、思いっきりポップに振る選択肢もあったのではないかと思う。しかし、3人の歌い方からはそれを意図的に避けているようにすら感じる。
曲調と歌声のアンバランスさは、インパクトを与えると同時に、〈離れた手をずっと追うよ〉というメッセージを強調しているように思う。弦楽器のピチカートが浮遊感を醸し出すなかで、力強い歌声からはしっかりと重力を感じられるような気がするのだ。〈雲で描いたI.L.Y.S〉の歌詞から、メッセージはiLYs(ファンの呼称)に向けてのものだとわかる。彼らは揺るぎない意志をもって「置いていかない」とファンに伝えている――そんな印象を抱いた。
デビュー曲の「GOAT」も〈未知の領域まで Fly〉という言葉で締めくくられていたように、「新しい場所へと突き進んでいく」といったようなことは「BON」、「INZM」、「GOD_i」を含む過去曲でも歌われてきた。ただし、いずれの曲でも、向かってくる敵に対抗するようなギラギラとした姿勢を随所に感じたのだ。デビュー1年目という、彼らの置かれた状況がそんな戦闘モードを生み出していたのかもしれない。一方で、「未確認領域」はそこから解放され、もっと純真な前のめりさが宿っているように思う。























