アユニ・Dが刻む、矛盾や葛藤を超えた今の“私” PEDRO待望の新作『ちっぽけな夜明け』で放つ決定打

ドシャメシャなバンドサウンドとともに、ダルくて痛くて眠い日常を生き抜く理由を〈君だよ〉と言い切る「いたいのとんでけ」、〈すごい奴だと思われたくて/要らない嘘で進む秒針/大丈夫なわけないからさ/ざわめく胸の内吐こう〉というフレーズに今のアユニの決意が滲む「ZAWAMEKI IN MY HEART」(ナンバーガールを彷彿とさせるタイトルをもつこの曲はサポートを務める田渕がプロデュースしている)。ヒプノティックなループ感がクセになる「拝啓、僕へ」でアユニは〈拝啓、僕へ/まだ本当の自分殺すのか?/いくつになっても/思春期と反抗期〉と歌い、全収録曲の中でももっともストレートなサウンド(アレンジを担当したのはoni)を鳴らす「朝4時の革命」では独り立ちしてから歩んでくる中で生まれた葛藤や迷いを綴りながら、〈繋いだ手を振り解きはしない/焦がした胸の内を話したい/ほんとありがとう、ほんとごめんね〉と心から素直な言葉を放っている。
〈「好きだ」と「死ねや」が行ったり来たり〉という「拝啓、僕へ」の一節が物語るとおり、今作の曲はどれも苦悩したり喜んだり、落ち込んだり復活したり、怯えたり愛したり、とにかく心が忙しい。1曲の中にもたくさんの矛盾や食い違いがある。でもそれもこれも全部〈ほんの少しマシな日が来ますように〉という願いに結実するのだ、という「結論」を歌うのが、ミニアルバムのラストに収められたタイトル曲「ちっぽけな夜明け」である。ゆーまおがアレンジした流れるようなサウンドの中で、アユニは改めて自分の中にある孤独と向き合い、それを見つめた上で〈外に出なきゃ 外に出なきゃ 城から出なきゃ〉と歌う。〈うまくできなかったらどうしよう〉という葛藤をあらわにしながら、でも同時に〈踊ろうよ 気が済むまで〉と呼びかける。それに続くフレーズはこうだ。〈痛みを痛みで上書いて/傷だらけになったらどうしよう〉――これはもちろん、BiSHの始まりの曲「スパーク」の〈痛みを痛みでこらえよう〉という歌詞を踏まえたものだろう。彼女がどんな思いをもってこの言葉を引っ張り出してきたのかはわからない。でもこの1行によって、BiSHの頃の弱々しかったアユニ・Dも、少しだけ歳を重ねて強くなり、自分自身や他者と向き合えるようになった今のアユニ・Dも、このミニアルバムにはちゃんと息づくことになった。
もうひとつ、今作において重要なのは、今作に石毛輝(the telephones/「1999」)、さかしたひかる(ドミコ/「いたいのとんでけ」「拝啓、僕へ」)といったミュージシャンがサウンドプロデューサー/アレンジャーとして参加している点である。さかしたは『赴くままに、胃の向くままに』以来のタッグとなったが、彼らが参加する意味も、それこそ以前とはまったく違う。繰り返すがこの『ちっぽけな夜明け』はアユニ・Dによる「これが私だ」という作品だ。その「自分」という軸がはっきりしたからこそ、彼女は今回、他者ともこれまで以上にがっちりと手を組むことができたということなのだと思う。今作が、先述の田渕やゆーまおも含めて6曲で5人のアレンジャーが参加している作品にもかかわらずビシッと芯の通った音として響いてくるのは、その真ん中にいるアユニ自身の変化ゆえだろう。
日比谷野外大音楽堂thank you
今日は来てくれて本当にありがとうございました。
新譜も出すので、よかったらツアー来てください!またね pic.twitter.com/mKdHg0IgII
— アユニ・D (@AYUNiD_BiSH) August 11, 2025
そんなミニアルバムを完成させたPEDROは、8月11日、日比谷公園野外大音楽堂で作品と同じタイトルを掲げたワンマンライブを開催した。ひょんなことから野音でライブをするチャンスが転がってきて、アユニは即答でやると決めたという。そんなアクションにもこれまでとは違う彼女の姿勢が窺えるが、ライブ自体もすばらしいものだった。
終盤、「グリーンハイツ」を歌っている最中に彼女が叫んだ「舐めんなよ!」という言葉は、怒りというよりも今ここの自分自身の背中を押すような言葉として響いてきた。そのアンコール、彼女たちは1曲目に「1999」を披露すると、そこから立て続けにミニアルバムからの新曲を全曲披露。「朝4時の革命」も「いたいのとんでけ」も、音源で聴いた以上にアグレッシブに鳴り響いていたが、中でもやはり「ちっぽけな夜明け」は特別だった。今アユニはどんな場所にいて、どこに向かおうとしているのか、そのキラキラと眩しいサウンドは雄弁に物語っていたと思う。9月にミニアルバムをリリースしたのち、10月5日からPEDROは新たなツアーに出る。タイトルは『I am PEDRO TOUR』。主語が「We」ではなく「I」であるところに、アユニの決意が滲んでいる。


■リリース情報
PEDRO
『ちっぽけな夜明け』
2025年9月10日(水)リリース
オフィシャルショップ:https://official-goods-store.jp/pedro
AYND-0001(CD+Blu-ray)/¥8,800(税込)
AYND-0002(CD+DVD)/¥6,600(税込)
AYND-0003(CD)/¥2,750(税込)
<CD>
ちっぽけな夜明け
01 1999
02 いたいのとんでけ
03 ZAWAMEKI IN MY HEART
04 拝啓、僕へ
05 朝4時の革命
06 ちっぽけな夜明け
<Blu-ray / DVD>
『PEDRO TOUR 2025「LITTLE HEAVEN TOUR」』
2025.05.14 Spotify O-EAST
01 音楽
02 明日天気になあれ
03 祝祭
04 人
05 ナイスな方へ
06 hope
07 ラブリーベイビー
08 愛せ
09 ぶきっちょ
10 beautifulね
11 東京
12 生活革命
13 魔法
14 清く、正しく
15 万々歳
16 グリーンハイツ
17 春夏秋冬
18 雪の街
19 アンチ生活
20 吸って、吐いて
■ライブ情報
『PEDRO TOUR 2025「I am PEDRO TOUR」』
2025年10月5日(日)
Live House浜松窓枠【静岡】16:15 / 17:00
2025年10月6日(月)
神戸Harbor Studio【兵庫】18:15 / 19:00
2025年10月10日(金)
LIVE VANQUISH【広島】18:30 / 19:00
2025年10月15日(水)
旭川CASINO DRIVE【北海道】18:30 / 19:00
2025年10月16日(木)
PENNY LANE24【北海道】18:15 / 19:00
2025年10月24日(金)
Zepp Shinjuku(TOKYO)【東京】17:30 / 18:30
2025年11月4日(火)
darwin【宮城】18:30 / 19:00
2025年11月5日(水)
青森Quarter【青森】18:30 / 19:00
2025年11月11日(火)
CAPARVO HALL【鹿児島】18:30 / 19:00
2025年11月12日(水)
B.9V1【熊本】18:00 / 19:00
2025年11月13日(木)
DRUM Be-1【福岡】18:00 / 19:00
2025年11月20日(木)
高知X-pt.【高知】18:30 / 19:00
2025年11月21日(金)
高松DIME【香川】18:30 / 19:00
2025年11月26日(水)
GOLDEN PIGS RED STAGE【新潟】18:30 / 19:00
2025年11月27日(木)
金沢AZ【石川】18:30 / 19:00
2025年12月3日(水)
HEAVEN`S ROCK さいたま新都心VJ-3【埼玉】18:30 / 19:00
2025年12月9日(火)
F.A.D YOKOHAMA【神奈川】18:30 / 19:00
2025年12月12日(金)
THE BOTTOM LINE【愛知】18:00 / 19:00
2025年12月14日(日)
GORILLA HALL【大阪】16:00 / 17:00
<チケット金額>
スタンディング:¥6,500(税込・別途ドリンク代)
学生チケット:¥3,000(税込・別途ドリンク代)
【チケット一般発売日】
10月公演:発売中
11月公演:9月6日(土)10:00〜
12月公演:10月4日(土)10:00〜
受付URL:http://w.pia.jp/t/pedro/
■関連リンク
PEDROオフィシャルHP:https://www.pedro.tokyo/
PEDROオフィシャルファンクラブ:https://sp.pedro.tokyo/ (スマートフォンのみ)
PEDROオフィシャルX(旧Twitter):https://twitter.com/pedro_ayunid
アユニ・D X(旧Twitter):https://twitter.com/ayunid_bish
アユニ・D Instagram:https://www.instagram.com/ayunid_official























