ヤングスキニーが鳴らした“武道館”への宣誓 ロックバンドとしての覚悟とビルドアップを証明した一夜に

『老いてもヤングスキニーツアー vol.6』レポ

 5月から7月にかけて開催されたヤングスキニーのワンマン&対バンツアー『老いてもヤングスキニーツアー vol.6』。そのツアーファイナル公演が、7月18日、Zepp Haneda (TOKYO)にて行われた。東京のLIQUIDROOMから幕を開け、全国のライブハウスを巡り、再び東京に戻ってきた彼らは、それまでの19公演を通してロックバンドとして大きなビルドアップを果たしていた。本稿では、サポートキーボーディストとして榎本響を迎えた5人編成で臨んだ最終公演の模様をレポートしていく。

 かやゆー(Vo/Gt)の「よろしく」という幕開けの挨拶から、オープニングナンバーの「ヒモと愛」へ。しおん(Dr)が「はじめようか、東京!」「声出せー!」と早速容赦なく観客をアジテートし、間奏ではゴンザレス(Gt)とりょうと(Ba)が渾身のギターソロ&ベースソロを炸裂させていく。続く「関白宣言」では、ゴンザレスが中央の台に繰り出し情熱的なプレイをかまし、りょうとは台の上に足をかけながら気迫に満ちた重低音を弾き倒していく。なんてアグレッシブなのだろう。何より、約3カ月間を通して全国を周ってきた故だろうか、バンドサウンドの渾然一体さもかつてないほどに極まっている。

かやゆー(Vo/Gt)
かやゆー(Vo/Gt)

 続けて、「どう? 持ち帰られる準備できてる?」とかやゆーが問うと、フロアから熱い歓声が上がり、それを受けてかやゆーは「バカだね最後までよろしく」と返す。そして、「ゴミ人間、俺」へ。「本当はね、」の曲中では、「帰ってきたよ、東京!」と万感の想いを叫ぶ一幕もあった。鮮やかな疾走感を見せつけた「君の街まで」の後に披露した「バンドマンの元彼氏」「君じゃなくても別によかったのかもしれない」の2曲では、バンドサウンドとキーボードの美麗なコンビネーションを堂々と見せつけてくれた。

ゴンザレス(Gt)
ゴンザレス(Gt)

 「自由に楽しんで聴いてほしい。歌っても、踊っても、座って聴いてもいい。好きなように楽しんで、今日くらいは」というしおんの言葉を添えて披露されたのは、「ベランダ feat. 戦慄かなの」。彼らが織りなすたおやかなグルーヴに身を任せるようにして、自由にライブを楽しむ観客の姿が忘れられない。続けて、かやゆーが語り始める。人間は都合のいいもので、嫌なこと、辛い記憶を忘れていく。楽しいこと、幸せなことで、全部上書きされていく。昔の話は、全部、美談になってしまう。そして、「美談」へ。次の「好きじゃないよ」と合わせて、壮大で深淵な世界へと観客を引き込んでみせた。一転して、「ハナイチモンメ」では、ロックバンドとしての野性を遺憾なく解放。

りょうと(Ba)
りょうと(Ba)

 「もっといけるかい、Zepp Haneda!」というかやゆーの呼びかけに応えるように、観客が何度もジャンプを繰り返し、フロアが熱烈に波打つ。その熱量は「愛の乾燥機」へと引き継がれ、そしてここで新曲が2つ続けて披露される。1つ目は、タイトルが未公開の新曲。簡単に割り切れない想いに、割り切れなさを保ったまま丁寧に輪郭を与え、高らかに昇華していくような1曲で、今後のリリースへの期待が高まる。もう1つの新曲が、かやゆーが「一応僕なりのラブソングです」と紹介した「三茶物語」。人肌の温もりが滲む親しみ深い1曲で、リリース前の楽曲にもかかわらず早速合唱が巻き起こっていた。なんてポップな求心力を誇る曲なのだろう。

しおん(Dr)
しおん(Dr)

 いよいよライブは終盤戦へ。「この街の歌」という一言を添えて「東京」へ。続けて、「僕なりのラブソングを歌いたいと思います」「大切な子の名前を付けた歌を」という前置きを挟み「雪月花」を披露。「コインランドリー」では、それぞれのメンバーがソロ回しをしてクライマックスへ向けてさらなる高揚を煽り、そして「僕なりの友情ソングを」というかやゆーの言葉から「愛すべき日々よ」へ繋ぐ。曲中、かやゆーは「俺の友達は言っていました、ほんとゴミしかいないけど、そんなところも愛せるのが友達だと思います!」と胸の内から溢れ出る想いを叫ぶ。ラストの「愛してるぜ!」という叫びにフロアから並々ならぬ大歓声が上がり、続けて「ヤングスキニーなりのロックを歌います」という堂々たる宣誓から「精神ロック」へ。ラストサビ前、かやゆーは「ロックなんて、あなたが芯を貫くこと、あなたがやりたいと思ってること、そのとおりに動くだけ」と語り、熾烈な轟音でラストスパートへ突入。

かやゆー(Vo/Gt)

 本編ラストを締め括ったのは、「あなたの憂鬱な毎日に、この歌を!」という言葉とともに披露された「憂鬱とバイト」。かやゆーは、ラストサビ前に「生き辛いよな、生き辛いよな、でも辛いのは俺だって一緒だから!」と叫んだ。そしてラストサビでは、大胆に歌をフロアに委ね、観客がめいっぱいの大合唱で応えてみせた。圧巻の大団円だった。

ヤングスキニー(撮影=うえむらすばる)

 ただし、真のハイライトはこの後に訪れた。アンコールで、来年2月に初の日本武道館でのワンマン公演『いつか僕は誰もが羨むバンドになってやる日本武道館』を行うことを発表。凄まじい歓声と、いつまでも止まることのない温かな拍手。「さよなら、初恋」の後に披露された「らしく」で、かやゆーは、〈飯は食えないがちょっとくらいは/稼げるようになってきた〉という歌詞を替えて、「なんと武道館、立てちゃいます!」と叫び上げた。これまでのライブにおいてもこの曲の歌詞が替えて歌われることは多かったが、かつてないほどに晴れやかな感動が押し寄せてきた。最後は、怒涛のコール&レスポンスと壮大な大合唱が巻き起こり、今回のライブ、および、全19公演にわたるロングツアーは幕を閉じた。冒頭にも書いたように、ロックバンドとしての大きなビルドアップを果たしたことを高らかに証明した一夜だったと思う。きっと日本武道館では、さらに進化した姿を、そして、誰もが羨むような姿を、私たちに見せつけてくれるはずだ。

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