ヤングスキニーが照らした憂鬱な日々の希望、ツアー東京公演を振り返る 「生きづらいのは俺も一緒だから」
ヤングスキニーにとって初となるホールツアー『”老いてもヤングスキニーツアー vol.5” 〜サブタイトルもう思い付きま編〜』が10月〜12月にかけて開催された。彼らにとって新たな、そして大きな挑戦となった同ツアーは、12月14日にかやゆー(Vo)の地元である山梨・ふじさんホールでツアーファイナルを迎えた。今回は、11月26日に東京・LINE CUBE SHIBUYAで行われた東京公演(1日目)の模様を振り返っていく。
開演時間を少し過ぎた頃、会場が少し暗くなり古いラジオからノイズ混じりの音が流れ出す。そしてスイッチを押す音が響き、会場が完全に暗転。ステージを覆う白い幕にヤングスキニーのロゴが大きく映し出され、10月にリリースした2枚目のフルアルバム『BOY & GIRLS』のオープニングを飾る「有線ラジオで僕の歌が流れていたらしい」からライブがスタート。深く歪んだエレキギターのコードを掻き鳴らす音が響く中、メンバー4人のシルエットが順々に幕に映し出されていき、そしてついに幕が降り、会場全体から大歓声が上がる。ステージの壁面に大々的に掲げられている最新アルバム『BOY & GIRLS』 のジャケットも目を引く。
豪快にロールしていく骨太なバンドサウンドを推進力にして、かやゆーは何度もシャウトにも似た渾身の歌声を届け、その熱烈な響きを受けて客席からたくさんの手が上がる。ライブ幕開け直後とは思えない盛り上がりで、この日の開催地も相まって、〈夜の渋谷ではしゃいでるBoys & Girls〉という歌詞がよく映えているように思えた。続けて、同じく最新アルバム収録曲「死ぬまでに俺がやりたいこと」へ。爆裂、猛烈、激烈な4人のライブパフォーマンスは、彼らのライブバンドとしての揺るぎない矜持を感じさせるもので、たとえ会場がホール規模になったとしても、目の前の一人ひとりの観客と懸命に熱きコミュニケーションを重ねていく4人の姿が胸を打つ。
ここで、サポートキーボーディストの榎本響が合流。以降、5人体制で披露される各ナンバーは、流麗にして美麗なキーボードの調べを大きくフィーチャーした特別なライブアレンジが施される形で届けられていく。序盤2曲によって沸々と熱し切った空気を一瞬にして変えた「愛鍵」。ドラムソロをかましたしおん(Dr)が「始めようぜ、東京、かかってこいや!」と容赦なく煽り突入した「ヒモと愛」では、再び会場全体をじわじわと熱気が満たし始め、続く「愛の乾燥機」では、〈ゆらゆらゆらゆらゆらゆら揺れている〉という歌詞に呼応するように客席からたくさんの手が上がっていく。
MCの後は、かやゆーの歌の力、言葉の力を、丁寧に送り届けるブロックへ。その中でも特に大きな存在感を放っていたのが、かやゆーが「大切な人の歌を」という言葉を添えて披露した最新アルバム収録曲「雪月花」だ。切実なエモーションに満ちていながら、同時に、一人ひとりの観客が自分にとっての「大切な人」を思い浮かべることができる余白を感じさせるライブパフォーマンスで、じっと立ち尽くすようにステージと真っ直ぐと向き合う観客の後ろ姿が忘れられない。
ここで一度、ステージ壁面のアルバムジャケットがしまわれ、かやゆーの「せっかくホールで鍵盤とやるので、綺麗な曲をやりたいと思います」という言葉を経て、「君じゃなくても別によかったのかもしれない」「好きじゃないよ」「コインランドリー」を続けて披露する。このブロックで特に印象的だったのが「ベランダ」で、音源と比べてドラムの存在感がグッと前傾化しており、ホールという広大な空間の中で非常によく映えるライブパフォーマンスだった。
ゴンザレス(Gt)による「後半も盛り上がっていきましょう! ここからぶち上がってください!」という呼びかけから、ライブは後半戦へ突入する。「本当はね、」では、かやゆーは、〈「今から会いに行ってもいい?」〉という歌詞を〈「会いにきたよ、渋谷!」〉と替えて叫び、客席からたくさんの歓声が飛び交う。ここで榎本が退場し、4人編成で「ロードスタームービー」へ。ストレートなロックサウンドを轟かせ、続けてゴンザレスが作曲を手掛けた最新アルバム収録曲「ハナイチモンメ」へ。鋭利なギターリフを主軸にした同曲では、りょうと(Ba)&しおんが織り成すビートと、ゴンザレスのギタープレイの綿密なコンビネーションが鮮やかに光っていて、何よりも間奏でゴンザレスが炸裂させた熱き激情が滲む鮮烈なギターソロが最高だった。
「この街の歌を」という言葉から「東京」を届けると、続けて、「あなたの大切なものを頭に思い浮かべながら、この歌を」という言葉を添えて「さよなら、初恋」へ。〈また失って気付いた〉という、多くの人が一度は抱えたことがあるであろう喪失感に豊かな輪郭を与え、音楽を通して高らかに昇華していく。あまりにも感動的な名演だった。