中島健人はポップでありながらもシニカル 異彩を放つアイドルとしての二面性

中島健人、最新ツアー東京公演レポ

 昨年1stアルバム『N / bias』でソロデビューを果たした中島健人の全国ツアー『KENTO NAKAJIMA 1st Tour 2025 “N / bias” 巡』が、7月17日の東京・LINE CUBE SHIBUYAにてファイナルを迎えた。ソロとなって初のツアー。4月17日の大阪・フェスティバルホールを皮切りに全国7都市12公演が開催され、中島自身がプロデュースを務めた。

 中島が架空のTV番組や映画などさまざま場面で活躍しているムービーが流れ、ポーズを決めた中島のシルエットが映し出されると、大歓声に沸いた会場。ライブ序盤はグループ時代のソロ曲を連発して、会場には“KENTYコール”が鳴り響いた。

 1曲目の「CANDY ~Can U be my BABY~(New Vocal Mix 2024)」では、ポップでファンタジックな曲調に〈LOVE KENTY〉〈Go!Go!Go!〉と一緒に歌う、楽しそうなファンの姿。ダンサーチーム「N's performer」を従えたキレのあるダンスや、クールなラップも繰り出した「SHE IS... LOVE」は、ライトを使った魔法のような演出でも沸かせる。そして爽やかな夏の海の情景が広がる「Hey!! Summer Honey」では、「俺と一緒にアツくなれるか? 手加減したらゆるさないからな!」とコメントして客席に突入。大興奮の観客とハイタッチしながら1階席の通路を練り歩き、「もっと声出せ! 足りねーぞ! もっと来いよ!」と観客を煽り、ステージに戻ると上着をはだけて肩をチラ見せして、会場はファンの大歓声で沸いた。

 MCでは「1階席~2階席~」など呼びかけ観客とコール&レスポンスを行い、「このあとも、俺のエンターテインメントをもっと届けていきます。この時間が、みんなの生きる力になればいいなと思ってる。俺も人間だから辛い気持ちや悲しい気持ちになることがあるけど、みんなもあるでしょ? でも結局、今日のこのライブに辿り着けているわけだから、イコール幸せでよくない? 笑ったもん勝ちでよくない?」と、この日のために頑張ってきたファンを、中島流で労った。

 続いてのパートでは、デビューアルバム『N / bias』の収録楽曲を次々と披露し、序盤の3曲とは一転、大人のムードで魅せた。「悲しいこと辛いこと、全部“ヒトゴト”だから」とタイトルにつなげて披露した、「ヒトゴト feat. Kento Nakajima」。自身が主演したTVドラマ『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』(テレビ東京系)主題歌で、指でカタカナの“ヒ”のかたちを作るポーズや、唇を指でなぞる色気がある仕草なども印象的だ。

 巧みなファルセットも聴かせたミディアムチューン「Raise Your Light」では、マイクを客席に向けて〈Woh oh〉と声を合わせる。5月にリリースした最新曲「MONTAGE」は、ブラックの衣装に着替えて登場。ミステリアスなムードと、マイクスタンドを使ったパフォーマンス。中島のシリアスな表情に会場が沸いた。☆Taku Takahashi (m-flo)がプロデュースを務めた「Bye Bye Me」は、メランコリックなガットギターのサウンドに合わせ、身体を艶めかしくしならせながらダンス。そしてグループ時代のソロナンバー「Mission」は、黒のノースリーブのトップスから肩や腕の筋肉を露わにしながらダンスを繰り広げる。最後に男性ダンサーと一斉に、トップスをビリビリと引きちぎるワイルドなパフォーマンスで観客を魅了した。

 ここまで激しいダンスパフォーマンスが続いたため、汗だくで息を切らせながらステージに倒れ込んだ中島。一息つくと「ソロだとお着替えの時間がなくて、ここで着替えるから見てて」と言って、ステージ上に鏡が出て来て扇風機の風に当たりながらトーク。渋谷スクランブルスクエアなどに中島が出演する広告が掲示されている件などさまざまなトピックで観客と会話を楽しみ、有明アリーナで開催された1stライブ映像を収録したDVD&Blu-ray『KENTO NAKAJIMA 1st Live 2025 “N / bias”』がオリコンデイリーチャート1位(7/8付)を獲得したことに触れ、「みんなのおかげ。これからも、自分が今考えてることもそうだし、みんなが楽しいと思うことをライブでたくさんやりたいと思ってる」とコメントした。

 このトークコーナーの後半ではバラエティ番組さながらのコーナーが始まり、チーフマネージャーの手料理争奪戦では、「愛情の味。美味しい」と言いながら、卵焼きを頬張る場面も。観客が、画面に映し出される2択問題を“ピカレスクの銃口”(ブレードのグッズ)で赤か青かを答えて中島を誘導するゲームもあれば、過去にInstagramで公開したポーズを恥ずかしそうに再現するなど、実にバラエティに富んだ内容。そのなかでは、9月14日に台北・Zepp New Taipeiにて、『KENTO NAKAJIMA 1st Live 2025 in TAIPEI “N / bias” 凱』を開催する発表も。ソロになって初の海外公演ではあるが、台北にはファンミーティングや撮影などで行ったことがあることから凱旋の意味で“凱”と付けたとのこと。会場からはたくさんの「おめでとう!」の声が上がった。

 ライブ後半戦は「MONTAGE」のC/W曲で、バラードの「Jasmine Tea」でスタート。「ここからはチルな感じで過ごしてもらいます」と言って、椅子に座ってティーカップを手にしっとりとしたムードで、どこか儚げに歌声を披露した。女性ダンサーがコンテンポラリー調のダンスを披露するなか、中島は電話ボックスのセットでムードたっぷりに歌うなど、まるでMVや映画のワンシーンのような演出だ。

 冒頭をアカペラで歌った「迷夢」は聴き応えがあった。ファルセットやフェイクを織り交ぜた巧みなボーカルを聴かせ、ボーカリストとしてのスキルの高さを見せつけ、客席からは大歓声が沸き起こった。ステージには森や雪の寂しげな情景が映し出され、あたかも中島が映像の世界に入り込んだかのように見せる、クレーンを使った演出で会場を魅了した。

 また、青をテーマにした「碧暦」では、子どものころの自分と今の自分が、さまざまな選択をしながら壁を乗り越えていくようなイメージの映像が印象的。中島はデニム調のブルー系衣装で身を包み、エモーショナルに楽曲を歌い上げる。ステージには左右から紙吹雪が舞い、まるで絵の世界のなかにいるよう。そして最後、手をパッと下に振った瞬間ステージが暗転。スタッフとの信頼関係とチームワークが、中島の演出を見事に叶えていた。

 この日のライブのアツさや感動を、どこか嚙みしめるように振り返りながら、ファンに感謝の気持ちを述べた中島。「1つバカなこと言っていい? “目標”という2文字より、たった1文字の“夢”を語っていい?」と前置きし、「俺絶対、東京ドーム行くから!」と力強く宣言。どよめきと歓声に沸いた会場。「この俺たちの関係値をもっとみんなに知らしめる方法は、やっぱりドームに行くこと。俺はドームで『ピカレスク』を合唱したい。ドームで〈LOVE KENTY〉って掛け声を聞きたいんだよ!」と中島。そして「死ぬまで俺について来いよ!」と言って、本編ラストナンバー「ピカレスク」を披露した。楽曲を歌うにあたって、「去年はいっぱい“悪”だなんだと言われたけど、そこからもっと深い人の痛みとか悲しみを改めて知れた」とコメント。物事を否定するばかりの相手をあざ笑うかのような、クールな高速ラップ。スクリーンに歌詞が映し出され、ラップの合いの手や〈暴走 想像 構造 妄想 キリがない〉などのサビ前の韻踏みパートを、力一杯に叫んだ観客。指で口を塞ぐセクシーな仕草でも会場を沸かせた。

 リハーサルやムービーのメイキング映像の上映を経て、グッズのトップスを着た中島とダンサーが現れ、アンコールは「jealous」でスタート。アッパーな曲調に〈Pumpin’ up Pumpin’ up!Pumpin’ up!〉と観客と一緒に声を上げ、キレのあるダンスとともに歌声を響かせた中島。MCでは、こっそり観に来ていた客席のSnow Manの岩本照にスポットライトを当て、「『jealous』歌ってたら、居るんだもん!」と、思いがけないサプライズに嬉しそうな表情。「すごくいい時間を過ごせている。この空間をさらにアツいものにしたい」と言って、最後に“Unity”(中島のファン)への思いを歌詞に込めた「Unite」を、「俺たちと1つになってください」と言って披露した。温かくて壮大なメロディを、巧みなテクニックで歌い上げた中島。ファンとの息の合った掛け合いによって、会場はまさしく1つになった。そして曲の終わりに「このライブの主人公」と“Unity”を紹介し、最後にファンが「KENTY!」と中島の名前を叫ぶと、ステージにはキラキラとした紙吹雪が発射された。

 終演のアナウンスが流れるも鳴り止まない「健人」と名前を呼ぶ声に、「どうした? そんなに俺の名前を呼んで。まだ出したりないの?」と言ってWアンコールで再登場した中島。彼の呼びかけで、急遽ファンと一緒に「ピカレスク」の最後のフレーズをアカペラで大合唱するシーンもあり、あうんの呼吸からも関係値の高さがうかがい知れた。それを聴き「もう覚悟決めたよ。俺はこれからもみんなの1番になるから」と言って最後に、前日にMVが公開されたばかりの「JUST KENTY☆」をライブ初披露。中島が〈JUST〉と言って〈KENTY☆〉と返す、コール&レスポンス。ファンは一緒に歌って踊り、彼の魅力を存分に味わい尽くす。「俺がお前達の一番星になるから、お前達もなれよ!」。MVでアニメの中島が踊っていたダンスが再現され、最後に顔の前で、手で星を作って観客に贈った。

 徹底したアイドルキャラクターでファンを魅了する一方、グループ時代から多数の楽曲で作詞・作曲を務め、ソロになって以降の作品でもその才能をいかんなく発揮している中島。この日の楽曲の大半は、自身が作詞や作詞・作曲に関わっている楽曲ばかり。ラップやEDMを取り入れたクールなナンバーと、アイドルである自分を最大限に表現したポップなアイドルソング。「ピカレスク」のように自身を取り巻く環境をシニカルに表現した歌詞や、「JUST KENTY☆」のようなキラキラとした世界を表現した歌詞。どちらも中島であり、その両面が揃ってこそ中島であるとも言える。偉大なる表現者=中島健人の全てが表現されたライブステージであった。

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