2025.07.10 12:00

LUNA SEA、BUCK-TICK――リスペクトの先の“個性”　kein、意思と向き合った2nd EP『delusional inflammation』

溢れ出るLUNA SEAへの敬愛「偉大な先輩方から影響を受けて今がある」

――では、楽曲についてもお聞きしようと思います。まず、攸紀さんは「斧と初恋」、「波状」の2曲を作曲されています。前作では「ヴィジュアル系バンドのB面的な曲を意識して制作した」とおっしゃっていましたが、今作は攸紀さんとしての“抜け感”を意識したのがこの2曲だったのですか？

攸紀：結果的にそうなったという感じです。というのも、「斧と初恋」は当初サビがなくて、今作のテーマも相まって選曲から漏れるだろうと思っていたところ、制作を進めていくうちに「この曲を広げていくのがいいんじゃないか」という話になったので、より抜け感を出すために後からサビを付け足したんです。

――そうだったんですね。

攸紀：それにこのサビは、20年前の僕なら間違いなく良しとしていなかったと思います。当時だったら、きっと照れが出ちゃう。でも、これを良しとできるようになったということは、僕自身もこの20年のあいだに進化をしているんだなと思うことができました。

――また、この曲はシャッフルビートを用いている点もトピックですよね。ヴィジュアル系ではどのバンドも1曲は持ってると言っても過言ではないですが、Sallyさんのバックボーン的にはあまり馴染みがなかったのではないですか？

Sally：そうですね。いわゆるジャズドラム的なものは叩けるんですけど、ロック系のシャッフルビートは少し敬遠していたところもあって、オリジナルのバンドでレコーディングしたのは初めてでした。

aie：（敬愛する）LUNA SEAの楽曲にあまりない要素にはためらいが（笑）。

――LUNA SEAでシャッフルビートというと、ギリギリ「IN MIND」とかでしょうか（笑）。対する「波状」は先ほどkeinを意識して作ったとおっしゃっていましたね。

攸紀：keinもですけど、自分というものを意識して書いたと言ったほうがいいかもしれません。当時からkeinの楽曲は僕がいちばん多く書いていたし、バラードも得意なので、その頃の自分を意識して書きました。

玲央：制作前の段階で、「攸紀君の得意とするところをそのまま出したらいいんじゃないか」という話があったんです。そうしたら「波状」のベースとなる曲が上がってきたので、「そうそうこれ！」って。ファンの皆さんにも、新たにkeinを知った人にも攸紀君のスタイルが伝わる曲だと思うし、その段階で今作のリードトラックになると確信しました。

「波状」Music Video / kein

眞呼：言葉で表すのは難しいんですけど、攸紀君の曲って昔から曲で空気感を作ってくれるんですよ。それに、歌詞やメロディを決めるときって大半は自分が肌で感じたものをベースに決めていくので、その空気が私を飲み込んでくれることでイメージもしやすいんです。

攸紀：（小声で）うれしっ！

一同：（笑）。

――ちなみに攸紀さんがご自身でやられているDIMMDIVISION.はシューゲイザー的な要素やドリーミーな要素が強い、keinとはまた違った音楽性のバンドで、そこでもコンポーザーを務めていると思うのですが、楽曲の作り分けに関して、keinの曲を作るときはkeinのモードみたいなものがあるのですか？

攸紀：keinのモードで作ります。とはいえ、バンドの音楽性は違っても、僕の作る曲の根本は変わらないと思っています。好きなものは変わらないので。ただ、曲を作るうえで「眞呼さんが歌うことをイメージする」という明確な違いはあるかもしれないですね。

――そういった意味ではdeadmanでコンポーザーを務めるaieさんからすると、ボーカリストも同じなわけですが、そこではどういった意識で楽曲を作るのでしょう？

aie：deadmanとkeinではメンバーが違うということもあるし、俺も攸紀君と同じように「よし！　keinの曲を作ろう！」と作るので、例えばですがストックから持ってくるようなことはしないです。

――今作でaieさんは「幾何学模様」と「晴レノチアメ」の2曲を作曲しています。前作では客観的に見たkeinと、主観的に見たkeinという形で楽曲を制作していましたが、今回はどのように楽曲を作っていったのでしょう？

aie：まず、メジャー感があってキャッチーという玲央さんが提示したテーマがあって、それに対してこの5人で出す音、そしてkeinの曲を作るモードに入ったときの気持ち……今回でいえば2月から3月頃の俺の気持ちがこの2曲に表れているんだと思います。

――そのなかでも「幾何学模様」はいい意味でaieさんらしくない楽曲といいますか、アッパーな楽曲が並ぶ今作において、そのグルーヴィーなテイストは異色かつ作品を引き締める役割を担っているなと感じました。

aie：まず、サビをメジャースケールで展開したいという狙いがあって。ただ、それをイントロからやりたくなかったので、サビまではマイナースケールで進行しながら上手に転調していくっていう、俺の天邪鬼というかインディペンデントなところが現れているな、と。

――でも、その展開もあってこの曲のサビの開け方は今作でも特に印象に残るポイントになっていると思います。また、この曲は楽器陣の主張……特にBメロのツインギターなんかは古のLUNA SEAを感じる部分もあったりで。

玲央：この曲のギターに関しては、最初にaieさんとどういう方向に持っていくのがいいかディスカッションしたときに、僕の解釈としてはシンプルかつソリッドなロックバンドらしい曲にしたいんだ、と受け止めてギターをつけたんです。でも、眞呼さんからそれだと少し寂しいという話があり、空気感のような別の要素を足したいというオーダーがあってこの形に落ち着いたんです。というのも、当初のシンプルかつソリッドなギターだけだと歌詞とのマッチングも良くなかったですし、眞呼さんの助言で原曲からいちばん化けた楽曲になったと思います。そういう意味では楽曲の土台がしっかりしてて、尚且つ色をつける余白がある曲で「aieさんさすがだな」と思わされました。

――対する「晴レノチアメ」は一転スピード感溢れるナンバーですが、ここまで速さを押し出した曲はkeinでは珍しいですよね。

aie：前作とは違った攻撃的な楽曲を、というところと、keinの制作モードに入ったのが2月から3月ということで、ちょうど『LUNATIC TOKYO 2025 -黒服限定GIG-』（『LUNA SEA 35th ANNIVERSARY TOUR ERA TO ERA THE FINAL EPISODE LUNATIC TOKYO 2025 黒服限定GIG』）があった時期だったんですよね。なので、リスペクトも込めてオマージュという形で落とし込んだんです。