LUNA SEA、BUCK-TICK――リスペクトの先の“個性” kein、意思と向き合った2nd EP『delusional inflammation』

昨年11月にメジャーデビューを果たしたkeinが、7月9日にメジャー2nd EP『delusional inflammation』をリリースした。全5曲からなる本作は、keinらしい緻密さや激しさ、狂気を秘めつつも、これまでとは違う“何か”を感じさせる作品に仕上がっている。
その正体を確かめるべく、keinにインタビュー。メジャーデビュー2作目という点を強く意識したという本作について、プロアーティストの顔と“いちバンド好き”の顔、その両方を見せながら語ってくれた。(編集部)
kein流メジャー2作目との向き合い方 キーワードは“抜け感”

――解散から22年を経て再結成したkeinが、前作『PARADOXON DOLORIS』でメジャーデビューを果たしたことが大きな話題にもなりましたが、反響はありましたか?
玲央:反響の大きさや感じ方は人それぞれだと思いますけど、keinが令和の時代に活動を再開して、現在進行形で活動しているのを知らなかったという声を多くいただきました。そういう意味ではメジャーデビューをしたことで、keinの現在を知ってもらうことができたというのは大きかったです。
aie:仲間内では誰も想像していなかったですから。でも、“メジャーデビュー”ということ自体、我々の世代にはすごく憧れの言葉でしたけど、ここ20年くらいのあいだにインディペンデントとメジャーの境目がなくなってきているし、年下のバンドマンとかは別にそうでもなかったりするみたいで。だから、外からの見え方というよりは、俺たちのテンションが上がったという感じです。一生に一度は言いたかった、みたいな。あと、母ちゃんが喜びました(笑)。
――攸紀さんもバンド人生で初のメジャーデビューになりますよね。
攸紀:一度はメジャーに行っておきたいと思いましたし、僕が楽器を始めるきっかけになった友人から「おめでとう」と連絡きましたね。
――再結成と同時に加入したSallyさんも、まさかこんな展開になるとは思っていなかったんじゃないですか?
Sally:池袋 手刀(池袋にあるライブハウス)界隈がざわつきましたね。「スターだ!」とか言ってくれる人もいて(笑)。
aie:(池袋)手刀出身は、凛として時雨以来のメジャーデビューアーティストかもね。
――先ほどおっしゃっていたように、インディーズとメジャーの境目がなくなりつつありながらも、いわゆる“メジャーのプレッシャー”みたいなものを感じたりするものですか?
aie:少しはありましたよ。だからこそ前作よりも90年代のいわゆる“メジャーの音楽”を自分たちなりに意識してみる、というのが今作を作るうえでの最初のプランだったんです。
玲央:要するに“抜け感”ですよね。ただ誤解をしてほしくないのですが、それはレーベルに言われたわけではなく、あくまで自発的にやっているというのが大きな違いなんです。

――メンバーのなかで唯一玲央さんがメジャーを経験しているという点で、ご自身の経験……たとえば「2作目はこういうものにしよう」といった具合にkeinに還元するものもあったのでしょうか?
玲央:まずは音楽を届けることができる環境があって、そこで何を出すかを考えたときに、やはりメンバーから自発的に出たものを届けたいという点は常に意識しています。
――バンドの意志を尊重してくれるレーベルだからこそ、それをしっかりと打ち出すことが大切ということですね。また、今作は前作に続きEPサイズでのリリースとなりますが、なぜEPでのリリースになったのでしょう?
aie:我々90年代組からするとEPって呼び方がまだしっくりきてない(笑)。
――以前はミニアルバムとかマキシシングルって呼ばれていましたもんね(笑)。
玲央:昨年のツアーの際に、攸紀君から「来年シングルを出したいです」という提案があって、そこに向けて制作を進めていくなかで、相変わらず皆さん曲作りのペースも早くて、その話がどんどん膨らんでいったっていう感じでした。
aie:前作も5曲だったし、足して10曲っていうのも気持ちいいし。
――そして、その5曲組のMajor 2nd EP『delusional inflammation』のお話をお聞きするのですが、前作は“エネルギッシュ”をテーマに楽曲を制作されたとおっしゃっていました。今作は先ほど出た“抜け感”や“メジャー感”というものがキーワードになったのでしょうか?
玲央:そうですね。僕が「“抜け感”のある楽曲で攻めたい」という提案をしたら、みんなが乗っかってくれたので、各々が考える“抜け感”のある楽曲で構成しました。
aie:本来それって1枚目にやるべきことなんですけど、1枚目はディープに行きたくなってしまう性分なんです。

――でも、それがkeinの“らしさ”だと思います。
玲央:そう。それでいいんですよ。きっと、メジャー1枚目でこのワードをキーに制作して、ファンの皆さんに「やらされてるのかな?」と思わせてしまったら負け戦になってしまうと思うんです。ファンの方こそ、そういうところに敏感で気づいてしまうので。だからこそ、今作は僕らがそのモードに入って、やりたいと思って制作したということは明確に示しておきます。
――前作で幅を広げたことも一因としてあるかと思いますが、今作を聴かせていただいて、その“抜け感”を感じると同時に、よりkeinらしい作品になったなという印象を受けました。
攸紀:一聴してすぐに馴染むような曲たちではないと思うんですけど、リードトラックになっている「波状」は特にkeinを意識して作ったこともあって、アルバム全体をうまくまとめているというのはあるかもしれないですね。
Sally:前作がハードめで勢い重視な仕上がりだったから、今作では抜け感を意識したということもあるので、おっしゃっていただいたように前作があっての今作という印象ですね。
――『delusional inflammation』というタイトルを和訳すると“妄想による炎症”になりますが、このタイトルに込められた想いはどういったものなのでしょう?
眞呼:本当のことは結局みんな気にしていないし、この世のなかに真実って本当に少ないと思っていて。人を信じるとか、神を信じるとか、占いを信じるとか、自分自身を信じるとか、そういうのは妄想だな、と。つまり、嘘も真実も関係なく“信じる”という行為自体が妄想に近いし、それに対して体が痛みとして物理的に炎症を起こすこともあれば、信じたものの結果が炎症として現れることもある。ただ、その“炎症”を起こしているという事実は真実なんです。
――なるほど。
眞呼:だから、今みんなが信じていることや話していることの答えとしてあるのが“炎症”なのかな、と。
――眞呼さんの書かれる詞はいつも現実に起こっているものから着想を得て、問題提起を込めて書かれる詞が多いなかで、“現実”と“妄想”は相反するワードだなと思っていたのですが、今作もちゃんと現実に起こっていることを描いているのですね。
眞呼:そうですね。そのスタンスに変わりはないです。



















