SAWTOWNE、TAK、FLAVOR FOLEY……世界で育つボカロカルチャー、シーン拡張の鍵を握る海外ボカロPたち
複数曲のYouTube1億回再生に始まり、日本独自の音楽ジャンル“Gacha Pop”の発信、米津玄師やAdo、YOASOBIきくおといったボカロシーンをルーツに持つアーティストの海外躍進――昨年から今年にかけてのこうしたトピックスを一因として、今や日本発の音楽ジャンル・VOCALOIDは着実に世界的な認知を獲得しつつある。
そのようなジャパンメイドだった従来のボカロシーンは、当然ながら日本人クリエイターが入れ替わり立ち代わり台頭することでカルチャーそのものを今日まで転がし続けてきた。だが、カルチャーの海外進出にあわせ、今後はリスナーのみならず作り手も多国籍なクリエイターが参入してくることが考えられる。事実、カルチャーの最前線では、今まさにユニークな才能を発揮する海外在住のVOCALOIDプロデューサーへと、徐々にスポットが当たり始めている。
そこで本稿では、現在のシーンのホットトピックスのひとつでもある、世界各国に点在する注目のクリエイターをピックアップ。歴代のカルチャー史の中で存在感を発揮してきた先人とも呼べる面々を含め、今押さえるべき海外ボカロPを紹介してみたい。
先述の通り、ボカロ文化の世界躍進はここ数年で一気に本格化してきた印象だが、カルチャー史を遡ると2010年代半ばからすでに海外ボカロPによる秀作はシーンの中に点在し始めていた。その先駆けでもあり、おそらく大勢のリスナーにも馴染み深い存在なのが「ECHO」を手掛けた北米在住のボカロP・Crusher-Pだ。2014年投稿の「ECHO」は、昨年YouTubeにおいてボカロ曲史上2番目の1億回再生を突破。シーンにおいていち早く海外リスナーからの根強い支持を獲得していた点が、その驚異の再生数の一因とも考えられる。
また、Crusher-Pとともにユニット・CIRCRUSHを組むCircus-Pも、カルチャー黎明期から現在に至るまで長年活動し続ける海外在住ボカロPだ。これまでに初音ミクのみならずv flowerや可不、重音テトなど使用するソフトの幅も広く、2024年には初音ミク海外ツアー『HATSUNE MIKU EXPO 10th Anniversary』のテーマソング「Intergalactic Bound」を雄之助と共作。直近ではアプリゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下、『プロセカ』)へ「Twilight Melody」が実装され、注目を集めた。
ドイツ出身・在住のボカロP・KIRAも今日にわたるカルチャー史の中で押さえるべき存在の一人だ。2016年の初投稿以来一貫したEDMサウンドに、日本語詞・英語詞を自在に取り入れた作風で幅広いリスナーから支持を獲得。オンラインコンサート『HATSUNE MIKU EXPO 2021 Online』のテーマソング「Highlight」や、同様にシーン内でEDMの系譜を切り拓いてきた代表格のクリエイター・Gigaとの夢のタッグとなった「GETCHA!」などから、国境を越えたクリエイティブセンスを感じていたリスナーも多いに違いない。
ここからは直近でシーン内にて熱い注目を集めるクリエイターにも目を向けてみよう。中でも今、日本国内のリスナー層へ急速に知名度が拡大しているボカロPとして、アメリカ在住のSAWTOWNEを欠かすことはできない。2023年デビューという新星でありながら、『HATSUNE MIKU EXPO 10th Anniversary』の楽曲コンテストグランプリ獲得を契機に、その認知度を着実に拡大。従来から日本の二次元/ネットカルチャーに多大な影響を受けた作風を得意としていたが、“腐女子カルチャー”をテーマとした「Confessions of a Rotten Girl」が投稿わずか半年弱でYouTubeにて2600万回再生を突破し、名実ともに世界から注目を集めるヒットメーカーへと躍進を遂げた。直近では、先述のグランプリ曲「M@GICAL☆CURE! LOVE ♥︎ SHOT!」が『プロセカ』へ実装されたほか、香港カップヌードルとのコラボCM曲にも抜擢され、怒涛の勢いで活躍の場を広げている。






















