安達祐人が目指すアーティスト像とは 10年の韓国経験で得たもの、音楽活動で届けたいメッセージ

安達祐人が目指すアーティスト像

 安達祐人が、ソロとして初のEP『BLUE SPRING』を5月14日にリリースした。

 PENTAGONのメンバーとして韓国を拠点に活動してきた安達は、2023年よりソロアーティストとして日本での活動をスタート。2025年はWeverseコミュニティの開設や8月のファンミーティング開催など、続々と新展開も発表されている。

 EP『BLUE SPRING』には、“青春”をテーマにこれからへの決意を込めた表題曲をはじめ、安達祐人の新たな季節の始まりを印象づける4曲が収められている。今の自分を形作った韓国生活で得たもの、そしてこれから目指すアーティスト像とは。安達本人に語ってもらった。(編集部)

新体制でのリリース一発目、自らの“青春時代”を歌にした理由

安達祐人インタビュー写真(撮影=西村満)

――新曲「BLUE SPRING」は、青い春、つまり青春というタイトルですが、青春をテーマにした理由を教えてください。

安達祐人(以下、安達):新しい体制での一発目の曲をどうしようかと考えたときに、まずは自分のストーリー……韓国で10年間暮らしてきた僕自身のこと、僕自身の青春時代のことを曲にできたら、僕のことを皆さんにわかってもらえるんじゃないかと思ったんです。その方が自分も感情を込めて歌えるし。それで作詞をしてくださったBBY NABEさんに自分の歩んできた道をお話しして、BBY NABEさんとプロデューサーのKENTZさんが素敵な楽曲に仕上げてくださいました。

――ご自身で歌詞を書かなかったのは、意外でした。

安達:EP『BLUE SPRING』には4曲が収録されていますが、実はこのタイトル曲だけ自分で歌詞を書いていないんです。それは、違う人からの視点で自分を表現してほしいと思ったから。自分も知らない自分を生み出してもらうことを期待してお願いしました。そこに変なプライドとかは一切なくて、「いい曲ができればいいな」という思いだけ。だからこそ自分では思いつかない歌詞が出来上がった。自分的には正解でした。

――歌詞の中に〈青春 vibes〉という言葉が出てきますが、祐人さんにとっての「青春 vibes」とは?

安達:僕は長野の出身で地元がすごく好きなんですけど、長野に帰るたびに韓国に行く前の自分を思い出してスイッチが入るんです。そこにバイブスを感じていますね。

――歌詞に〈握りしめるママチャリのハンドル〉というワードもあって、長野の風景が思い浮かびました。

安達:そうでしょ? 中学生のときは、ママチャリに乗っていました(笑)。だからこそ、すごく気持ちの乗る曲なんです。

安達祐人 - BLUE SPRING (Official Music Video)

――トラックに関してはどうですか。

安達:今回はKENTZさんが準備してくださったビートの中から「この感じで!」と選んでいきました。今までやってきたのとは違う作曲スタイルだったので、学びながら一緒に曲を作り上げた感覚です。自分自身のレベルアップにも繋がったと思います。

――何よりも印象的だったのが、祐人さんの歌声です。グループ活動ではロートーンのラップが特徴だったので、「こういう声で歌えるんだ」と思いました。

安達:ラップするときの声とは別人の声ですよね(笑)。このレコーディングに向けてボイストレーニングにも通ったんです。「挑むしかない」という気持ちで、「今まで出したことのない声を出してみよう」と思って。そうしたら「こういう声、出せるんだ」という発見もできて自分でも意外でしたし、「いい声だね」と言っていただけて嬉しかった。あとはどんどんレベルアップしていくだけですね。

安達祐人インタビュー写真(撮影=西村満)

――これまでSoundCloudに自作の日本語曲を何曲かアップされていますが、ご自身の人生観を曲にしているものが多いですよね。

安達:確かに。なかなか恋愛ソングを書くのが難しいんですよ。歌の中に演じる自分がいると、嘘になっちゃうような気がして。だから歌詞は自分の経験してきたことがベースになっています。経験したからこそ気持ちが乗るし、皆さんにも伝えられるし、皆さんの背中を押すことができると思うんです。多分今後もそういうスタイルになっていくのかなと思います。

――祐人さんにとって音楽をやるというのは、内面を吐き出すものなのか、それとも誰かに何かを伝えるものなのか……どちらなのでしょう。

安達:僕はサカナクションさんの音楽が大好きで、力をもらっているんです。そうやって音楽から力をもらっているからこそ「自分と同じような人たちを元気づけられる曲を書きたいな」と思っています。

――サカナクションのお話が出てきましたが、どういう音楽に影響を受けてきたのかを教えてください。

安達:10代はK-POPしか聴いていなかったかな。K-POPのカッコよさやパフォーマンスに憧れて、自分もK-POPの世界を目指すようになりました。デビューして20代に入ると、コロナ禍でライブができない時期があって、そこで自分を見つめ直すために作曲にチャレンジするようになりました。その時期にサカナクションの山口一郎さんがYouTubeライブをやられていたんです。日本に帰れないし日本の友だちにも会えない期間、それが唯一日本人を見る時間で(笑)。そこからサカナクションさんを聴いてみたら、歌詞の世界観に自分と近しいものを感じてハマりました。

――ということは、やはり曲作りにおいて優先順位が高いのは歌詞ですか。

安達:そうですね。自分がライブで楽曲を披露すると考えたときに、嘘が少しでもあると気持ちが乗らないと思うので、歌詞はちゃんと突き詰めて完成させるタイプです。

――他の3曲の収録曲についても一言ずつ解説をお願いします。

安達:2曲目の「DIVE IN」のテーマは海。不透明な世の中を海に例えて〈僕と一緒に飛び込めば怖くないよ〉というメッセージを込めました。3曲目の「BAD」は大人な感じを表現した曲。ちょっと新たな試みだったんですけど、セクシーな歌詞なども加えてみたら、「こういう曲もできるんだ」と自分でも新しい発見がありました。「DIVE IN」と「BAD」の歌詞は共作なのですが、4曲目の「PICTURE」は僕が全部歌詞を書かせてもらいました。「人生を絵のように描いていこうよ」という軽い気持ちになれる応援ソングです。ライブで盛り上がれる楽曲だと思うので、その際は一緒に歌ってもらえると嬉しいです。よろしくお願いします!

――今回のEPでは作詞や作曲に参加されていますが、これからは自作曲が増えていくのでしょうか。

安達:そうですね。でも作曲スキルがまだ足りないので、チャレンジしつつ、能力を上げていけたらと思います。自分で作ることよりも、今はやりたい曲をやるというのが最優先です。

10年間の韓国生活で得た“乗り越える強さ”

安達祐人インタビュー写真(撮影=西村満)

――「BLUE SPRING」のMVは韓国で撮影されたそうですが、まさに青春時代の10年間を韓国で過ごしたことになりますよね。

安達:物心ついてからの人生の半分だし、あっちで大人になったようなものだから、僕にとっては第2の故郷です。MVを韓国で撮ることができてよかったです。今の自分を作ってくれた場所なので、感謝の気持ちも込めて韓国で撮ろうという話になりました。

――10年間の韓国生活で得たものは何でしたか。

安達:もういっぱい学びすぎて……。でも、強さじゃないですかね。乗り越える強さ。逃げられない道の中にいたので、根性を叩き込まれました。

――日本で普通の学生生活を送っていたら経験しないようなことがたくさんあったんでしょうね。

安達:そうですね。今でこそK-POPの世界で活躍する日本人も多いですが、僕が韓国に行ったころ、先人はほとんどいなかったですからね。でも今、TOKYO FMで『K-STAR CHART presents POP-K TOP10 Friday』という番組をやらせていただいていて、ゲストに来てくださるK-POPグループの日本人アーティストの後輩に「PENTAGONを見ていました」「YUTOさんを見て、韓国に行こうと思いました」と言っていただけるので、韓国に行ったことは無駄じゃなかったと思います。

――韓国時代に、辛かったことを乗り越えられた原動力は何だったのでしょう。

安達:「ああいうアーティストになりたい」と、先にデビューされた先輩方の背中を必死に追いかけていましたから、先輩たちへの憧れの気持ちでしょうか。

――今は、憧れられる立場になりましたね。

安達:自分は日本に戻ってきましたが、また新たな道というか、韓国に行って日本に戻ってきた日本人アーティストはまだ少ないので、後進にいい姿を見せられるアーティストになっていきたいと思っています。

安達祐人インタビュー写真(撮影=西村満)

――第5世代には日本人メンバーが増えていますが、祐人さんがデビューした第3世代はまだ日本人が少なかったですよね。同時代を韓国で過ごした仲良しの髙田健太さんにもリアルサウンドではインタビューをさせていただいたんですよ。

安達:そうなんですね! 最近イベントで久しぶりに会いました。彼の頑張っている姿を見て、「負けてられないな」と思いましたね。

――韓国時代は、日本から来ているアーティストたちと支え合っていた感じはありますか。

安達:そうですね。よく集まっていたし、そこが唯一の休める場所でした。今は日本人メンバーがすごく増えているので、やりやすい環境になったんじゃないかな。

――NCT 127のYUTAさんとの交流も知られていますが、「BLUE SPRING」MVのコメント欄にYUTAさんファンからの応援コメントが多くありましたね。

安達:びっくりしました。ありがたいし、心が温かくなりました。YUTAくんとは今も連絡を取りあっていますが、お互いのファンの方々がそうやって支えてくださるのは感謝しかないですね。YUTAくんも同じタイミングで日本でソロ活動をして……というのも感慨深いです。昔からYUTAくんがロック好きというのは知っていたけれど、お互い自分のやりたい道に進める年齢になったんだなと感じました。

――同じように、韓国を出発点に日本で活動してる日本人がいるのは、心強いのでは?

安達:心強いですし、カッコいいですよね、YUTAくんは。アイドルとは違った姿を日本で見せてくれている。ファンは二つの顔を楽しめるじゃないですか。リスペクトです。

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