リアルサウンド連載「From Editors」第100回:PRADAとスティーブン・マイゼルと坂口健太郎

 「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。

いつかと願う、PRADAとスティーブン・マイゼルと坂口健太郎のトライアングル

 この連載「From Editors」もついに100回目が巡ってきました。何か特別なものを私も用意せねば、という気持ちに(勝手に)なり、今回はいつもとは少し趣向を変えて、自分の大好きなもの、そして人について、ピックアップしてみます。

 先日、「PRADA」で『TEN PROTAGONISTS』というブックをいただきました。短編小説を収録したブックで、PDF形式でサイトでも公開されています(※1)。

 今年2025年SSの「PRADA」のレディースコレクションのテーマは、「一人ひとりに『PRADA』を」。ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズは、今季のデザインを機械的かつ計画的なアルゴリズムと、サプライズの連続が織りなす人間性という、両極端にあるふたつの視点にフォーカスしたといいます。丸く切り抜かれたAラインのスカート、スパンコールがあしらわれたドレス、丸カンのようなものがたくさん付いたベルト……。近年のコレクションのなかでも、今季のSSは特に面白いデザインなのです。

 
 
 
 
 
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 そんな「PRADA」の2025年SSキャンペーンでは、キャリー・マリガンが10人のキャラクターを演じています。それを撮影したのが、スティーブン・マイゼル。その10人の女性の人生を『Eileen』(邦題:アイリーンはもういない/2015年)や『My Year of Rest and Relaxation』(2018年)の著者であるオテッサ・モシュフェグが想像して綴られた物語が、『TEN PROTAGONISTS』には収められています。

 それぞれのキャラクターにはパトリシア、アリーナ、ベティ、レイチェルなどの名前が授けられ、プログラマーや写真家という職業に就いています。オテッサは、女性を主人公にした作品を書いてきた作家です。そして、その多くで“服”というアイテムが意識的に描かれてきました。だからこそ、今回の『TEN PROTAGONISTS』はオテッサと「PRADA」の両方にとってすごく運命的なブックだと思うのです。今半分まで読んだところなのですが、「Stories of women, invented by a woman」――「女性によって創作された女性の物語」というこのプロジェクトの命題を鮮明に描けた作家はもしかしたらオテッサ以外にいなかったのかも、とさえ思いました。

 スティーブン・マイゼルも、私がすごく好きなフォトグラファーのひとりです。彼がファッションフォトに革命を起こしたとも言われてもいて、実際につい最近公開された「ZARA」の50周年キャンペーンの写真(※2)もいわずもがな最高ですが、私が好きなのは、やはりマドンナの写真集『SEX』です。その過激さをもって語られることも多い写真集ですが、写真としての精度の高さ、マドンナの表情の切り取り方、その構図。どれをとっても、すごく素敵で、そして個人を非常に繊細に捉えた作品だなあと思うのです。そんな自分の好きな写真家が撮っているという「PRADA」の今季のSSのキャンペーンビジュアル。あらためて、じっくりと眺めている今日この頃です。

 私は「PRADA」というブランドがとても好きです。持っているだけでわくわくする、「今自分は豊かな時間を過ごしている!」と実感できるアイテムばかりなのです。洗練されたデザイン、主張しすぎないトライアングルのロゴ、お店の装いまで。毎コレクションチェックして、お店で実物を見る。それが個人的な季節のルーティーンとなってきていて、「PRADA」への愛が深まっています。

 その自分の「PRADA」愛に拍車をかけたのが、坂口健太郎という存在だと思っています。

 坂口さん(謎に敬称を付けてすみません)のことを私が初めて認識したのが、2012年に発売された菊池亜希子さんによるムック『マッシュ VOL.2』でした。たくさんの方々が登場しているんですが、当時の私には坂口さんがもうめちゃくちゃに輝いて見えたんですね。当時私は中学生でしたが、それ以前/以後、特定の何かアイドルであったり俳優に熱狂的にハマったことはありません。ただ唯一、坂口さんを除いては。

 そんな(勝手な)出会い以降、雑誌や出演するドラマ、映画はすべてチェックする日々が始まります。写真集もすべて持っていますし、写真集お渡し会にも参加しますし、出演映画が公開されれば完成披露試写会や舞台挨拶にもできるだけ足を運んだり、スケジュールの許す限り主演舞台に通ったり。初めてのドラマ出演となった2015年の24時間テレビ内のドラマ『母さん、俺は大丈夫』(日本テレビ系)で坂口さんが制服に茶髪姿で初めてTVドラマに登場した時のうれしさ、是枝裕和監督の映画『海街diary』(2015年)が長澤まさみさんと坂口さんのツーショットから始まった時の胸の高鳴り、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で披露した生歌、連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(NHK総合)で彩られる朝……文字数が足りなくなるのでこのへんにしておきますが、すべての坂口さんの活動をこの10年以上見守ってきたいちファンでしかないのです。

 
 
 
 
 
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 そして今、坂口さんは「PRADA」のアンバサダーを務めています。「PRADA」と坂口さんの交流が始まったのは、2022年前後だったと記憶しています。好きなブランドと好きな人の邂逅。なんという至福なのでしょうか。坂口さんはアンバサダーとして、それはもうたいへん素晴らしい活躍をされておられます。たびたび公開されるルックや私服コーデも、Instagramを中心にチェックしていますが、いいねを押す手が止まらないです。なぜいいねは一回しか押せないのか、不思議でなりません。坂口さんの美しさ、「PRADA」そのものの芸術度、その融合具合には毎度感服しています。

 いつかスティーブン・マイゼルが撮った全身「PRADA」コーデの坂口さんを見てみたいと、あらためてこの『TEN PROTAGONISTS』のページをめくりながら思ったのでした。自分の「PRADA」愛、スティーブン・マイゼル愛、坂口健太郎愛をあらためて感じた、新緑の季節です。

※1:https://www.prada.com/content/dam/pradanux/pradasphere/2025/campaigns/SS25/Carrey_Mulligan/update/PRADA%20SS25_Magazine_Booklet.pdf
※2:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000100.000058949.html

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