リアルサウンド連載「From Editors」第104回:“ドーパミン中毒”の救世主はプロレス!?

 「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。

“ドーパミン中毒”を救う、プロレス

 毎週更新から不定期更新に変わり、なかなか更新されなかったこの企画。前回の記事は半年以上前になりますが、それでもこの連載を動かしたくなるようなことを経験したので、筆を取った次第です。

 「ドーパミン中毒」という言葉を主にSNS上でよく見かけるようになりました。ネット上におけるこの言葉は、長い映画などを退屈に感じ、短い時間で展開されるショート動画のような刺激の強いコンテンツでないと満足できないような状態であると私は理解しています。かくいう私も時々その傾向があるかもしれないと不安になることもあります。特に最近は朝寒くて、休日は布団から出ないで30秒の動画をスクロールし続け、気付いたらこんな時間……という時の無力感といったら共感できる方もいるのではないでしょうか。……いますよね? 私だけじゃないですよね?

 そんな「素早い展開」「刺激的な内容」のコンテンツに“呪われ”つつある私ですが、最近強く感動したものがあります。それがプロレスです。

 自分の趣味と言えば音楽ライブ、舞台観劇、パン作りといったもので、格闘技はおろか、スポーツ観戦もほとんどしたことがありませんでした。そんな私がなぜプロレスを見ることになったのかというと、THE RAMPAGEでパフォーマーをしている武知海青さんが棚橋弘至選手の引退試合の一つにレスラーとして出場することになったからです。その試合のレポートはリアルサウンドでも公開されているのですが、この試合の取材でプロレスを見て、そこで見たものがあまりにも面白く、もっと他の試合を見てみたいと思って後楽園ホールに足を運びました(結局、この日の試合を武知さんは欠場していたので見られなかったのですが)。

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 試合が始まると、まさにショート動画のタイムラインのように目まぐるしく繰り広げられる技の数々に圧倒されます。ドロップキックを浴びせたかと思えば、今度は投げ飛ばされたり、大きな体を相手に落としたり。格闘技に慣れていないと「痛そう!」と思わず目を背けたくなる瞬間がないわけではないのですが、どれだけ攻撃されても立ち上がる姿への感動と、繰り出される技の数々があまりに華麗で、気付いたら「いけいけいけ!」と声が出てしまうほど釘付けに。ついに3カウントが決まると思わずガッツポーズをしてしまうほどのめり込んでいました。ほんの数分前まで細かいルールもよく分からなかったのに、いつの間にかすっかり熱中できるくらいシンプルでわかりやすく、それでいて一つひとつの技が驚きの連続で、あっという間にこの日の試合が全て終わっていました。

 一方でこういった「シンプルなおもしろさ」だけでなく、人と人のドラマのような側面があるのがプロレスの魅力でもあるように感じます。この日のタイトルマッチを戦ったKO-D無差別級王者の上野勇希選手は見事勝利を収め、ベルトを守ることができました。試合を終え、マイクを手に取り心境をアツく語っていると、次の挑戦者としてKANON選手が登場。最後に「一つ教えてあげますよ、今の僕は上野さんよりちょっと強いです」と言い残したときの盛り上がり方、その言葉に対する上野選手のアンサーによる会場のさらなる盛り上がりは、きっとこれは2人の関係性やキャラクターやこれまでの歩みが分かる人に分かる“アツさ”があるからなのだと思います。レスラー一人ひとりにドラマがあり、そのドラマをぶつけ合う様子は、最初は分かりやすいショート動画的面白さがありつつ、彼らを知ることで得られる長編映画的な感動があるのだと思います。

KANON選手

 家にこもってタイムラインをなぞるような時間も人生には必要だと個人的には思いますが、でもそれだけじゃなくて、リングまで出向いて、選手に声援を送る方が健康的ではあると思います。ヘルシーに、何かに熱中することができる――そんなプロレスの面白さに武知さんをきっかけに触れることができました。

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