BIGYUKI、次章への布石を刻む 『Live in Tokyo 2025』は縦横無尽なアンサンブルとともに駆け抜けた一夜に

『BIGYUKI Live in Tokyo 2025』レポート

 カマシ・ワシントンやローリン・ヒル、ア・トライブ・コールド・クエストらとのツアーやレコーディングに参加、直近では新しい学校のリーダーズとのコラボ曲「Free Yourself」をリリースするなど、ワールドワイドな活躍を続けるキーボディストのBIGYUKIが、バンドセットによるライブ『BIGYUKI Live in Tokyo 2025』を4月20日、代々木上原のイベントスペース・OPRCTにて開催した。

『BIGYUKI Live in Tokyo 2025』(撮影=Takeshi Yao)

 BIGYUKIは前日、東京・築地本願寺 境内特設ステージで開催された『築地JAM 2025』にもバンドで出演。この日の会場には、それを観て駆けつけたオーディエンスも多数見受けられた。なおDJは、BIGYUKIとの親交も深い真鍋大度(ライゾマティクス)が務めていた。

 今回の会場OPRCTをオーディエンスが埋め尽くす中、BIGYUKIとバンドメンバーのRandy Runyon(Gt)、Brian Richburg Jr(Dr)が姿を現す。Brianがスティックで大きくカウントを打ち鳴らし、BIGYUKIが弾く幾何学的なシーケンスフレーズが場内に響きわたる。2021年にリリースされた『Neon Chapter』収録の「Watermelon Juice」からこの日のライブは始まった。ディチューンされたストレンジなシンセリフに、Brianによるヘヴィかつトライバルなドラムが絡み、Randyはいくつものボイスサンプリングがアサインされたサンプラーを駆使しながらアンサンブルをじわじわと盛り上げていく。寄せては返す波のように、演奏が加速するたびフロアからは大きな歓声が湧き上がった。

『BIGYUKI Live in Tokyo 2025』(撮影=Takeshi Yao)
Randy Runyon
『BIGYUKI Live in Tokyo 2025』(撮影=Takeshi Yao)
Brian Richburg Jr

 続く「Simple Like You」は、2017年にリリースされたデビューアルバム『Reaching For Chiron』収録曲。オリエンタルかつスリリングな響きをまとったBIGYUKIのメインリフに合わせるように、ステージ後方のスクリーンには荒く加工された中国の風景と思しき映像が投影される。音源ではJavier Starksによるボーカルがフィーチャーされていたが、この日の演奏はRandyが繰り出す女声のサンプリングボイスが、曲の持つ異国情緒をより色濃く引き出していた。

 ヒプノティックなブレイクを挟み、疾走するエンディングではどこかYellow Magic Orchestraの「東風」を彷彿とされるフレーズを、BIGYUKIのシンセベースとRandyのギターがユニゾンでプレイ。そこからカオティックなエンディングへとなだれ込む。

『BIGYUKI Live in Tokyo 2025』(撮影=Takeshi Yao)

 ほとばしる会場の熱気を冷ますように、ドビュッシーやサティを思わせる美しいインプロビゼーションをエレクトリックピアノで奏でるBIGYUKI。徐々にリズミカルなリフへと変化していき、そこにBrianがリムショットで拍子をつけていく。気づけば曲は「NuNu」に。こちらも『Reaching For Chiron』に収録された、強烈なシンコペーションのリズムとクラシカルなコードワークが特徴的な楽曲だ。じっくりとヒートアップしていくアンサンブル。一瞬の静寂のあと、むせび泣くようなRandyのロングトーンがギターから放たれ、オーディエンスの感情を激しく揺さぶった。

 4つ打ちキックに合わせ、BIGYUKIがまるでパーカッションのように鍵盤を叩きながら、のたうち回るようなベースラインを送り出す。そんなジャムセッションを挟み、勢い余って皮が破けるほどタンバリンを叩くRandyにフロアから大歓声が巻き起こる。そのまま新曲「Soft Places」では、“人力テクノ”ともいうべき緻密でスリリングなアンサンブルを展開。フロアのボルテージは再びピークに達した。

『BIGYUKI Live in Tokyo 2025』(撮影=Takeshi Yao)

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