木村拓哉はなぜ突然現れるのか? サプライズ企画から見える“不動のスター=キムタク”の2つの側面

 そうした感覚は、言うまでもなくSMAPというグループでの経験から培われた部分が大きいはずだ。とりわけSMAPは、『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)をはじめとした番組を通じてテレビバラエティを極めた最初の男性アイドルグループだったと言っても過言ではない。そこで木村も、SMAP、そして番組の一員としてコントやトーク、ロケなどで活躍を見せた。現在も、その片鱗は端々に窺える。サプライズゲストでありながら番組のルールや見せ場を熟知していて、場を盛り上げるのが上手い。

 『それスノ』では、自分の登場でスタジオがまだ騒然としている雰囲気の中で、審査員のダンサー・TAKAHIROに「TAKAHIROポイント(特別に加点されるボーナスポイントのこと)もらえないんですか?」と尋ね、笑いを誘っていた。また『モニタリング』での三代目JSBのライブへの潜入企画でも、こうした企画では当たり前になっている変装は一切しないと言って、現場スタッフやスタジオで観ている面々を驚かせていた。どちらも、自分が「キムタク」というアイコンであることをある意味逆手にとって、リラックスする笑いやドキドキ感を生んでいる。それがプレイヤーとしての自分に求められていると敏感に察知した、バラエティ経験の豊富さを感じさせる場面だった。

 結局それは、木村がスターであると同時にアイドルでもあるということだろう。時代の象徴という雲の上のような存在であると同時に、ずっとテレビとともに歩み続ける身近な存在。木村は、一見矛盾するようなスターの遠さとアイドルの近さを十二分に兼ね備えている。その点、唯一無二の存在だと言っても大袈裟ではないだろう。

 そしてそんなかけ離れた2つの顔を持つ魅力は、テレビならではのサプライズ企画においてこそ生かされる面があるのではないだろうか。サプライズ企画は、スターとアイドルのギャップが最も大きな効果を発揮するもののひとつと思えるからだ。

 SNSが広く普及し、どんな芸能人もことごとく身近で接しやすい存在にしてしまう現代において、真の意味でスターであり続けることは困難を極める。だがもう一方で私たちは、やはり心のどこかで遠い憧れの対象となるスターを必要としている。その中で木村は、誰もが「スター」と認める数少ないひとりだろう。増えるサプライズ登場は、“スター・木村拓哉”を再確認したいという私たちの隠れた願望の反映なのかもしれない。

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