FIVE NEW OLDが歩んだ15年「やっぱりひとりじゃできなかった」 貫き続ける願いと血肉化したスタイル

FIVE NEW OLDが歩んだ15年

メジャーデビューとプロとしての命題「どうしたらもっと聴いてもらえるか」

FIVE NEW OLD(撮影=三橋優美子)

――「By Your Side」は今回の再録バージョンもそうですけど、幕開け感がすごくありますよね。「ここから始まっていくんだ」っていう気合いというか、思いが入っている。

SHUN:そうですね。

HIROSHI:「By Your Side」でいつも思い出すのは、SHUNくんが、当時の僕の家にわざわざきてくれて、「コーヒー出さなきゃ」って持って2階に上がっていく時に階段でコケて、壁にコーヒーをバーっとぶちまけてしまったっていう。その記憶しかない(笑)。

HAYATO:(笑)。僕の記憶は、セッションのあとにごはんを食べに行って、SHUNくんが奢ってくれたことがあった時かな。WATARUは当時まだ人見知りをしてたんですけど、ごはんを奢ってくれるってなった瞬間に「いいんですか!?」って心を開いた瞬間だったっていう(笑)。基本的に彼から率先して喋るっていうことはなくて、僕がやりとりして「どう思う?」と聞くような感じだったので、SHUNくんと直接のやり取りっていうのがほぼなかったんです。でも、「ごはんを奢ってくれる」って言ってから、めっちゃ喋るようになったんですよ。

WATARU:奢ってくれる人に悪い人はいないですから(笑)。

――今回のベストアルバムをまとめてみて、メジャーデビュー以降の自分たちの変遷や変化についてはどう振り返りますか?

HIROSHI:「By Your Side」とか「Ghost In My Place」とかのあたりは、自分たちの音楽が変わっていくことというか、伸びしろをどんどん自分たちの色で埋めていくことに対する爽快感があって。でも、めっちゃしんどかったことも同時に覚えていて。自分に対して妥協を許さなかったのをすごく覚えてますね。まだ関西の実家にいた時期で、小学校から一緒で家がすごく近かったっていうのもあって、毎日晩ごはんを食べ終わった21時ぐらいに、WATARUがママチャリでうちにくるんですよ(笑)。そこからなんやかんややって、大体いつも朝6時ぐらいまで(作業を)やって。それが当たり前だと思ってやっていたのが、メジャーの最初のほうでした。そのぶん、自分たちの可能性とか自由は感じていたかもしれない。

 あとは、「どうしたらもっと聴いてもらえるか」っていうのは、月並みですけど、プロとしての命題としてずっと悩んでいました。やりたいことが伝わらないとか、じゃあ伝わるようにするにはどうしたらいいのかっていう。そういうなかで聴く人のことを思う時間は増えましたね。だから、昔の自分とは基本原理は一緒なんですけど、その根本にあるものはちょっと違うのかもしれない。聴く人の風景をすごく考えるし。FIVE NEW OLDのお客さんって、物静かな人が多いんですよね。その声なき声にちゃんと耳を傾けて、見えないところに目を凝らして音楽を作らないとダメだなっていうのは、強く思うようになりましたね。音楽的な面で言うと、音楽性が変わってどうやってまとめていいのかわからないっていうのが、今になってようやくまとまってきたような気がする。

――今、ですか?

HIROSHI:うん。ワーナーに入ってから2枚のアルバムを出して、今のほうが始まった頃のバンド感っていうものが楽曲のなかに、より強く乗っているような感じがしていて。「4人の存在がちゃんと音楽に宿っているのかどうか」という自己を見つめる視点と、「聴く人にとってどういうものであってほしいのか」っていう他者を思う部分と、その2軸が15年かけてようやく回るようになってきたのかなっていう気がします。

「FIVE NEW OLDとは何か?」をもう一度問いただした時期

FIVE NEW OLD(撮影=三橋優美子)

――いろいろインタビューを拝見してると、10周年とか『Departure : My New Me』ぐらいの時期に「FIVE NEW OLDとは何か?」みたいなことをもう一度問い直したという話があったんですけど、そこで整理できた感じもあったんですか?

HIROSHI:どうなんだろう、できてたんですかね? (メンバーに)どうですか? 僕はできた記憶ない(笑)。

SHUN:「できた」とは言ったけど(笑)。

HIROSHI:(当時は)言ったんだけど、今はわからない(笑)。その到達地点での何かしらの答えはあったと思うんですけど、またその先っていうのは……やっぱり同じことを自問自答し続けて、その階層がどんどんスパイラル状に深くなっていくものだと思うので。そういう意味では、拾ってはこぼして、また拾ってはこぼして、というか。多角的にこのバンドを見続けるという行為は作業としては変わらないと思いますけど、現時点で言えることとしては、すべてが円環した感じはしてます。

――だって、このベストアルバムのタイトルは『FiNO is』ですからね。「これがFIVE NEW OLDだ」っていう。

SHUN:このあいだ、HIROSHIくんが言っていて「そういうことか!」と思ったのは、その都度答えはわからないまま目の前のことをやり続けてきて、それが気づいたら一枚の大きい絵になってた、みたいな。このベストアルバムで並べた時に、それをすごく感じたんです。全然間違ってないというか、全然ブレてないという感覚が、この一枚のなかであったので。悩みながらやっていくというのは、これからも音楽家としての業のように続いていくと思うんですよ。このベストアルバムは、ちゃんと一本の芯のあるものを自分たちは表現できていたっていう証明にもなってるんじゃないかな。たぶん彼(HIROSHI)のなかに答えはあるんですけど、整理はできないというか。

HIROSHI:……言ったことも覚えてない(笑)。

SHUN:(笑)。だから我々はそれをキャッチして、「こういうものなんだな」とか、HIROSHIくんを支えながら「こういうことだよね」と話をしたり……それがバンドだなって感じがします。

HIROSHI:だから、すごく結果論なんですよね。結局、最初のアルバムを作った時から、自分たちの音楽というものを、ひとつの大きな水脈のなかに外れることなくどうやって入れていくのかをいまだに思い続けてるのは本当のことで。ただ、こうやって振り返ると、その自分の願いに対して曲たちが手をつないでいってくれた、みたいな感じというか。僕は自分で狙ってこうはできなかった。でも、それがこの4人で音楽をやっていることの意味だし、うん、聴く人が日々の暮らしとともに僕たちの音楽を聴いて、ライブにきてくれて、その時に見せてくれた表情とか仕草とか、そういうものが全部積み重なっていった結果の音なんだと僕はすごく思います。再録がそれを如実にしてくれてると思う。これが再録じゃなかったら、もしかしたらもうちょっとちぐはぐしたヒストリーになってたような気がする。

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