Homecomings、ミスタードーナツCMソング「any day now」を紐解く　天使、映画にまで連なる文脈で描かれた祈り

　穏やかなメロディ、柔らかな歌声とともに「春の気持ち もちもち」という言葉が印象を残すミスタードーナツの新CM。春めく季節にぴったりなこの楽曲はHomecomings（以下、ホムカミ）が3月5日に配信リリースした新曲「any day now」である。かねてよりバンドのポッドキャストで新商品を取り上げる（※1）など、ミスタードーナツのファンでもあるホムカミにうってつけなタイアップだろう。

　CMで流れているのは特別仕様の歌詞だが、音源としてリリースされたバージョンの「any day now」もドーナツショップのタイアップ曲として理想的だ。そして現在のバンドのモードを的確に示す楽曲にも仕上がっている。本稿ではこの歌が描こうとしているものについて、そして今のホムカミの特別さについて紐解いていこうと思う。

 「any day now」は残響の豊かなギターワークや聴き手を包容するような分厚い音像が特徴的だ。これは昨年末にリリースされたメジャー3rdアルバム『see you, frail angel. sea adore you.』でもフィーチャーされていたサウンドである。

　轟音のシューゲイザーサウンドや静謐なエレクトロニカの要素を導入した同作は、これまでインディーポップ的な温もりのある楽曲を持ち味としていたホムカミにとって大きな転換作だった。これまでも人と人との繋がりや寄り添いを心地よいサウンドに乗せて描いてきたホムカミだったが、このアルバムではじっくりと自分自身と向き合うような愛の形を描いている。それを表現する上で必要になったのが、心を守るように包み込む轟音であり、黙々と身を浸せる電子音やノイズだったのだろう。

　「any day now」のサウンドは『see you, frail angel. sea adore you.』を色濃く引き継ぎつつも、より前進するエネルギーに満ちているように思う。ステップを踏むようなリズム、流麗なアルペジオなどが春らしさを漂わせており、その晴れやかさが聴き手の心を緩ませる。畳野彩加（Vo/Gt）の歌声も、『see you, frail angel. sea adore you.』のホーリーな質感を内包しながらもより滋味深く、柔和になっている。アルバムで得た新たなモードの延長上に、これまで培ってきたホムカミらしさを合流させ、さらに一歩進めたような印象を受ける楽曲だ。

　「any day now」は〈ありのまま 頬寄せたら／口元に春と砂糖のしぶき〉とドーナツを食べる喜びを見事に捉えた言葉から始まる。他にも〈輪〉や〈リング〉といったドーナツを連想させるワードがあちこちに散りばめられ、コマーシャルソングとして愛らしく仕上がっている。しかしこれらも『see you, frail angel. sea adore you.』を念頭に置くと異なる響き方をしてくる。