アニソン20年の軌跡:シーンの変遷を辿る(1)黎明期から開花期へ レジェンドたちが築いた転換点を追う
PCゲーム音楽の台頭 音楽集団・I’veによるシーンへの影響
そして2000年代前半のアニソンシーンで忘れてはならないのが、PCゲーム音楽の存在だ。1997年の『To Heart』や1999年の『Kanon』、そして2000年の『AIR』などPCゲームでの大ヒット作が続いた2000年前後。ストーリーなどゲーム内容に注目が集まる中、そこで聴かれる音楽たちも同時に熱狂的な人気を獲得するようになる。その中でカリスマ的な人気を誇ったのが、北海道の音楽集団・I’veだ。ハウスやトランスなどのデジタルミュージックを基調とした高品質なサウンドはシーンにおいて絶大な支持を獲得し、高瀬一矢や中沢伴行らクリエイター、そしてKOTOKOや川田まみら“歌姫”の名は一気にゲームシーンを飛び越えて、アニメシーンにまで届くこととなる。
2002年にはI’veとゲームメーカー・keyの折戸伸治が音楽を担当したTVアニメ『おねがい☆ティーチャー』(WOWOW)が放送開始、KOTOKOによる「Shoorting Star」がテレビから鳴り響いた。そして2004年にはKOTOKOがジェネオン(現・NBCユニバーサル)からメジャーデビューを果たし、I’veサウンドは本格的にアニソンへと侵攻していく。また、I’veはハードなデジタルサウンドとは別に、サウンドとボーカルを極限までキュートに煮詰めたような楽曲、いわゆる“電波ソング”と呼ばれるものもPCゲームシーンで次々と発表し、これもまた以降のアニソンシーンにおいて強烈な影響を与えている。
そのほかにも、2000年代以前からオタクカルチャーを体現するインフルエンサー的存在だった桃井はるこは2002年に小池雅也とともにUNDER17を結成。“萌えソング”を掲げて美少女ゲームソングを量産し、以降のアニソンを含むオタクカルチャーの中心人物となっていく。2004年には上松範康が前身のfeelを経て、音楽集団・Elements Gardenを結成。上松自身も同年に栗林みな実「翼はPleasure Line」にてアニメ主題歌を手掛け、その後2005年には水樹奈々に「ETAERNAL BLAZE」を提供、一気にアニソンシーンの最前線に躍り出ることとなる。
上記のほかにもキャラクターソングがヒットを記録するなど、“現代アニソン開花”という歴史的イヤーから20年というアニバーサリーを迎えた今、改めて2005年という数々のモーメントを振り返ってみてはどうだろうか。それによってアニソンの現在をより深く知ることができるーーそして、そこには今に続く未来へのヒントがいくつも転がっているはずだ。
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