アニソン20年の軌跡:シーンの変遷を辿る(1)黎明期から開花期へ レジェンドたちが築いた転換点を追う
林原めぐみ、椎名へきる、水樹奈々……活況を迎えた声優アーティストシーン
1990年代シーンの一大トレンドとなった声優アーティストによる音楽活動は、2000年代以降も引き続き活況の中にあった。林原めぐみや椎名へきるといった代表的アーティストの後を引き継ぐように、2000年12月には水樹奈々がシングル『想い』にてアーティストデビューを果たす。演歌をルーツに抜群の歌唱力を聴かせるシンガーとしても話題を集めながら、初期の代表曲「POWER GATE」をリリースした2002年頃からチャートアクションも上向いていき、2004年リリースの『innocent starter』では自身初のオリコンシングルチャートTOP10入りを実現する。そしてその勢いのまま、2005年1月には自身初の日本武道館公演を開催、同年10月にリリースされた歴史的名曲「ETERNAL BLAZE」を表題に据えた作品にて、オリコンシングルチャートにおいて声優個人での当時の歴代最高記録である2位を記録。以降長らく続く“水樹奈々の時代”の幕を開けることとなる。
ほかにも2001年には田村ゆかりがKONAMIレーベルよりシングル『summer melody』を、堀江由衣がスターチャイルドよりシングル『Love Destiny』をそれぞれリリースし、本格的なアーティスト活動を開始する。この水樹・田村・堀江の3人のほかにも、1996年に菅野よう子らのプロデュースのもとでデビューを果たし、2003年には『tune the rainbow』でオリコンシングルチャートTOP10入りを果たした坂本真綾の活躍など、2000年代は声優による音楽がさらなる活況を迎えることとなる。
坂本の名前を出したとなると、2000年代のビクターエンタテインメントの存在を見過ごすことはできないだろう。老舗のレーベルの中でも、高いクオリティのサウンドを常に提供しているというイメージの強いが、2000年代前半も前述の坂本や菅野、新居昭乃、梶浦由記(See-Saw、FictionJunction)、ROUND TABLE featuring Ninoなど、良質な楽曲を次々とリリースしていった。また2004年にはTVアニメ『月詠 -MOON PHASE-』OPテーマとして、ディミトリ・フロム・パリによる「Neko Mimi Mode」が発表される。
オシャレなサウンドに葉月役の斎藤千和によるキュートなボイスがサンプリングされたいわゆる“萌えラウンジ”は当時のシーンに強烈なインパクトを与え、のちのアニソンクラブ=アニクラなどへと繋がっていく当時のクラブカルチャーに多大な影響を与えていった。
1987年放送の『シティーハンター』以降、アニソンはJ-POPアーティストと密接な関係性を結び、シーンに大きな地位を築いてきたことは、現在のアニソンシーンをとりまく環境を見れば明らかだろう。その多くは、才能豊かな若いアーティストの登竜門としてのアニメタイアップという印象が強い。2000年代に入っても、2002年に『NARUTO -ナルト-』、2004年には『BLEACH』がそれぞれTV放送開始。ここでもASIAN KUNG-FU GENERATIONやFLOW、ORANGE RANGE、UVERworldといったこれからくるであろう(あるいはすでにヒットを記録している)若手アーティストが次々とOP/EDテーマを担当していく。
一方で、90年代にすでにブレイクした人気アーティストも、同様にアニメとの良質な関係のもとにヒット曲をリリースしていく。2002年放送のTVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』ではT.M.Revolutionが「INVOKE -インヴォーク-」で久々のアニメタイアップを担当、アニソンシーンにおいてもその巨大な存在感を確かなものとした。またL’Arc〜en〜Cielも2003年のTVアニメ『鋼の錬金術師』において「READY STEADY GO」を発表したのち、2005年の『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』でも主題歌「Link」を担当している。