「可愛くてごめん」「全方向美少女」……“自己肯定感爆上げソング”がZ世代に刺さる理由 SNS時代をサバイブする鎧に

 “自己肯定感爆上げソング”とでも言うべき楽曲が今シーンを賑わせつつある。XやTikTok、Instagramなどで若年層を中心に共有され人気を集めている。

 本稿で扱う“自己肯定感爆上げソング”とはキャッチーな曲調で自身の存在を(主にビジュアル面で)讃え、気分を高めていく軽妙な歌詞を特徴とした楽曲。エモーショナルかつ熱い従来の応援ソングとは一線を画している。また前述した通り、Z世代(1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた世代)を中心に支持を集めているのも興味深い。

SNSを通して自身の美しさ/可愛さを訴求したいユーザーにハマる曲たち

 例えばHoneyWorksの「可愛くてごめん」はその代表格だ。煌びやかなオケと甘い歌声で、自分自身の“可愛さ”をアピールするユニークな楽曲でTikTokではダンス動画に加え、メイクアップ動画などで多く引用されヒットした。徐々に理想通りに完成していく自分の顔を魅せる動画のBGMとして最適なのだろう。

可愛くてごめん feat. ちゅーたん(CV:早見沙織)/HoneyWorks

 同様にTikTokを中心にロングヒットを続けるFRUITS ZIPPER「わたしの一番かわいいところ」も“自己肯定感爆上ソング”の好例だ。〈君が知ってるわたしが一番かわいいの、わたしもそれに気付いた!〉というやや複雑な言い回しだが、これも自らの“かわいい”を讃える歌と言える。

【MV】FRUITS ZIPPER「わたしの一番かわいいところ」

 その系譜における新たなヒット曲が乃紫の「全方向美少女」だろう。艶やかだが人懐こさのある歌声とキャッチーなメロディ、そしてTikTokとの抜群の相性によってリリース以降、楽曲を使用した関連動画は増え続けている。

乃紫 (noa) - 全方向美少女 【Official Music Video】

 本人もインタビュー(※1)で語っている通り、〈正面で見ても 横から見ても 下から見ても〉という歌詞に合わせてスマホのインカメラを動かすだけで簡単に自分をアピールする動画が撮れるという機能性を狙って作られており、SNSを通して自身の美しさ/可愛さを訴求したいユーザーにぴったりの楽曲と言える。

 ありのままの自分を肯定する“セルフラブ”的な描写とは異なる角度で、“自己肯定感爆上げソング”がZ世代の心を掴んでいる。その根底にはどんな理由が隠れているのだろうか。

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