THE COLLECTORSが体現するロックバンドを続けていく理想的なあり方 アルバムリリースツアー東京公演レポ
THE COLLECTORSのニューアルバム『ハートのキングは口髭がない』のリリースツアー、11月16日から12月21日まで8本をまわるなかの4本目、12月1日東京・恵比寿The Garden Hall。
THE COLLECTORSが、この会場でライブを行うのは初めてである。オールスタンディングで、びっしりと人が入ったフロアの熱気といい、ステージの広さといい、高い天井といい、とてもいい空気感。最初のMCで加藤ひさしが「いやあ、素晴らしい。恵比寿でこんな人が集まれるとこ、ほかにないんじゃない? こんなにいいホール、知らなかったね」と言うほどである。
セットリストは、『ハートのキングは口髭がない』から「ヴァニティフィクション」「スローリー」「ランドホー!」以外の8曲を演奏。ほかの11曲は、過去のレパートリーから選ばれた。
最初は、「スティーヴン・キングは殺人鬼じゃない」「ぼくのプロペラ」「タイム・トリッパー」「S.P.Y」と、『ハートのキングは口髭がない』の曲と4thアルバム(『PICTURESQUE COLLECTORS' LAND 〜幻想王国のコレクターズ〜』/1990年)の曲を、交互にプレイする形でスタートする。
その4曲を終えての最初のMCで「またしても、もうちょっとでソールドアウトだったのに。おまえら、なんでそういう意地悪すんの?(笑)」と加藤が言うと、古市コータロー(Gt)が「(ここに)きている人は意地悪しないよ」と訂正。すかさず加藤、オーディエンスに「おまえら、ほんといい奴だな」。拍手と歓声と笑顔が広がる。加藤「だってさ、Oasisのチケットで、今日のコレ、何回観れるんだよ?」。
5曲目からの中盤は、6曲目に「Stay Cool! Stay Hip! Stay Young!」(2004年)を挟みつつ、「シルバーヘッドフォン」「キミに歌う愛のうた」「ワンコインT」「Hold Me Baby」「ガベル」と、『ハートのキングは口髭がない』からの曲を固め撃ちしていく構成。イノセントなラブソングである「キミに歌う愛のうた」「Hold Me Baby」と、今の世の闇を描いた「シルバーヘッドフォン」「ワンコインT」「ガベル」との、ギャップというか、コントラストが鮮やか。特に、世界の終末を歌う「ガベル」は、後者の極みのような曲である。
その「ガベル」の次が、「未来のカタチ」だったのも印象的だった。ラブソングの体裁を取りつつ、〈ボクら夢みてた 未来とおんなじ景色かい?/OH BABY 同じ形かい?〉〈どんな風に生きてみたって 未来は意地悪に 形を変えて行くよ〉と歌われる曲である。2005年にこの曲をリリースした、その〈未来〉が、最新作の楽曲で描いた今である、ということを表したかったのかもしれない。
山森“JEFF”正之(Ba)が「笑顔が素敵なコーちゃん、いってみよう!」とコールし、コータローが「負け犬なんていない」を歌う。次は3人でインストゥルメンタルを一曲。その後半で、衣装替えを終えた加藤が戻ってくる、というおなじみのくだりを経て、誰かの話はもういいよ、自分のストーリーを始めよう、作ろう――という、ニューアルバムのなかでも特に強いメッセージ性を持った「This is a True Story」から、後半のブロックが始まる。そして、「ひとりぼっちのアイラブユー」「NICK! NICK! NICK!」「パーティ・クイーン」と、新旧の3曲でオーディエンスの熱をピークに導いて、本編が終了。
「ひとりぼっちのアイラブユー」では、コータローがイントロのリフを弾き始めると同時にハンドクラップが巻き起こる。「NICK! NICK! NICK!」のサビでは、みんな叫ぶように加藤の歌に追随する。「パーティ・クイーン」は、ライブであまり演奏されない時期もあったが、ちょっと前からまたライブで重要なポイントを担う曲に返り咲いた印象がある。