水瀬いのり、デビュー10周年へと突き進むための出発の一夜 ツアー『heart bookmark』千秋楽を振り返る

水瀬いのり、ツアー千秋楽レポ

 水瀬いのりのワンマンライブツアー『Inori Minase LIVE TOUR 2024 heart bookmark』の千葉公演が11月2日、3日にLaLa arena TOKYO-BAYにて行われた。9月より約2カ月をかけて兵庫、広島、愛知、福岡、北海道と巡ってきた本ツアーの締めくくりとなる千葉2DAYSのうち、本稿ではツアーファイナルにあたる2日目公演の模様をレポートする。

 会場に足を踏み入れると、まず目に飛び込んできたのは演劇セットさながらの巨大なステージセットだった。アーチ窓のアパートメントが立ち並ぶ欧風の街並みが再現され、軒先にはベンチやカフェテーブルなどが小粋に設置されている。各建物の玄関前ポーチが楽器隊の立ち位置になっており、パーカッションやドラム、キーボードなどが鎮座。ギターアンプやベースアンプ類もまるで住人の荷物か何かのように自然な佇まいで風景に溶け込んでいた。このステージビジュアルがフランス・パリで撮影された水瀬の最新作『heart bookmark』のアートワークにちなんだものであることは、言うまでもないだろう。

水瀬いのり(写真=加藤アラタ、三浦一喜)

 定刻を迎え、オープニングムービーに続いてバンドが演奏を開始すると、客席は一斉にライトブルーのペンライト光で埋め尽くされる。すると、セット中央に設けられた階段の踊り場から水瀬が元気よく出現。まるでアパートメントの住人が家から飛び出してきたかのような趣だ。トリコロールのクラシカルなロングスカート衣装に真っ赤なリボンを合わせたスタイルの水瀬は「We Are The Music」を満面の笑みとともに歌い始め、ライブの幕開けを高らかに告げた。続く「Sweet Melody」では軽やかな足取りでステージを往来し、うれしそうに客席へと笑顔を振りまいていく。そしてアウトロでは「今日という日を一緒にブックマークしてください!」とツアータイトルを引用しながら声高に呼びかけた。

水瀬いのり(写真=加藤アラタ、三浦一喜)

 MCではツアーファイナルへの意気込みに加え、豪華なステージセットについても熱弁。“私だけのパリ”をテーマに組んでもらったセットであることを笑顔を浮かべながら明かし、細部にまで工夫の施されたデザインにご満悦の様子だ。さらに「ほしとね、」はカフェテーブルに、「ソライロ」はベンチに座って歌うことで、このセットがただの飾りではなく、その世界を構成する要素なのだと実感する。

水瀬いのり(写真=加藤アラタ、三浦一喜)

 バンド紹介コーナーを挟んでお色直しを終えたのちに披露されたのは「フラーグム」。ラテン語で“イチゴ“を意味する楽曲タイトルにちなんで、イチゴをイメージした真っ赤なベレー帽とミニドレス、グリーンのベルトというファンシーな衣装に身を包んだ水瀬の出現ポイントは、まさかの2階のバルコニーであった。それがただの書き割りセットではなく、窓と手すりのあいだにしっかり足場があることがここで判明する。続く「Kitty Cat Adventure」ではキュートなネコダンスも惜しみなく披露するなど、さまざまな趣向を凝らして会場中のオーディエンスを魅了し続けた。

水瀬いのり(写真=加藤アラタ、三浦一喜)

 ライブの折り返し地点ではスクリーンにフランスロケのメイキング映像が映写され、終始ほんわかしていた空気感を一変させるスリリングな「スクラップアート」「アイオライト」の連投で後半戦がスタート。水瀬はフューチャリスティックなシルバーの衣装をまとって逆光ライティングとともに颯爽と再臨し、クールな歌声を響かせる。その後も彼女のディスコグラフィにおいて比較的レアな低音ボーカルをふんだんにフィーチャーした「八月のスーベニア」や人気曲「Starry Wish」なども混じえながら、水瀬が言うところの“かっこつけゾーン”がエネルギッシュに展開されていった。

水瀬いのり(写真=加藤アラタ、三浦一喜)

 すると、ふいに2階バルコニーに須磨和声(Violin)の姿が。ピンスポットを浴びて流麗なバイオリンを響かせ始めると、これを合図に“いのりバンド”によるインスト曲コーナーへとなだれ込む。各人の卓越した演奏スキルを存分にお見舞いさせたのち、舞台上手のアパートメントの扉が開いて3度目の衣装替えを終えた水瀬が登場。パステルカラーのアシンメトリーなドレス姿でラストスパートを開始した。エキゾチックなラテンナンバー「燈籠光柱」、爽やかなミディアムチューン「My Graffiti」、近年の水瀬のテーマソングと言える「glow」を続けざまに届け、ライブ終盤にもかかわらずますます伸びやかさに拍車のかかる歌声を響かせて会場を夢見心地へと導く。

水瀬いのり(写真=加藤アラタ、三浦一喜)

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