水瀬いのり、田所あずさ、友希……新たな表現で高みを目指す女性声優たちの新作

 2019年から空前の大ヒットとなっている『鬼滅の刃』が象徴するように、様々なアニメがお茶の間に浸透し、世の中に大きな影響を与えている昨今。豪華俳優陣が声優に抜擢された映画 『竜とそばかすの姫』や、スマホゲームとしても人気を誇った『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』(TOKYO MXほか)など、2021年に話題となったアニメ作品も数多い。そんなアニメに命を吹き込む声優もまた、声優以外の活動に力を入れることでファンの幅を広げ続けている。

 2022年1月も早速声優たちによる意欲的な音楽作品がいくつもリリースされた。ライブを開催しにくい期間が続くなか制作された作品は、ときに映像表現と組み合わせ、ときにこれまでと異なる方向性を模索することによって、アーティストとしての個性が詰まったものとなっている。声優としてだけでなく、1人のシンガー/アーティストとしてキャリアを積み上げていく姿が見られた。

 水瀬いのりは、デジタルシングル「REAL-EYES」を配信リリース。制作が発表されている4thアルバムにも収録予定だというこの楽曲は、放送中のアニメ『現実主義勇者の王国再建記』第2部オープニングテーマでもある。

 上品なストリングスと優しく伸びやかな声が印象深い「REAL-EYES」。歌詞によって変化する声色の機微が楽曲をさらに鮮やかなものにしている。アップテンポの楽曲には全体的に柔らかさを感じるが、ギターをメインにしてクールな表情を見せるAメロなど、二面性を歌で見事に表現している。それはMVにも反映されており、ステンドグラスの窓から差し込む光やセット中に満ちた柔らかい光に包まれ歌う水瀬は、白と黒の衣装にそれぞれ身を包み、視覚的にも異なる性格を表現している。

水瀬いのり「REAL-EYES」MUSIC CLIP

 水瀬は自身のラジオ番組でMVについて、「白い自分と黒い自分は表裏一体なんじゃないかなと思っていて。どっちがよくてどっちが悪いとかではなく、それぞれが持つ要素が合わさって1人の色だったり光だったり形ができる」と語る。黒い水瀬と白い水瀬、表情や雰囲気を異にしながらお互いを引き立てる形で、表情の豊かさを強調したという。

 アニメのオープニングとしても存在感があるほか、1人の表現者としての音楽と映像の表現にも力を入れた「REAL-EYES」。アルバムの詳細は現時点ではまだ発表されていないが、リリースに向けてさらなる活躍が見込まれる。

 田所あずさも、シンガーとしてさらなる成長を見せた新曲をリリースした。配信シングル「箱庭の幸福」は、放送中のアニメ『リアデイルの大地にて』(TOKYO MXほか)のエンディングテーマ。楽曲からはアルバム『Waver』をセルフプロデュースで作り上げ、アーティストとして大きく前進した田所が辿り着いた新たな境地を感じることができる。『Waver』でミドルチューンやバラードでの表現力を模索し、溢れ出る感情を丁寧に歌唱に落とし込んだ田所だが、「箱庭の幸福」でもその流れを汲み、シンプルなシンセサウンドと静かながら情感深い歌声を聴かせている。切なさの滲む声と息遣いの伝わる近い距離感は、絵本を読み聞かせするような臨場感を伴っている。

 MVでもアーティストとしての表現を突き詰めており、影や光、鏡を巧みに使い、赤い衣装に身を包みながら、白い建物、淡い桃色の壁、青い空を幾何学的に切り取る。ループを多用したミニマルな作りでありながら強烈な印象を残すMVは、映像作品単体としても完成度が高い。落ち着きの中に生命力を感じる田所の歌の魅力を増幅させるMVであり、併せてアーティストとしての魅力を表すものとなっている。

田所あずさ 「箱庭の幸福」MusicVideo



関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる