吾妻光良&渡辺康蔵、バッパーズ結成45年で実感する“誇り” 新アルバム『Sustainable Banquet』を語る

吾妻光良&渡辺康蔵、バッパーズの“誇り”

キャリアを重ね、あうんの呼吸になった合奏力

ーーそういう、個人的な現状と、その時代のトピックを組み合わせるのが、バッパーズは昔から得意ですよね。「IT Boogie」とか。

渡辺:「IT Boogie」は、一回変えたよね。「AI Boogie」にして、エーアイ、エーアイって。そこを変えてるだけだけど。他にも時代に合わせて歌詞を変えているバージョンはあるけど、録音できないね。でもライブでやると楽しいし、そういうのを考えるのが楽しいんだよね。

ーーそれぞれ、アルバムの中のお気に入りソング、ありますか。

渡辺:自分らの曲は似たようなもんだけど、よっちゃん(中納良恵)がやっぱり良かったね。EGO-WRAPPIN’を迎えた「Boogie-Oogie」。

吾妻:俺のお気に入りは、日本語許諾が下りなかった「Don’t Hesitate Too Long」。日本語にしたんだけど、下りなかったんですよ。

渡辺:というか、返事がなかった。見てないんじゃない? レコーディングはしてるから、許諾が下りれば出せるんじゃないかな。

吾妻:原曲にそっくりにできたんで、そこが嬉しいですね。リズムアンドブルース・ビッグバンドという感じがして、僕は好きです。

渡辺:演奏がいいんだよね。

ーー素朴な質問ですが、キャリアを重ねれば重ねるほど、演奏って上手くなるものですか。ブルースやジャズの世界では。

吾妻:いやぁ、だんだん下り坂ですよ。みんなはどう思ってるか知らないけど、個人の力量はもうピークを打ってると思う。上手くなることはないけど、でも合奏力は上がってるような気がする。

渡辺:グルーヴ感が、あうんの呼吸で合ってるんだろうな。

吾妻:さすがに長くやってるから。先ほど言った「誇らしさを感じる」というのは、そういうところにもあって、合奏力は上がってるとは思います。

渡辺:さっきの話で言うと、(結成当初は)最初にジャズとロックがあって、演奏するのにもちょっと温度差があったんだけど、今は逆に、こっち(ロック、ブルース組)に引っ張られてるのもあるんだろうけど、リズムの落としどころを感じてるんで、あうんの呼吸になるんだよね。

吾妻:そうだね。

渡辺 たまにドラムがいないとか、ベースがいないとかで、若い人に手伝ってもらうことがあるけど、みんな上手いんだよ。全部ジャスト(のリズム)でやってて、俺たちが遅いから、一人だけ走ってんじゃねぇか? みたいな話をするんだけど、冨田くんが「いや、奴が正しい。俺たちがおかしいんだ」って(笑)。全員おかしいから。

吾妻:12人がおかしいままだと、いいグルーヴになるわけですよ。

ーー面白いですけど、すごく重要な話をされていると思いますね。バンドのグルーヴとはいかなるものか? という本質のお話を。

吾妻:みんなが共有してるかどうか、ですね。

ーー「正しいけどつまらない」演奏もありますから。そうじゃないところに、バッパーズの本質があるような気がします。あと、バッパーズの素晴らしいのは、マニアックな音楽ファンじゃない層に、常に扉が開かれているところ。敷居の低さと言いますか、わかりやすさが常にあると言いますか。

吾妻:それは昔の人が偉いんです。昔のリズム・アンド・ブルースをやってた人たちが、敷居の低い音楽を作ったということなんですよ。

ーーそのジャンルに詳しくないとわからないとか、そういうことは全くないので。どなたでも、今からでも、10代でも是非どうぞ。

吾妻:できれば、その源流に触れてほしいですけどね。私自身は結構マニアックですから。

渡辺:昨日クインシー・ジョーンズが死んで、昔の映像がいっぱい残ってるんだけど、最初は18歳の頃、ライオネル・ハンプトンのビッグバンドにいたんだよね。ライオネル・ハンプトンは、アドリブの奏法とかはジャズなんだけど、グルーヴ感とか、楽しい見せ方とか、そういうのはやっぱりすごいね。全然エンターテインメントな感じ。

吾妻:1940年代は完全にリズム・アンド・ブルースだよね。

渡辺:アドリブ・ソロだけは、複雑なところもあったりするんだけど、そのわりには楽しい。ディジー・ガレスピーなんかもそうだけどね。あれはかっこいいよな。

ーーそのあたりがルーツにあるから、バッパーズの音楽には、老若男女問わずに楽しめるエンタメ精神があると思います。

吾妻:週末を楽しみにしている音楽ですからね。

ーーそしてアルバムタイトルが『Sustainable Banquet』。持続可能な宴会という、実にバッパーズらしいタイトルで、現代用語でありつつ、バンドのライフスタイルも表しているという。

吾妻:「サステナブル」があったほうがいいんじゃない?って、牧が言ったんだよね。

渡辺:普通に『Sustainable Boppers』という案もあったけど、誰かがBanquetって言ったんだよ。どっちが先だっけ? アルバムタイトルと、「打ち上げで待ってるぜ」の曲と。

吾妻:曲が先だね。

ーー繋がってますもんね。宴会のイメージが。

渡辺:「打ち上げで待ってるぜ」と「誰もいないのか」は、新曲でわりとよくできてるほうだと思う。でもギリギリだよ、できたのは。「新曲あと2曲ぐらい必要だね」って言って、11カ月ぐらい作ってなかったからさ。最後の1カ月で、2曲揃ってできた。

吾妻:やっぱり締め切りがないと作れないんだよ。そんなに曲を書くのが好きでもないしね。人の曲をやってる方が楽しいわな。

渡辺:「焼肉アンダー・ザ・ムーンライト」なんて、30年かかったもんな。

吾妻:構想30年(笑)。頭の4小節だけあったの。帯広で作った。

渡辺:帯広の打ち上げで、バーベキューやってて。焼肉アンダー・ザ・ムーンライト~って、いい曲できてるじゃんとか言って、そのまま30年。結局、レコーディングするっつうんで、無理やり作った。

ーー気が早いですけど、45周年の次は50周年ですね。ついに。

吾妻:わかんないです。これで打ち止めかもしれない。

渡辺:「打ち止めで待ってるぜ」。でもすごいよね。今、新譜を出して、ライブも活発にやってる70歳ぐらいのバンドってどれぐらいあるんだろう。ブルース系はけっこういるか。山岸(潤史)さんはいくつ?

吾妻:二つ上かな。ホトケ(永井ホトケ隆)さんは五つ上。ブルース業界は元気ですね。

ーー上には上がいます。バッパーズもこれからですね。

吾妻:これからではないけど(笑)。「まだまだですね」ぐらいにしといてください。

ーー年明けのライブ、楽しみにしています。1月にビルボードライブ東京、2月にビルボードライブ大阪、4月にビルボードライブ横浜。ファンのみなさんに、お誘いの言葉をいただけますか。

吾妻:ぜひ一緒にお正月の曲(9曲目「正月はワンダフルタイム」)で、柏手(かしわで)を打ちに来てください。EGO-WRAPPIN’の二人もいるので(*1月11日、ビルボードライブ東京公演のみ)、ぜひおいでください。

渡辺:正月だからね。うちのライブを見て、みなさんで打ち上げやってほしいな。ご一緒はできないですけど、自分たちで打ち上げやってくださいね。そのまま帰らないでねって。

吾妻:〈いきなりドロンはやめとけ〉。

ーー「打ち上げで待ってるぜ」の歌詞ですね。

渡辺:〈シャワー浴びてる場合じゃない〉っていう歌詞はね、俺と吾妻が別のスモールグループでやってる時に、シャワー浴びないで打ち上げ行こうって約束したのに、俺が出て来るのが遅かったから、“お前シャワー浴びてただろ!”って。エレベーターがなかなか来なかっただけなんだけど。

吾妻:いつもベースの牧とピアノの早崎と、3人で待ってることが多いわけ。“またシャワーだよ!”って。歌詞はそこからできてます。

ーーなんでも歌詞になりますね。もはや。

吾妻:〈靴を履き間違えるんじゃねえ〉っていうのもあったけど。打ち上げで、バリトン・サックスの(山口)三平の靴を履き間違えて帰りやがった。しかも右と左と。

渡辺:サイズも一緒で、見た目も一緒。でもメーカーが違う。

吾妻:しかも、それで大阪から家まで帰った(笑)。

渡辺:お互いにわかんなくて、家に帰って気が付いた。いろいろね、ひどいことが多いですよ。

吾妻:その歌詞、入れようと思ったけどビートに乗らなかったんだよ。

ーー曲のネタは尽きないですね。ぜひ、まだまだお元気でいてください。今日はありがとうございました。

渡辺:まとまるのかね、こんなので(笑)。

吾妻:くだらないよねー。

渡辺:でも、くだらないことは二人で話したほうが思い出すね。

■リリース情報
吾妻光良 & The Swinging Boppers『Sustainable Banquet』
価格:¥3,300(税込)
購入:https://mitsuyoshiazumaandtheswingingboppers.lnk.to/Album
配信:https://LGP.lnk.to/hrghmZ
特設サイト:https://www.110107.com/boppers

<収録曲>
01. 打ち上げで待ってるぜ
02. Jeepers Creepers
03. 俺のカネどこ行った?
04. 昼寝のラプソディ
05. Boogie-Oogie
06. Don't Hesitate Too Long
07. Old Fashioned Love
08. 俺の薬はデカい
09. 正月はワンダフル・タイム
10. L-O-V-E
11. 誰もいないのか ★NHK「ラジオ深夜便」10~11月度<深夜便のうた>
12. BIG BUG BOOGIE (Bonus Track)
Guest Musician:EGO-WRAPPIN' (M-5)/Leyona (M-10)

■ライブ
『Sustainable Banquet』リリース記念ライブ
2025年1月11日(土)ビルボードライブ東京
2025年2月1日(土)ビルボードライブ大阪
2025年3月1日(土)博多・Gate's7
2025年4月5日(土)ビルボードライブ横浜

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